- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062880190
作品紹介・あらすじ
誰よりも西欧自由主義を理解し、説いた作家は、誰よりも本気で祖国日本の勝利を願った。「鞍馬天狗」と「戦争協力」。
感想・レビュー・書評
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社会性を帯びた個人主義を主張した大佛次郎
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2009年10月20日、初、並、帯無2015年5月24日、松阪BF
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100323
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中央図書館で読む。この図書館はパソコンが使えるので便利です。購入すべきか悩んだ本です。非常に興味深い本でした。多くの人と同様に、名前は知っています。鞍馬天狗ぐらい知っています。ただし、読み方すら知りません。その意味で、いい入門書でした。題名は「大仏次郎」でいいのではないのか。そんな気がします。
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本書は、日本思想史を専門とし
現在は一橋大学大学院講師である著者が
『鞍馬天狗』で知られる昭和の作家・大佛次郎について論じる著作です。
吉野作造やクロポトキンらの洗礼を受けた学生時代
アメリカニズムにも、プロレタリアにも組しなかった戦前、
作家としてのあり方について葛藤しつつも、日本の勝利を願い信じ続けた戦時中
そして、「戦後」に絶望し保守主義へと転じた晩年
筆者は、大佛の生涯を追いつつ
鞍馬天狗以外の作品や日記等も参照することで、
一見相反するような思想・信念が、
一人の作家の中で、複雑に混在していたことを明らかにします。
鞍馬天狗と坂本竜馬の関係や
戦時中の小林秀雄、川端康成、里見クらへの想いなどはもちろん
戦前・戦時中の楠木正成の美化については、大佛が疑問を呈していた
―などの記述はいずれも興味深いのですが
なかでも、最も印象的だったのは
生麦事件を扱った『鞍馬天狗敗れず』についての記述です。
軍国主義の時代においても、時代小説のスタイルをとることで
自由主義を体現することに成功したと評される『鞍馬天狗』シリーズ。
しかし、敗戦色が濃厚になる中で描かれた『鞍馬天狗敗れず』の背後には、
無駄死にへの戒めと日本の勝利、愛国心と体制への怒り―
それらの狭間でのすさまじい葛藤があったという指摘は、
一人の作家論としてだけではなく
抑圧の時代において、一個人としていかに身を処するか
という観点からも、とても示唆に富んでいるように感じました。
これまで、自由主義者の側面が強調された大佛について
新たな視座を提供するとともに、より深遠な洞察を加えた本書。
大佛の小説や鞍馬天狗に興味がある方に限らず
多くの方に読んでいただきたい著作です。
補~勘違いでなければ、280ページの「1948年」は「1848年」だと思うのですが・・・ -
とても興味深い内容。
ここまで戦争へ協力をし、日本の勝利を願った「自由主義的知識人」というのもすごい。戦後、色々言い訳する他の知識人より、ここまでくるとかえってすがすがしい。なんか突き抜けてる。
クロポトキンとかロープシンに影響を受けてるのに「鞍馬天狗」を書いちゃう分裂ぶりは、本人の中では矛盾はない。
そして西欧自由主義者と戦争協力者との共存。
それが、大佛次郎の偽らざる姿だろう。