爆笑問題のニッポンの教養 我働く ゆえに幸あり? 教育社会学

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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062826259

感想・レビュー・書評

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  • 今の働き方は、昔と比べて選択肢が増えています。しかし、そのことでかえって悪循環を生み出すのかもしれない、そう思いました。
    就業体系の多様化で労働者が利益を得るかと思いきや、逆に貧富の差を拡大させて混乱をきたしている。恋愛自由によって選択肢が増えたかに思えたが、実際は少子化の進行や晩婚化という悪影響の方が目立つようになっている。等々。時代が進むにつれて自由を得ようとしているのに、全体としては幸せにならないようになっているような気がします。ある程度のルールや制約がある方がいいのかも知れません。

    責任の所在は自己か社会か――。その原因を突き止めるのは良いですが、それで個人が救われるわけではありません。『私が稼げないのは社会のせいだ!』と仮に決まっても、ではその保障は社会がしてくれるわけではありませ(多少の保障はあるかも知れませんが、期待できるものではないです)。反対に、『私が稼げないのは私自身の能力の低さにある』と分かっても、極論を言えば、『じゃあ死ぬしかない』となります。その点では、太田の意見は現実を見ていて共感できます。まぁ、原因を突き止めるのが学者の仕事ですから、解決策を見出だして実践するところまでをがに求めるのは酷ですが……。
    すべての人が稼得能力があるわけではありません。能力の指標が稼得能力にのみ集中して、他の能力が蔑ろにされているのが問題だと思います。稼ぐ力は小さいけど、周囲の場を和ませる無くてはならない存在の人だっているし、癒しの存在になっている人だっているし、シャドーワーク(家事)に長けた人だっているし、そういう人が、ただ『稼げないの』というだけでの理由で生きていけない、生き辛い思いをしているのは、何か違う気がします。

    理想を掲げる著者と、それに噛み付く太田の論戦は、若干太田に分があるように感じました。著者の発想は悪くはないのですが、専門性を高める仕組み作りや活用ってのは、結局『働かないとダメ』と言っているのと同じで、まあそれはそうなんですが、なんか『生きる』=『仕事』になっていて、僕は『仕事のために生きるだけじゃイヤだ!もっと他にも価値のあるものだったある!』と言いたいのです。
    実際の仕事は、著者の言うように専門性が高ければ良いと言うものではありません。能力が高くても、所詮は人間同士の集まりですから、好き嫌いや派閥で効率良く展開されるわけではありません。どの業界も余裕がありません。そこが著者の『机上の空論』だと思わせるところで、共感できないところなのですが、一方で『現状の働き方はおかしい!変えなきゃ!』と奮闘する姿勢は共感できます。

    僕は、シルバー人材センターの若年版は作れないものかと常々考えています。高度な専門能力は無くても、ある程度のものができる人って、結構たくさんいますから、それを集めれば面白いんじゃないかと思うんです。
    保育士の資格を持っているけど別の仕事をしている→自宅保育の依頼
    野球の腕前がある→学校の外部コーチ
    パソコン操作に長けている→出張講座
    等、専門家に依頼すると高い料金がかかるのを防ぎ、安価で解決しようという試みです。
    この事業の柱としては
    ①人材派遣
    ②スキルアップ講座(知識・技能の拡大生産)による人材育成
    ③緩い絆の創出
    これが出来ないものかと思っているのですが、そんな酔狂な人がいるわけでもなく…、NPOでできればな~、なんて淡く思ってます。興味あれば連絡下さい(笑)。
    脱線しましたが、僕の評価はAにします。

