- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062762847
作品紹介・あらすじ
直すのは人の心、自らの過去
フランスの田舎町を渡り歩きながら中世フレスコ画の修復に打ち込む、孤独で風変わりな日本人男性アベ。名も無き人々が胸に秘めた想いに接し、さながら神父(アベ)のように彼らを受け止めるうちに、アベは町に溶け込んでいく。人生の哀歓と男の手仕事の魅力を絡めて描かれた、著者独自の世界が広がる5つの連作短編。
※この作品は2001年10月、新潮文庫から刊行されたものです。
感想・レビュー・書評
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日本人アベはフレスコ画の修復師。フランスの村々を回って仕事をしている。彼自身も辛い過去を抱えているが、滞在する村々にも色々な人間模様が、、という短編集。「五十年目のカルバドス」という一編には、自家製カルバドスにまつわるあれこれが語られている。村を巡回するカルバドスを蒸留するための機械とか!そしてこのアベさん、仕事に行く前に”カルバドスを垂らしたエスプレッソ”飲んだりしている。なんかかっこいい、私も今度やってみます。
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フレスコ画の修復師が、修復に訪れたフランスの田舎町で出会った人々の、悲喜交々の人生模様を描いた短編集。
日本人修復師のアベが、さながら家政婦は見た的な役割を果たしている。
日々の暮らしに抑揚がなさそうなフランスの田舎町でも、やっぱり人生色々。
そして全体的にフランスっぽい、なんともいい雰囲気な作品。 -
フランスの田舎町の雰囲気を味わうには最適。
出てくる料理や飲み物も美味そう。
物語は淡々と静かに進んでいき、可もなく不可もなし。
この辺りの雰囲気を味わいたくなれば本書か佐藤賢一作品を読み返すなぁ。 -
タイトルに惹かれてブクオフで購入。
ミステリではないけど、しみじみと味のあるいい小説でした。
フランス在住の日本人修復師アベと、彼とつかの間の接点を持つ人々のお話。
アベの落ち着いたキャラクターや、登場する人々の心のうち、その土地の風景などを繊細な表現で情緒豊かに描写していて、いつのまにか世界に入り込んでいました。
どの作品にも余韻があり、大人の小説だなぁと思いました。
フランスが舞台ということで、ワイン好きな私としてはそこかしこに知っている地名や美味しそうお酒やお料理の名前がでてきて、そこも魅力の一つでした。
この作者の他の本も読んでみたくなりました。 -
藤田宜永にハマってた時代。
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20130629読了
フランスで壁画修復を仕事にしている日本人を主人公にした短編5つの連作。実際にフランスで活躍されているフレスコ画の修復家・画家、高橋久雄画伯よりアドバイス、資料提供をうけて執筆とのことで、興味深く読んだ。●不思議な表現が出てきた。辞書で調べたけど意味が分からないまま。P.163「マダムは、酒焼けした頬をふたつに割って、クリスマス・イブの催し物について熱弁を振るった。」 頬をふたつに割る?フランス語の熟語をそのまま持ち込んだのだろうか? -
これはフィクションである。壁画はヨーロッパでもっとも身近な芸術作品のひとつ。しかし「壁」という画板に描かれたため、さまざまな理由で絵は劣化する運命にある。紫外線による焼けや、風雪による剥離、水漏れのシミなど。壁画は教会から宮殿まであらゆるところに描かれているため、壁画修復師の仕事は尽きないという。主人公アベは、ヨーロッパで壁画修復師を生業とする男。注文に応じていろんな土地へ出向き、たいていはひとりで修復作業をおこなう。そんな主人公が出会った、ヨーロッパの田舎町での出来事……。
小説として読んでも、絵画修復のドキュメンタリーとして読んでも面白いが、ここに描かれたヨーロッパの田舎町の風景は、それだけでも旅心をかきたてる。ブルターニュの海沿いの村や、アルザスの谷あいの村、ブルゴーニュの、ワインで知られるボーヌにほど近い小村。どこもツアーでは決して立ち寄らない場所ばかり。ガイドブックに取り上げられることもまずない。しかしそんな田舎の魅力的な描写は、ヨーロッパの魅力の源になっているのが読み取れる。博識な著者がところどころにインサートするうんちくと共に、ヨーロッパ田舎旅行を文字で楽しませてくれる。
著者は「愛の領分」で125回直木賞を受賞した作家。パリでミステリーの翻訳を手がけた後、エールフランスに勤務した。どおりで小村と、そこで暮らす人たちの性格描写がしっかりしているわけだ。 -
ヨーロッパを旅する日本人修復師が出会う、ちょっと切ない事件の短編集。なかなかに良かった。あまり専門的な修復シーンは出てこないのですが。
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本屋で見つけて気になったので図書館にて。
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空気を表す描写が綺麗。