十六歳のオリザの冒険をしるす本 (講談社文庫)

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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766753

感想・レビュー・書評

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  • 映画『演劇1』『演劇2』の予習として読んでみた。
    これで16歳とは末恐ろしい。というか、実際すごい人になっちゃってるけど。
    オリジナルタイトルは『十六歳のオリザの未だかつてためしのない勇気が到達した最後の点と、到達しえた極限とを明らかにして、上々の首尾にいたった世界一周自転車旅行の冒険をしるす本』。文庫化で改題。
    タイトルからも想像できる通り、十代のギラギラした自意識が過剰で少々読み辛いかな。まぁ、そこがいいんだが。
    「知っている事」と「体験した事」は全然別物だという事を痛感した。

  •  読んでみた一番大きく感じたことは「教養が前提条件である時代の文章だなぁ」……であった。

     生まれてこのかた、毎年のように活字離れが進んでいると、聞いているが、昭和初期の文学においては、「基礎教養」が求められていたと思う。例えばそれはゲーテやニーチェ、詩や哲学書、あるいは資本主義や社会主義のような思想。
     書き手は、読み手にこれらの基礎があるものとして文章を綴り、読み手は知らなけれれば恥じて教養を身につけようとする。
     そんな時代があったと思う。

     この本が書かれたのは1979年(正確には旅に出た年)、今から約30年ほど前だ。
     著者が教養を前提とするのはともかくとして、著者と手紙のやり取りをする少年たちも、「教養を知らぬこと」を恥じと感じる気持ちがあるように感じた。ぶっちゃけると、私の10代と比べ、のきちんと人格のあるように思える。

     今は変化の時代と言われ、新しい情報を知ることにやっきになり、基礎教養という言葉は忘れ去られているのではないか。知らなくても別に何とも思わない。そして書き手も、そのような読み手に向け、知らないことを前提として、認識させていく文章を書く。
     今の方が読みやすいけど、時折こういうものを読むと「教養」について考えさせられる。
     
     本文とあとがきの著者の姿勢の落差が面白い。

著者プロフィール

1962年、東京都生まれ。劇作家・演出家。芸術文化観光専門職大学学長。国際基督教大学在学中に劇団「青年団」結成。戯曲と演出を担当。戯曲の代表作に『東京ノート』(岸田國士戯曲賞受賞)、『その河をこえて、五月』(朝日舞台芸術賞グランプリ受賞)、『日本文学盛衰史』(鶴屋南北戯曲賞受賞)。『22世紀を見る君たちへ』(講談社現代新書)など著書多数。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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