文庫版 死ねばいいのに (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 316
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  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062773515

感想・レビュー・書評

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  • 単行本で発売された時、タイトルのインパクトすごいなと思ったのを覚えてる。でもその時は買おうとまでは思わず、結局今回文庫化されていたのでなんとなく「懐かしいな」という感覚で手に取った。読んでもいないのに(笑)
    それが読み始めたら、止まらない( ゚д゚)自分が問い詰められてるような、後ろめたいような不思議な気持ちが襲ってくる。
    今の若者が使うような軽い口調で、ズバッと心に刺さるような鋭いことを言ってくるケンヤ。彼から発せられる言葉に最後まで目が離せなかった。

  • 京極作品にしては量的には少な目だし、蘊蓄とかがないから比較的読みやすいかもしれない今作


    しかし内容は心に突き刺さるような話でした

    登場人物たちは皆自己中心的で、ハタから見るとうわぁというような部分が多い人たちなのですが、少なからず自分と似たようなところもあるわけで…

    ケンヤの言葉が自分に言われてるように思える部分もあって辛いけど、それでもやっぱり皆似たようなもんで…やっぱりそうこうしながらも生きていくんだろうなって


    アサミの気持ちは最後までよくわからなかったけど、最初掴み所がない感じだったケンヤは最後にすごく近く感じました



    読了後はいろんな想いが錯綜してなんとも言い表せない気持ちです

  • 京極夏彦の話題作、「死ねばいいのに」。タイトルが衝撃的だけれど、主人公?のケンヤの素朴な問いかによって登場人物たちが問い詰められていくのと合わせて、読者もえぐられていく、そんな作品。ヤクザ、陰湿的な嫌がらせをする女性、うだつの上がらない男性社員から警察、弁護士まで人間誰しも弱みがあり、素朴な問いかけに反論することができない。それを超えていたのが、、、。
    ライトな小説ながら読ませる力は強力でさすが京極夏彦という感じ。

  • 『死ねばいいのに』
    舞台を見に行くため、その前に再読。

    この本がミステリだと紹介されるのがずっと不思議なんだけど、この本を「犯人は誰だ?」と考えながら読む人はいないんじゃないかな。

    「死んだアサミがどんな人だったのか教えてくれ」と聞くところから始まるのに、いつの間にかアサミではなく聞かれた人物自身の醜い部分が引きずり出されていく。この会話の流れは巧みだなあ。気づいたら誰もアサミの話をしていない。

    「醜いのは分かってるけど辛くて苦しくて逃げられなくてどうしようもないんだどうしろっていうんだ」と訴える彼らは、「死ねばいいのに」と言われたところで死にはしない。
    しかし誰よりも不幸だったのに「ヘンテコな人生だけど幸せだ。このままずっと幸せでいたいんだけど、どうしたらいいだろう」と言ったアサミは、「そんなに幸せなら、幸せでいるうちに死ねばいいのに」と言われて呆気なく死んでしまう。

    『魍魎の匣』の雨宮を思い出す。
    どんな環境に身を置こうとも、それを最終的に受け入れて自分を幸福な状態に持ち上げる、狂おしいまでに現実肯定の出来る人…。
    雨宮は、作中で彼岸に行ってしまった(人を辞めてしまった)男として描かれているが、アサミを殺す際のケンヤは「自分が手を掛けてるのが人間じゃなくて、何かもっと凄えものみたいな気がして来て」と怯えている。
    また、アサミを模したであろう1ページ目の写真には「菩薩」と文字が入れられている。アサミが京極夏彦的に"ヒトでなし"判定なのは間違いないと思う。
    やはり京極夏彦オタクとしては、"ヒトでなし"概念が大好きだし、生き残ってうだうだ苦しみ続ける人間達と悟ってさっさと死んでしまったアサミとの対比を魅せる構成の美しさに感嘆する。

    死んだアサミがヒトでなしとして書かれているからこそ、「死ねばいいのに」と言われても死のうとしない奴らの、浅い欲望とか、狡さとか、都合の良さとか、そういう部分が人間らしくて、人間はそれで良い、良くないかもしれないけどそれで当たり前で、それが人間だ、というのが読者への赦しでもある。