  • 作ったものは使いたくなるのが人間というものだろうか。
    それが刺激的で攻撃性が高ければ高い程、その力が自分の力であるかのように錯覚して使いたくなるのではないだろうか。
    言葉の話である。
    “ニート“という言葉がある。
    本書によると、本来の意味は「16~18歳の就学・就労していないもの」というイギリス語だったが、2004年に輸入した際、「15~34歳で就学・就労せず就活していないもの」をニートと呼ぼうという合意ができたそうだ。
    そして産経新聞が「働かない若者『ニート』、10年間で1.6倍 就業意欲なく親に寄生」という刺激的な記事で”怠け者“という意味を煽ったらしい。
    以後、社会悪としてニートという言葉を皆が使い始めた。
    言葉で明確に区別した結果、魔女狩りさながらに怠け者と決め付けられる息苦しい世の中になってしまった。
    言葉には限界がある。感情は「楽しい」「悲しい」という言葉で全てを表現しきれない。
    だのに言葉は独り歩きする。
    人は考えるよりも先に言葉の持つ力を簡単に使おうとするからだ。

    ニートの言葉の意味なんかどうでもいい。そんな言葉無ければいい。
    他人の人生を言葉なんかで簡単に誹謗中傷されてたまるものか。

    降り懸かる火の粉は徹底的に排除するけれど、他人の人生に野次馬根性で乗り込むことは破廉恥だ。互いに互いの生き様を認め合える社会でありたいと願う。

  • <閲覧スタッフより>
    NHKの番組を書籍化したシリーズ。爆笑問題の二人が東大・教育社会学の本田由紀先生と「働く」について語ります。昨今の情勢から若者への辛辣なエールなど両者ともに譲らない個性的な激論が交わされます!
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    所在番号:914.6||ハモ||30
    資料番号:10194213
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  • 空回りする会話…ニートについて。
    一人が問題だと思っても、世の中全員が同じように思うとは限らない典型。

  • 図書館で偶然発見。

  • 私には勉強しなくてはならないことがたくさんあるなと強く感じた。私は教育に興味があり、若者の労働に興味があるけど、そのふたつのつながりや取り巻くものがたくさんあって、勉強し続けることで頭を柔らかくし続けなければ、すぐに古くて弱い主張になってしまうということ。私がこの4年に失った物の大きさを感じた。やはりこの分野は面白い。深くて深くて楽しい。私もニートに関する正しい理解や、労働のあり方について、発信できる人間でありたい。本田先生の本、もっと読まなくては!

  • 教育社会学者との対談。
    ニートに対して著者が真っ向から反論する。
    社会のシステムがおかしい→正社員から一度でも外れる→二度とその道に戻れない。
    たしかにその通りだし、頭ごなしにいう「大人」がこんな社会を作ったともいえる。ヘタなコメンテーターよりよっぽど正論である。

  • めちゃくちゃ読みやすい一冊。
    1時間くらいで読み終わった。
    ニートをやっていたという太田が意外と保守的な考えを持っていることがわかった。
    感情的な口調になる太田に対して本田教授が軽く対立することも。

    本田氏の主張はこういったものだ。

    ・右肩上がりだった時代を背景に今の金銭的、精神的、人間関係の「溜め」のない若者を責め、這い上がらせない社会は糾弾すべき。

    ・マスコミが働く意思があろうと「ニート」という言葉で情報操作して、悪くいうようになった社会(具体的には産経新聞の一面に報道されたことなど)

    ・ニートに限らず働いている人間も既存の就労体系を改めて、ヨーロッパのような社会を目指すべき(例として日本の異常なほどの残業率)

    太田が「ニート」=「自己責任」であると言及した。
    社会的背景などより自分の責任であると。
    就労している人であればそういう考えを持つのだろうか。
    「働いている」政治家が対策を打つべき現状の雇用問題などが遅れるわけだ。

  • 今現在起きている雇用やニートの問題はすべて若い人のせいではないという本田先生の意見には賛成のところがある。

    しかし,若干声を荒げる場面もあったかな?

  • 【2010年4冊目】

    さらっと,しかもずっとワクワクしながら読めました.
    テレビ番組にはない,細かな解説も載っていて,見識が深まった気がします.
    本田由紀さんも爆笑問題も,ますます好きになった.

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著者プロフィール

一九六五年埼玉県生まれ。八八年に田中裕二と「爆笑問題」を結成。二〇一〇年初めての小説『マボロシの鳥』を上梓。そのほかの著書に『違和感』『芸人人語』『笑って人類!』などがある。

「2023年 『文明の子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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