コリアン世界の旅 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763622

作品紹介・あらすじ

日本に住む韓国・朝鮮系の人々が、なぜ日本人の目に「見えない」存在になってしまったのか。この謎に果敢に挑む著者の旅は、日本、アメリカ、ベトナム、韓国に広がり、再び日本に戻る。私たちのすぐ隣にある「コリアン世界」を真摯に描いた、大宅壮一ノンフィクション賞・講談社ノンフィクション賞ダブル受賞作品。

感想・レビュー・書評

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  • 最近、日韓問題が騒がれているので、この機会に…と思い、この本を手に取り、日本と韓国の歴史を少し知ろうと思いました。
    目に見えていることだけではないのですね。
    過去を振り払い、両国の未来が明るいことを、
    戦争を知らない私達は祈っています。

  • こんな面白い本があったのか。存在は知っていたがちゃんと読んだのは初めてだった。日本、アメリカ、ベトナム、神戸ーこれはコリアンを訪ねて旅した記録なのだが、この本のすごいところは、移動しているコリアンを追うことで、移動していないコリアンの社会と歴史(コリアというもの)がとてもよく見えてくることだ。写真もとてもよい。必読。

  • アメリカとフィリピンに留学をしてた際に、韓国人が異常に多く親密な友達も出来たので韓国のことをもっと知りたいと思い手に取った。

    在日である、にしきのあきらさんのお話。
    また、みんな大好きな焼肉についてのお話など。
    全国二万軒以上の焼肉屋さんの九割が在日か帰化者かその子孫が経営していると言われている。
    当時、日本が韓国を占領し差別していた際に、乞食のように生きてきた在日は、日本人が食べない牛の内臓を拾って食べたり買ったりするようになった。こうして焼肉は職業として始められたのではなく、彼らの生きるための食生活から始まった。実際に当時焼肉屋で働くことは恥でもあったそうだ。

    日本と朝鮮との歴史を学ぶ際も、友好の歴史も学ぶべきだ。古墳時代の交流や朝鮮通信使とか、一緒に助け合いをしてきたということも忘れないようにと。

    実際にアメリカに行った際にコリアンタウンがたくさんあることに疑問を感じた。
    その理由は、朝鮮戦争時で得た大打撃で難民と化す韓国人がたくさん現れ戦争の当事者でもあったアメリカは、その際に韓国人に食料や物資を惜しみなく与え彼らには救世主と映った。また当時朴軍事政権下で言論の自由も抑えられた国民には、更にその美国幻想(アメリカ)への憧れイメージが増し移民するひとが増えていった。
    在米コリアンはアメリカの移民の中で最も資金があり教育水準が高かった。なぜなら美国幻想(アメリカ)とも言われるほどの国にいける彼らの多くは移住後に商売をすぐに始めれるための資金をも携えていた人のみだからだ。また直後のベトナム戦争も米への移民の増加に拍車をかけた。サイゴン陥落による南ベトナム政権の崩壊は韓国人の中でも朝鮮戦争時に北から逃げてきた「越南者」と呼ばれる人に同じ悪夢を蘇らせた。在米コリアンの二割がこうした越南者が占めているそうだ。この人たちはアメリカに来る前から商売をしていたそうだ。当時北から逃れた際に韓国でも商売をゼロから始めた経験があるので困難な状況下で生き抜くすべを知っている。だが、現実は幻想大国ではなかった。アメリカでも差別を受け給料も大変安い。



    読み終えた上で思ったことは、日本では嫌韓という言葉もありニュースでは韓国人の悪いことばかり聞くが、確かにそういった悪い部分もあるが実際に歴史から色々と学び、自ら情報を手にし判断した上でメディアに洗脳されず自分で判断する力もつために韓国についての本をもっと読みたいと思った。

  • 斎藤美奈子「読者は踊る」で見かけて手に取り。芸能界、焼肉、パチンコ、サッカー、などなど、普段あまり意識しないで目にしているけど、在日韓国・朝鮮人、帰化者たちが深くかかわっている様を、そこで普通に暮らす人々が、何を考えどう生きてきたかを教えてくれる。日本統治下の差別、韓国人同士での差別、日本人でも韓国・朝鮮人でもないと向けられる在日への視線。在日であると日本人に告げた時の反応への失望。職業差別。地域差別。◆「金日成にはもっと早く死んでほしかったけれど、北朝鮮がどんなにひどい国かなんていうことを、日本人からは絶対に言われたくない」(マルセ太郎)◆尹「(朝鮮学校の男子生徒にとって)日本の人と触れ合う機会は喧嘩とサッカーしかない。どちらもその場限り。僕は日本にいるんだから、日本の人との付き合いをおそろかにしたら、自分の存在価値がないと思っていたんですよ◆朝鮮学校の出身者は往々にして、韓国・朝鮮系であることを隠して生きている人たちを憐れんだり見下したりしがちだが、尹は名もなき普通の人々と手を携えて生きる方向を模索。◆といったあたりが印象に。

  • ★相対化のお手本★在日朝鮮・韓国人を描くのに、米国やベトナムにいる韓国人を描いた切り口が出色。まさに補助線が新しい視点を切り開いた。
    大阪の公立小学校でのコリアンの民族教育(くしくも学校再編に伴いちょうど終わってしまった)がここまで行われていた驚きを筆頭に、我々の生活のすぐ横に別の世界がある。通名で生活する人を考えればなおさらだろう。
    日本以外のコリアンを描くことでいったん相対化し、東京・荒川や兵庫・長田の在日、さらにはサッカーへと戻ってくる構成が秀逸だ。

