- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062750028
作品紹介・あらすじ
その日、広島は核の業火に包まれた。人類史上類を見ない大量殺戮(さつりく)の閃光が、日本に定められた敗北の道を歩ませ、「国家としての切腹」を目論む浅倉大佐の計画を加速させる。彼が望む「あるべき終戦の形」とは? その凄惨な真実が語られる時、伊507乗員たちは言葉を失い、そして決断を迫られた。刮目(かつもく)の第3巻。【2005年3月公開 映画「ローレライ」原作】 (講談社文庫)
感想・レビュー・書評
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何のために戦うのか。何が本当の敵なのか。
征人や絹見艦長をはじめ《伊507》の乗組員たちは仲間の犠牲を伴いながら、自分たちの進むべき道を定めます。
刺激的な言葉の渦に巻き込まれたとき、心地よい言葉の響きに酔うとき、内容が難解で理解するのを諦めたとき、人は容易すく考えることを放棄して、その場の空気に流されてしまうのではないでしょうか。自分の中に澱む空虚感や絶望感、不安感などをそれらで埋めるようと。そして人として生きられなくなった自分を許せなくなったとき、他人をも引きずり込むことが正義だと救いだと信じるしかなくなります。恐怖が支配する世界では1人が2人、2人が3人と瞬く間にその危うい思考は伝染していくのでしょう。もうその頃には危ういという意識は尊い意識にまで昇華しているかもしれません。けれど《伊507》の中にも広がり始めたその波から、ただ1人おかしいと声を上げた征人によって艦員たちは引き戻されます。征人の言葉はまっすぐで何も難しいことは言ってません。自分で考え、何を守りたいのか何が大切なのか真実を見据えた征人の言葉だから、彼らに届いたのでしょう。
《伊507》の進むべき道は決まったのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
敵艦にも勝利しウェーク島へ向かう道中で訪れた8月6日。原爆投下の瞬間の人々の描写が詳細でとても恐ろしかった。まず体が燃えて衝撃波が訪れ死に至るなんて知らなかった。
聞いてはいけない話を盗み聞きしてしまい物音を立ててしまうという、使い古されたベタな展開もあるが、読み進めるうちに伊507の乗員たちがどんどん好きになっていく。特にフリッツがかっこいい。ストーリーの構成要員の一つとしてではなく、登場人物を好きになるのは久しぶり。全4巻と長いけれど、その分着実に心を掴まれていく。
敗戦はわかりきった事実として横たわっているが、歴史に名を残さない戦艦の行く末が救われたものであるように、と願って止まない。 -
思わぬ展開が続き、ひでえ話もあるけど、面白くなって来た。最終巻に期待してしまうんだけど・・・
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伊507とローレライがゆく先は?
朝倉の言葉と折笠の言葉。
日本はどこに行くのか、彼らはどこに行くのか -
話の展開は果たして終戦に間に合うのだろうかと思いながら読み進めていたが、いよいよ数日単位で終戦を迎えるようなところにきてしまった。太平洋に置き去りにされた日本兵たちのすさまじい状況が描かれる。その描写力はさすがだと思うし、また敵役からちょい役までそれぞれにそれぞれの人生のドラマがあることを丁寧に描いている。読みながら、どのように映画化されたのだろうと、そこがすごく気になりだしている。
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15年前に読んだ再読だけど、やはり面白い。
伊507のみんな、ローレライちゃん、がんばれ〜ってなる。
それにしても、立ち場の偉い人が謀反を企だてるととんでもない事になるね。 -
いよいよローレライ稼働。
そして目的地へ。
めくるめく野望、裏切り。
そして、死。
明らかになる浅倉大佐の目的。
怒涛の展開に手に汗握る。
続く最終巻に期待。 -
いやー面白い、面白いけど長い!なかなか手に取ることができず、時間がかかってしまった。けど、読み出すと面白いんだなー。広島に原爆が落とされて行くところから始まって、その後の怒涛の展開。戦争ものの小説を読んでいつも思うのは、死んでいった人たちが懸命に残していった未来に自分が立っているんだなというのをいつも強く感じる。
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やはり、期待を裏切らない素晴らしい作品‼️
前巻までにも凄惨な場面は多くあったが、本巻はそれらを遥かに凌駕する。
浅倉の望む終戦の実態、そして、田口との因縁、土谷が力に固執する背景、その一つ一つに深く考えさせられる。
また、私自身、浅倉の思想に傾きかけていたところで、発せられた従人の言葉。なんとも単純で、しかし、気付くことができなかったその言葉に目が醒めるような気持ちになった。冷静に考えれば、それがどれだけ愚かで偏った思想かは気付きそうなものだが、、、
本巻を経て、私は自分が思っている以上に騙されやすい人間なのかもしれないと感じた。