日本再生の戦略 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879897

作品紹介・あらすじ

日本よ、甦れ。アジア研究の第一人者が描く新しい「国のかたち」。

感想・レビュー・書評

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  • 何故少子化が生まれたのか。
    今から急に少子化対策、言い換えれば出生率増加対策を打ったとしても、すぐに人口構成を変化させられるわけではない。しかし、このままではやがて日本は徐々に活力を失った中規模国家に後退してしまうか、あるいは元気のいい有能な外国人が総人口の三割ほどを占め、実質的には彼らが経済を始め社会の中核を担ってリードしていくような国になってしまうだろう。東南アジア各国の経済がほとんど華僑によって牛耳られていることを思うなら、決してそれがあり得ない話ではないことは理解できるだろう。
    少子化の理由
    ①社会の発展に伴って価値観や生活様式の多様化が進み、夫婦の価値観としても安定的職業→結婚→出産→家族繁栄といったパターンが必ずしも絶対的なオプションだと考えられなくなってしまった。
    ②女性の社会の進出が進み、社会が女性を貴重な働き手とみなすようになってきたと同時に、女性も職業を重要な生き甲斐と考える風潮が強くなり家事・育児=女性の仕事という通念が崩れてきたことが指摘できる。結婚しない女性の割合や離婚率の上昇は国境を越えて一般的な社会現象である。
    ③こうした社会変化に対して国や社会がドラスティックな対策を打ってこなかったこと。
    ①②を否定することは出来ない。③を考え、手厚く補償する仕組みを考える必要がある。

    日本式経営とは
    ①終身雇用
    ②年功序列
    ③企業組合

    道州制理論
    東京一極集中ばかりが目立ち地方の衰退があまりにもはなはだしい状況にあって、道州制を取って地方の活性化を図ろうという意図は理解できる。しかし、私は一般的な分権化という意味での道州制論者ではない。なぜなら道州制がもし単に中央の権力をいくつかの地方に分権化するだけであるならば、必ずしも地方活性化の切り札にならないと思うからである。
    道州制の逆である一極集中型行政運営は地方の潜在力を根こそぎ吸い取ってしまうことになりかねない。
    しかし、道州制による地方分権化は、下手をすると全体的に縮小している日本の力の資源を分散化させてしまうことにもつながる。
    閉塞打開のために必要なことは「いかに経済成長するか、いかに競争に勝つか、いかに強い日本を再生させるか」という観点からではなく、「日本に住む多くの人々がそれぞれの生き方、それぞれの生活の価値を充実させながら、その地域に生きていることが幸せであると感じられる社会をいかに実現するか」という観点からの経済社会の再生を論ずることである。

    我が国の国土全体を地域分類した場合、一般的には都市的地域、平地農業地域、中山間地域(平地から山間地に至る地域)
    大都市には総合的な都市機能を持たせると同時に、ある分野においては特化された最先端の知識・技術・設備を保有させ、その面では完全に日本を代表する優位性を持たせるようにする。
    名古屋はトヨタをはじめとする自動車、鉄鋼、精密機器などの先進性を活かした高度な製造業の世界拠点=ものづくり産業集積拠点を目指す。中火稚気は特に輸送機械・電気機械・精密機器などの製造品出荷額が多く、全輸出額の実に56パーセントを占め、全国的にも20%のシェアを占めるほどである(2005ねんど)それだけに機械製造に関する知識人材が集積された地域になっている。この優位性をさらに生かすためには、行政機関、高等教育機関も一体となった専門人材育成の充実を図っていくことが不可欠である。
    日本全体の農業の流れを安価で安全なエコ、循環農業に大きく転換させることが出来たら、これは長期的に見て世界の中で日本の強みの一つになるのではないだろうか。

  • 中央図書館で読む。失望以外の言葉がありません。昔は、もう少しいい仕事をしていました。それだけです。

  • 思いつき的な部分も多くあるが、民営化、単なる合理化、GDPを引き上げるだけでは成り立たないことに気付かせてくれた。

  • 内容は悪くないがちょっと古かった。この後更に状況は悪化している。読むタイミングが悪かっただけで筆者のせいではない。

  •  迷走しつつある日本を再生させるのにどのような戦略が必要なのか。格差拡大などの現状を交えつつ述べた本。前半の現状を述べた部分は、年寄りの愚痴のような感じもあった。

     主に日本の自然環境、技術、叡智を駆使して再生を図る提案がなされている。少子化対策ならぬ人口増加政策を打ち出したり、世界一の平均寿命や温泉を利用した国立総合健康センターを建設したりするといった発想は面白い。あと、津軽湾や瀬戸内海を大きな生け簀に見立てて巨大な養殖漁場にするという壮大なものもあった。

     それにしても、「大和」には「大いに和する」の他に「和を尊ぶ」という意味があったのは知らなんだ。

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著者プロフィール

早稲田大名誉教授。1947年生まれ。
早稲田大学卒業、一橋大学大学院博士課程修了。社会学博士。外務省専門調査員として北京日本大使館勤務、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授等を歴任。
専門は、中国政治、東アジア国際関係論。
著書『中華人民共和国史 新版』(岩波新書)、『中国政治の社会態制』(岩波書店)、『「中国共産党」論』(NHK出版新書)、『日中対立』(ちくま新書)ほか多数。

「2021年 『中国のロジックと欧米思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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