妖奇切断譜 (講談社文庫 ぬ 2-3)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062737272

感想・レビュー・書評

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  • 貫井徳郎『妖奇切断譜』講談社文庫。

    九條・朱芳シリーズ第2弾ということだが、第1弾は読んでいない。

    貫井徳郎作品の中では珍しい時代推理小説である。しかも、恐ろしいまでの猟奇連続殺人事件が描かれる。

    全体を通じてリーダビリティが高いが、犯人の正体と目的が明らかにされる終盤には驚愕を覚えた。

    彰義隊を抜けた田村喜八郎が上野の山で夥しい死体の山に幼馴染みで同じ隊にいた伊丹充吾の生首を見付けたところから物語は始まる。

    戊辰戦争の傷跡癒えぬ東京で美女ばかりが八つ裂き死体となり、稲荷神社で発見される事件が続発する。不思議なことにいずれの死体も切断された手足の一部が持ち去られていた。

    元公家の九条は八つ裂き狐事件の捜査に乗り出すが、非道の犯行は止まらず、困惑した九条は病床の友人である朱芳の頭脳に望みを託す。

    次々と起きる恐ろしい猟奇事件、九條と朱芳の捜査と田村喜八郎の女性の脚への異常なる偏愛の過程とが交互に描かれる。今様美女三十六歌仙に選ばれた女性が次々と八つ裂きにされる猟奇事件の真相は……

    続きがあるのか。

    本体価格667円(古本100円)
    ★★★★★

  • まあもちろん面白いのだけど。最近のミステリーって何でこう伏線とか人物造形とかを叙述トリック的に使ってしまうんだろう。まるでトリックの斬新さや奇抜さが優先されて、それにストーリーと人物がくっつけられているような。
    畢竟それは二時間ドラマぐらいのお手軽さで落ち着いてしまう。結局軽いのだ。なんとも勿体無い。
    これなら自分の時間は良質の映画、もしくはそれこそドラマシリーズなどで深く使ってみたい。最近のミステリー村の中ではもてはやされているのだろうが、自分の時間の使い方としてあまり有益なものではなかった。
    現代のミステリー作家として宮部みゆきとあともう一人レギュラーが欲しいのだけど、なかなか自分の中の一軍に上がってきてくれない。

  • グロさは気にならなかったけど、長さと結末にがっかり。

  • 久し振りに短期間で読み終わった。
    物語の展開や物語の趣を変えたりと引き込まれて行った。
    でもな、最後の種明かしと結末にはチョット納得がいかなかったな。

  • 昔読んだ本

  • 明治維新後の日本、女性のバラバラ死体が稲荷に遺棄される事件が頻発する。九条モノ、シリーズ化してたとは。

  • 前作は横溝正史ばりのおどろおどろしい事件。
    今回は江戸川乱歩を彷彿とさせる禍々しい凶行。

    これを見ても、最初からシリーズ化を念頭に置いた作品であることがわかる。
    本文の最後には「次巻ニ続ク」と書いているし。
    次巻の構想もすでにできていたと作者も言っていたし。
    けど、結局は人気がなかったから続きが書かれることは今に至るまでないのだという。

    なんでかな?
    今回の事件はバラバラ殺人という、無理な人は絶対に受け付けられない作品ではあると思うけど、フィクションだから気にしないという人であれば、よくできた作品ですよとお勧めできる。

    事件の真相に至る道筋は最初からきちんと書いてあるし、そのうえで、江戸から明治(作中では明詞)への過渡期にしか起こりえない事件になっていて、凄惨な事件なのに喪われゆく時代の哀しみも孕んでいて、いい作品だと思うんだけどなあ。
    来年の明治150年を記念して、復刊してみてはいかがでしょうか。

  • 全編に漂う山田風太郎っぽさがなかなか良い。ただ、犯人が探偵役の知人だってのはいきなり過ぎるだろ。好きじゃない。まあそこはぶっちゃけなんでもいいって事なのかな。黒幕をそこに持ってくるのは中々良かった。

  • かなりおどろおどろしいオープニング(^ ^;
    ツカミとしてはかなりのインパクト(^ ^;

    前作に続いて、何となくみんなが
    「触れない方が良い」と思っているテーマに
    果敢に挑戦している印象(^ ^;

    トリックは、「ちょっとそうかな」と思ったことが
    実は正解だった(^ ^;
    が、あの伏線の張り方は...笑えた(^ ^;

    これも前作に続き、テンポが今イチ悪いというか、
    はっきり言うと「無駄に長い」印象を受けるが、
    これはもしや「公家の面倒くささ」を理解させるため
    わざとやっている可能性もあるのか?(^ ^;

    あぁ、ミステリはネタバレが怖くて
    詳しい感想文が書けない....(^ ^;

  • 『人の信仰とはなんと奇妙なことだろう。朱芳の説明によれば、稲荷信仰は人心の不安が増すのと軌を一にして、はやるという。今がまさに、人心の不安が大いに掻き立てられているときだ。

    ふだんは犬の糞ほどにしか感じていない稲荷に、皆こぞって押しかける。信じたいときにだけ信じ、利用するのが人々の本音なのだろう。

    信仰とはつまり、そういうこころの表れなのだ。信仰は祈る者自身のための行為であり、対象はなんでもかまわないというわけか。狐だろうと、鰯の頭だろうと。』

    相当エグかった。少し気持ち悪くなった。
    ただし、謎解きは良かった。やっぱ謎解きのあるミステリが一番ですな。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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