ロック母 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766708

感想・レビュー・書評

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  • この本を購入した2010年当時、全くはまらず、また作者である角田光代の原作の映画を二本ほど観て、多分わたしには合わないからとずっと放ったらかしになっていた。
    10年近く経って読んでみると非常に好みであることに驚いた。
    きっとこれは筆者があとがきで記しているように、"一編の小説はそれだけでは完結していない。そしてやはり人と同じように、小説も歳をとったり、すがたかたちを変えていく" ということなのだろうか。

    小説に限らず全く同じものでもその時々で、フィットしたり、しなかったりとかたちを変えていく。


    そういうことを楽しいと思える年齢になったのかもしれない。

  • ゆうべの神様とイリの結婚式が好きでした。短編集ってアーティストのアルバムみたいで楽しい。
    イリの結婚式。ハムスターの件、私は主人公側の人間なので、ささおみたいな人とは結婚できないのはわかるなーと思った。

  • 短編集 どの作品も、かなりとんがってる。特にゆうべの神様 この微妙な時期に、読むべきではなかったかもしれないけど心に黒く残りました。

  • 最終章の「イリの結婚式」の一部を仕事で読み、気になって本編を読んだ作品。主人公がハムスターの死によって彼氏と死に対しての価値観の違いを認識し、そのまま破局してしまう話。
    死に対して諦めてしまっている主人公となんとかする方法があると模索してしまう彼氏は、一見彼氏の方が温かい人物なんだろうけど、でも彼氏のやってることは結局自己満足でしかなくて、それは主人公にとっての本当の優しさでは無かったんだろうなあ。彼氏の、自分にもできることがあるって必死に生にしがみつく感じも分かるし、主人公の、そういう人は結局自分が安心・満足したいだけで自分も将来どこか手軽な応急処置をされて放っておかれるって不安になってしまうのも分かる気がする。
    結婚というのはそういう価値観の違いを愛情だとか幸福感で乗り越えていった先にあるものだと思うけど、それができないくらい主人公にとっては彼氏との価値観の違いが大きいものだった。友達たちは「そんなこと」と笑うけど、彼女たちにとってはそれは愛情で乗り越えられることであり、主人公にとっては譲れなかっただけの話だと思う。イリの結婚式を見てこうなるはずだったと主人公は思っているけど、そこまで後悔している感じではなかったのが印象的だった。結婚する気もないしする相手もいないし、主人公の場合はそんな男と別れたばかりだけど、でもそれでも明るさと希望に満ち溢れた感じと並々ならぬ幸福さから、そんなことをぼおっと考えさせる力が結婚式にはあるよね~

  • ゆうべの神様…薄いガラスのような脆い心なのに容赦なく無慈悲に破壊されていく。
    緑の鼠の糞…鳥を大空に帰すことで自由奔放を世に解放しているみたい。
    爆竹夜…無秩序やら混乱やらをかき集めて圧縮して固めて爆竹と一緒に爆破できたら気持ち良さそう。
    カノジョ…評価はこの作品。前妻の影に怯えるうちに意識が自分のものなのか前妻のものなのかわからなくなる。意識のゲシュタルト崩壊。
    ロック母…居場所を失った母と娘は新しい命を受け入れることで何かが前に進むのかもしれない。
    父のボール…お父さんは家族を守るのに必死だったのだとすると哀しみがこみ上げてくる。
    イリの結婚式…民族問題とかいっても手をつないで踊れば解決するくらいのことかも。

  • 訳もよくわからず、当たりどころのない怒りみたいな懐かしい感情を思い出した。普通になったカンジを目の前にしたときのマリコがなんか気持ち良かった。ホントなら褒めてあげることなのかもしれない。でも、大人じゃないマリコだからできることなんだと思う。角田光代に「ロックだねぇ」って言ってやりたい。この短編の中には、不器用に恥かしげもなく思ったままにしか表現することができないロックな奴がたくさんいたように思う。何が言いたいのかよくわからないし、何でここで終わりなのとか思う部分もあるけど。マリコも、キヨちゃんもロックなおばさんになってほしいな。

  • 「ゆうべの神様」がいちばんすきだった。

    編集者も角田さんもこの話は「本にするには値しない」と言ってたらしいけれど、わたしは、すき。本にしてもらえてよかった。

    角田さんは、すっごいみみっちいこととか、きたないこととか、自分でも嫌になるような生活臭を見逃さない。
    「ああ、あるある」って思ったあと、どんなに綺麗なふりして生きててもその「生活」からは逃げられないことを思い知らされて苦い気もちになる。
    すごいひとです。

  • 「ロック母」に納められている短編『ゆうべの神様』を読んだ。夫婦けんかをする様子がリアルで、それを見ている子供のマリコの心情や行動もリアルで、その家族の噂をする近所の八百屋、隣のおばさん、肉屋のおじさん達の様子もリアルだった。その噂する様子や、心配するふりをしながら、楽しんでいる様子が、どんなに噂される本人達を傷つけているかもリアルに描かれている。最後の場面で、唯一の心のよりどころだったガンジが変わってしまったことが引き金になり、マリコは自宅に放火してしまうことで話しは終わっている。

  • どの話もなんとも言えない終わり方
    けどどんどんと読みたくなる
    どれも好きだけど、父のボールがよかったと思った

  • 最近読み始めた作者なので、初期の頃からの短編集はとても新鮮だった。あとがきにご自身で評価する『迷える足跡』に納得。

    爆竹夜までの3作がイマイチで、このままいくのか?と不安になったが、カノジョ〜ロック母〜と屈折した思いの中にも小さな愛や笑いがあり、さすが!と。

    始め3作と後4作での読後の違いをうまく言葉に出来ないが、何かが違い、角田作品の引き込まれる感じ、どんどん面白くなっていったので、☆4

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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