    戦後に在日の人に解放感をもたらし、さらに金日成は朝鮮基準でハンサムだということが、在日の人に朝鮮籍(北朝鮮籍ではない)を残させた。さらにそれが2世3世にも引き継がれているという指摘を読み、どうして在日の人がわざわざ不便な朝鮮籍のままでいるのが初めて知った。国籍とその国への支持は、必ずしも一体ではない。北朝鮮への帰国事業にしても、北部に何の縁もない済州島の人なども渡っていた(沖縄にルーツを持つブラジル移民が「ふるさと」として東北に移住するようなもの)というのに驚き、日本で受けた差別と朝鮮へのあこがれが複雑に交差している。
    時系列では本書の後になるが、かつて大手メディアでは「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」と書いていたのに、拉致が明らかになった2002~03年に表記が「北朝鮮」に変わった。なぜ「北朝鮮」ではダメなのか知らなかったが、そもそも国名に「北」は入っておらず、北朝鮮は韓国を認めていない立場だったと別の機会に知った。まさにこの表記にそのねじれが露わになっている。

  • 社会
    ノンフィクション

  • 大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞

  • 一言では語れない、という形容詞がおそらく最もあてはまるであろう在日韓国人・朝鮮人の実態に切り込んだ労作。テーマが大きいだけに、ページ数も多目だが、これでも全体への糸口という程度であろう。作者の立場は、基本的には日本人の立場ながらも出来るだけ客観的、相対的に在日の人達の本質を描き出そうとしている。冒頭は、俳優にしきのあきらへのインタービューを筆頭に芸能界で意外と知られていないが多数いる在日スターについて描かれている。しかし、ネットなどでまことしやかに囁かれている面々は出てこない為、そのあたりをエグっているものと期待していただけに肩すかしを喰らった。まぁ、当然本書はどちらかというと社会学的な視点から在日をとらえているため、芸能や政治の世界で日本に巣食う在日を暴くようなものではそもそも無いので仕方が無いが。

  • もっと早く読めば良かった。在日コリアンのこと、少しはわかっているつもりで、全然わかってなかった。日本で生きてく大人は、みんなこの本読んだ方がいいんじゃないか。

  •  在日朝鮮人、在日韓国人の方々は自分の周りにもけっこうな割合でいるらしい。

     らしいというのは、在日の人は外見や言動は日本人とほとんど変わらないし、日本名で日常を過ごしている人が多いのでわからないからだ。

     ある日突然、今まで日本人だと思っていた友達に、「実は在日朝鮮人なんだ」と告白されたら、どう返答するだろう。
     たぶん「日本人でも在日でも、俺たちの関係は何も変わんないよ」みたいなことを言うんじゃないだろうか。 
     でも、その答えでは在日の方は、日本人と在日の間に横たわる大きな溝を感じて、失望するのだという。


     現在日本にいる在日朝鮮、韓国人の多くは働き口を求めて戦後に日本に渡ってきた人たちとその子孫らしい。戦前戦中に日本人から差別を受けた世代は、日本は憎悪の対象だから、早々に帰国していった。だから今いる在日の方々は語弊のある言い方だが、そんなに日本を恨んでいない。だいたい国籍は北朝鮮や韓国でも、生まれた時から日本にいる世代も多いわけで、メンタリティは朝鮮でも、暮らしや行動規範はどっぷり日本という状況にいる。
     
     さらにややこしいのが、在日の中でも韓国系と朝鮮系は仲が悪いし、韓国の中でも出身地によって露骨な差別があるらしい。当たり前といえばそうなのだが、在日と一口に言っても、いろんな事情の人がいる。
     また在日中国人は、そんなに在日であるということを隠したりしないので、在日韓国、朝鮮の方々とは一線を画す。思うに、一時期ではあるけれども、朝鮮半島が日本の支配下にあったことが影響しているんじゃないだろうか。


     で、最後まで読んだけれど、先ほどのカミングアウトの告白に対して、どう返答すれればいいの?という答えはわからなかった。正解なんてないのかもしれない。
     
     この本が「コリアン世界の旅」となっているのは、日本、韓国、北朝鮮だけではなく、アメリカやベトナムのコリアン世界も取材しているから。それぞれの国の事情が違っていて、在日(在米、在越)コリアンを比較できて興味深い。知らないことだらけで、もっともっと知りたくなった。
     ものすごくざっくりした感想だけど、日本人と韓国、北朝鮮の人は在日の方々を軸にして仲良くなれると思う。


     
     在日の方が国籍を隠すのは、やはり日本にまだ差別意識があり、日本人として見られたほうが都合がいいという部分があるのは否定できない。その意味でもヘイトスピーチなんていうものは早く法律で禁止してもらいたいと思う。あれを表現の自由とか言ってるから日本は人権後進国とみなされてるわけで、侮辱罪でも、名誉棄損でも、殺人教唆でもなんでもいいから、法律で禁止すべきだと思う。

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著者プロフィール

野村/進
1956年、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科中退。78~80年、フィリピン、アテネオ・デ・マニラ大学に留学。帰国後、『フィリピン新人民軍従軍記』で、ノンフィクションライターとしてデビュー。97年、『コリアン世界の旅』で大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞。99年、『アジア新しい物語』でアジア太平洋賞を受賞。現在、拓殖大学国際学部教授もつとめる。主著に『救急精神病棟』『日本領サイパン島の一万日』『千年、働いてきました――老舗大国企業ニッポン』。近著は『千年企業の大逆転』

「2015年 『解放老人 認知症の豊かな体験世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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