    もちろん、この本の見どころは他人の吐き出す苦しみを切り捨てていくケンヤの言葉だろうと思う。
    醜くて生き汚い登場人物達はみんなどこかが私と似ていて、ケンヤに説教されるたびに心が痛み、反省する。
    でも、最終的に生きているのは「何も望まなかったアサミ」ではなく「醜い欲望ばかりの人々」なのだ。

    人間、自分勝手な欲望ばっかり抱えてて「足るを知る」なんてなかなか出来るもんじゃないけど、本気で「足るを知る」ができると「完全な現実肯定」ができてアサミになり、それはもはや菩薩になるということなのだろう。
    それは美しいことかもしれないが、もうヒトではない。

    でも幸せになれるなら菩薩になりたい気もしてしまうな…。

  • 舞台化するというので観劇前に履修。
    これをどうやって舞台にするのか、愉しみで仕方無い。
    タイトルのニュアンス最高でした。

    何はともあれ、ワタライケンヤが好き過ぎる。ふふ。

  • ケンヤは、確かに人殺しだ。でも普通だったし馬鹿だ。
    死ねばいいのにといって本当に死んでしまったのが怖くなっただなんて。殺人犯にしてくれないと自分の言葉を言葉通りに実行して死んでしまった事実に対して、理解されてるのか嫌なのかしら。
    アサミ以外の人間がまともに見える。ケンヤ以上に愚直なアサミが正直気持ち悪いと思ってしまった。
    アサミは空っぽだったのかな。

  • 途中まではどいつもこいつも言い訳がましく自分のことばっかり話して正直うぜーって思ってたんだけど、だからケンヤが子供のように「何故?何?」を問いただしているところがスッキリ、イカれた男好きだなと思ってた。
    けど、最後の最後で、ケンヤはいかれてるんじゃなくて本当にただただ知りたかっただけで、自分の犯したことも悔いてて、ものを知らない子供だったんだなとわかった。
    そのピュアさみたいなものがまた良くて。
    安心したような顔して自分が犯罪者だと受け入れる。
    アサミもケンヤも、ただ知らないから知りたくて、幸せだからそのままにしたくて、それだけなんじゃないかな。そこに深い意味なんて何もなくて、皆ただそこに深い理由を見出したいだけなんだ。

    結構スッとしたサッパリとした読了感でした。
    そこまでのどんでん返しとかはないんで、ミステリーとかを期待すると違うと思うので、だから★3多いのかな?

  • 最後まで感情移入できなかった。
    ただ、私の中の小説の世界を大きく広げてくれた作品だった。

  • 来年の舞台化に向けて、予習のために読みました。
    「京極さんのお話読むの久しぶり〜。ゆっくり読むぞー」と思いつつ、気づいたら読み終わってました。。。

    読めば読むほど、つかみどころのない。
    むしろ、つかみたくない気になる。
    会話してるのに、会話しているのを読んでいるだけなのに、どんどん感情が迷子になりそうなお話。

    わかったつもりでわかってない。
    知ってるつもりで何も知らない。

    ちょっとなんていうか、複雑な気持ちにされる読後感な一冊です。。。

    • agokさん
      舞台鑑賞後日談。

      結論から言うと舞台はとてもよかった。
      読んできたキャラクターに肉がついた感じ。
      ケンヤの言葉が刺さる…。

      特殊な舞台装...
      舞台鑑賞後日談。

      結論から言うと舞台はとてもよかった。
      読んできたキャラクターに肉がついた感じ。
      ケンヤの言葉が刺さる…。

      特殊な舞台装置で、狭い空間をうまく使って場面を切り替えていく。照明も効果的で、切り替え感がちゃんと出ていた。舞台後、しばらくこの登場人物たちとアサミ、ケンヤの関係性の考えに囚われてしまう。そして、もう一度文字での登場人物たちの物語を噛み締めたいと思った。
      2024/02/08
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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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