隠し絵の囚人(上) (講談社文庫)

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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774123

作品紹介・あらすじ

一九七六年春。職を辞して実家に戻ったスティーヴンは亡くなったはずの伯父が生きていたことを知る。三十六年間アイルランドの監獄に収監されていたらしい。投獄の理由を口にしない伯父のもとに、ある日ロンドンの弁護士から奇妙な依頼が届く。実業家所蔵のピカソが盗品である証拠を見つけてほしいという。MWA賞最優秀賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 初めてゴダードを読みましたがとても面白いです。一気読みで時間の過ぎる感覚が無くなる程集中してしまいます。主人公が2年ぶりに母親の家へ里帰りすると36年前に亡くなった筈の叔父が家に居るという、、、いきなり意味不明な展開にぐっと心をワシ掴みにされます。

     1940年にアイルランドで投獄された叔父が36年目にして社会に戻ってきたが身寄りの無い彼は亡くなった弟の妻が経営するゲストハウスに滞在していた、

     何故死亡した事になっていたのか?何故刑を受けたのか?そして更なる不思議な事件が、、、

     ロンドンの弁護士からかつて叔父が世話になっていた実業家所有のピカソが盗品だという事実を暴く様に多額の報奨金付きで叔父に依頼があり叔父と主人公の甥は協力して過去を遡りピカソが他人所有だった事を調査する様になる、、、

     叔父の過去や祖父の暗い一面、鍵となる贋作の作家を巡る多数の関係者や証拠が次第に明らかになって行く。  

  • アメリカでの職を辞してイギリスの実家に戻ったスティ−ブンは、死んだと聞かされていた伯父がアイルランドの刑務所に36年間収監されていて、つい先ごろ出てきたところだと聞かされて驚いた。その伯父の所にロンドンの弁護士から、ある実業家の所蔵するピカソの絵画が盗まれたものであることを証明してほしいとの依頼が届いた。

  • 出だしとしては、面白いと思うけど、エルドリッチの動きが謎すぎで、取っつき難い。

    イギリスと、アイルランドの愛憎絡み合う歴史もあいまって、中々興味深い。

  • <上下巻読了>
     史実と虚構を織り交ぜた政治&美術ミステリ。
     第二次大戦下のイギリスとアイルランドを巡る駆け引きに、ピカソ贋作事件が絡み合い、時代と策謀に翻弄された人々が、平穏と真実を求めて東奔西走する。
     現時点での主人公の青年と、過去における伯父の視点が交互に語られる形式だが、長きに渡る監獄生活を経た伯父の人物像と、飄々としたアイロニーが、作中の謎解きに辛味を効かせている。
     終盤の少年時代の描写は、タイミングの妙と相俟って、小憎らしくも切ない。

  •  死んだとされいた伯父が突然姿を現す。彼は、36年間アイルランドの監獄に収監されていたという。
     1940年と1967年をピカソの贋作がつなげていく。

     やっぱりゴダードは上手い。
     構成力が半端ないと思う。初めて「リオノーラの肖像」を読んだ時も、その構成力に打ちのめされたのだけど、その時のことを思い出した。

     なぜ収監されていたのか語らない伯父だが、ピカソの贋作を追っていく過程で、何があったかが薄紙をはがすように明らかになっていく。現在と過去の関連づけが上手くて、人は、決して<点>で存在するのではないと感じた。そう、時間も、人と人の関わりも、常に複雑に絡み合ってつながっている。
     36年の間自由を奪われていた伯父ですら、結局その絡み合いから脱することができない。が、彼はそれを断ち切り新しいつながりのために戦うのだ。
     
     甥っ子が主人公で、彼が四苦八苦やってて、伯父は陰で動いてるっぽいんだけど、格好いいです。
     素敵オジサマでした。

     うん、ゴダードは、いい感じに枯れたオジさんを描かせると本当に上手い。

     ゴダードの職人技を充分に堪能いたしましたm(__)m

  • 死んだと聞かされていた叔父が突然現れて、叔父が抱える秘密にやむを得ず(というよりやや興味惹かれて)巻き込まれていく甥っ子が主人公。
    ハラハラドキドキな展開は全くなく、叔父が秘密を抱えることになった1940年の話と、その甥っ子の現代1976年の話が交互に語られることで謎解きがされる。
    当時のロンドンとアイルランドの関係がキー背景のミステリー。
    これはこの両国の複雑な関係による国民感情をよく知っているとより面白いのかもしれない。

  • KL 2013.8.6-2013.8.12
    確かに、これは昔のゴダードだ。
    面白い。

  • レビューは下巻にて。

  • 小説の書き出しからして大変巧い。物語は「母は、伯父が家に滞在していると言ってぼくを驚かせた」からはじまるのだが、一本の奇妙な謎の電話から幕を開ける冒頭のシーンから読者をつかまえて離さない。ゴダードお得意の徐々に明かされる過去の謎も、今回はその按配が絶妙だ。過去と言ってもそれほど古くなく、まだ関係者の多くが存命であるため、「千尋の闇」のように手紙が重要な小道具とはなっていない。物語の鍵を握る伯父はすぐ近くにいるので、喋らせれば一夜にして謎の多くは白日のものとなるが、作者は巧妙な仕掛けでそれを防いでいる。

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著者プロフィール

1954年英国ハンプシャー生まれ。ケンブリッジ大学で歴史を学ぶ。公務員生活を経て、’86年のデビュー作『千尋の闇』が絶賛され、以後、作品を次々と世に問うベストセラー作家に。『隠し絵の囚人』(講談社文庫)でMWA賞ペーパーバック部門最優秀賞を受賞。他の著作に、『還らざる日々』『血の裁き』『欺きの家』(すべて講談社文庫)など。

「2017年 『宿命の地(下) 1919年三部作 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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