ひまわりのかっちゃん (講談社青い鳥文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062851466

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  • 筆者の西川つかささんは、大学中退後、アメリカをはじめアジア各国を放浪し、帰国後、ニッポン放送「夜のドラマハウス」脚本公募で入選し、デビュー。以後、ラジオ。テレビの脚本構成、マンガ原作、小説などジャンルを問わず活躍している人です。
    今は、自分の好きな仕事に就けたことの幸運に感謝し、自分なりの誇りも持っている西川さんですが、小学5年生までは、はんかくさくて、みったぐなしと親に罵られる子どもでした。
    はんかくさい、と、みったぐなし、はどちらも西川さんの故郷、北海道の方言だそうです。「はんかくさい」は、「とろい」や「のろい」。「みったぐなし」は、「見たくない」が訛ったものです。出来の良い兄と比較され、「このみったぐなし!すったら、みったぐない顔するんでねっての!」と、お母ちゃんに怒鳴られていました。
    みったぐなし、と怒られるのは、辛いものです。物差しでみみずばれができるまで殴られたりすると、もっと辛いです。でも、泣けませんでした。そうやって叩かれるときは、自分よりも、叩いているおかあちゃんのほうが辛そうな顔をして泣いているからです。「いいが。つかさ。勉強しねば、ほんとの馬鹿になってしまうんだよ?」と悔しそうにおかあちゃんは泣くのです。それでも、西川さんには、どうしてもわかりませんでした。例えば、どうして、ひらがなとカタカナと漢字があるのか。数字の4は、漢字で書いたらどうしてあんな形なのか、1も2も3も一本ずつ増えるんだから、4だって、もう一本ふやせばいいんじゃないか。時計にしたって、普通の数字で書いてくれたらいいのに、なんであんなわけのわからないローマ数字で書いてあったりするのか。おかずは毎日同じだと飽きるのに、どうして白いご飯は飽きないのか。先生に指されても、なんて答えていいのかわからない。クラスのみんなに笑われて恥ずかしい思いまでしてしまう。西川さんは、すっかり気持ちがこんがらがってしまっていました。
    気持ちがこんがらがって、自身が根こそぎなくなってしまうと、人は何にも出来なくなります。西川さんは、親にまで、みったぐなしと言われていましたから、ずっとそのまま、枯れたようになってしまう可能性もありました。何しろ自分の名前さえ、ちゃんと書けなかったのですから。
    でも、5年生で、人生が変わる出会いをします。相手は先生でした。

    先生と出会って人生が変わるなんて、アナタそんな今どき昼ドラにだってなりゃあしませんよ、と思うところなんですが、正統派直球ど真ん中にもかかわらず、これが面白いんです。「先生のことを、みんなは『先生』って呼ぶことになってるけど、なんもえらいとか怖いとかない。先生ってのは、「先に」「生まれた」って意味だ。先に生まれてるから、みんなより知ってることは色々あるけど、知らねごともいっぱいある」といったような先生です。
    この先生と出会ったおかげで、自分の名前さえちゃんと書けなかった西川さんが、卒業生の代表として、答辞を読むまでに変わります。
    昼ドラなんかじゃありません。西川さんのホントの話です。

    自分に自信が持てないときに、読み返したいかも。

  • 大切な人との出会いに心うたれる。お母さんこそ、子供の力を信じてあげるべきだった。

  • こういうのを教育がもたらす奇跡というのかな。
    作者西川つかささんの自伝小説。
    ひまわり学級に通うかっちゃんは、ろくに字も読めず計算もまるでできなかった。
    ところが新しい小学校でひとりの先生と出会うことで、勉強のしかたを知り、学ぶ意味を知る。
    先生の姿を見て努力もする。
    かつて時計が読めなくてお母ちゃんから竹のものさしで叩かれ、
    自分は拾われてきた子でいつか家を追い出されるんじゃあないかと怯えてたかっちゃんは、
    卒業式で答辞を読むまでになった。
    かっちゃんの成長のプロセスに泣き笑いしながら、一気読み。
    北海道の方言が心にストレートに届く。
    かっちゃんの武勇伝には脱帽。
    ほんとうにおもしろい子だ、かっちゃんは。

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