- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062880916
作品紹介・あらすじ
日銀の金融政策をどのように変えれば、デフレと超円高から脱却して、雇用も、財政も、年金も大きく改善できるかを明らかにする。
感想・レビュー・書評
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著者は金融を専門とする学者。本書の刊行は2011年。
デフレと超円高に苦しむ日本について、その原因は日本銀行の金融政策にあると説く。当時の日銀総裁は白川方明。うやむやな金融政策がデフレの安定化に導いていると指摘。
デフレ脱却への提言は日銀がインフレ目標をコミットしマネタリーベースの持続的拡大を行い、予想インフレ率を上昇させること。それで市場が円安および投資と消費の増加かを呼び込むと解説する。
結果論だが、黒田東彦総裁が就任以降まさにこれらのことが実行してきたことだが、残念ながら現実にはデフレから脱却できているとは言えない。今住んでいるところから見ると日本は物価がすごく安いとなお一層感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日銀副総裁としてインフレ・ターゲット政策を推進する著者が、これまでの日銀の金融政策を批判し、デフレ脱却へ向けてのシナリオを描いた本です。
「緊急出版」ということで、もう少しポレミカルな内容を予想していたのですが、中身はデフレと円高の関係について、著者自身の理論的立場に基づいて、ていねいに解説している本という印象です。 -
2015.2.19
為替は、インフレ率と金利差が指標となる。デフレが進行すれば、その通貨での購買力が高まり、需要が高まるため、通貨高となる。
デフレがなぜ悪いのか。デフレだとモノが売れず、企業の業績悪化。給料下落の悪循環。また円高で、空洞化。
マネタリーベースとそれに対するインフレ予想率期待値が、デフレの原因。その市場予想により、プロ投資家が株を買い、株価が上がる。それで庶民のマネーも、流入する。
財政規律の問題は、国債を購入しようとしまいと解決しなくてはならない問題。デフレ脱却で、景気よくして、税収上げると、いいじゃんってこと。
まさにアベノミクスであり、税収も増えてるし、原油も下がってるからね。これで、原発動かせば、もっていいんだけどね。 -
今の日銀の動きに対しての裏付け理論が書かれている本。
日米の金利差が小さければ、円安になる。
でも、やはり最後にいつまでも日銀が国債の引き受けをするのではなく、安定期に入ったら財政健全化に向けたプランを策定しなくてはならないが。
読んでなかなかに勉強になった。
やっぱり、1年前に考えたことと同じことが起こっているが。 -
偶然、日銀副総裁の本あった。
すげー名著。災害リスクとかなければ確かに
デフレ脱却できるわ。実体経済も
この理屈でいけばうまくいくよ。あとはイノベーションとか
起業しやすい社会制度作りだね。
「貨幣の供給」と「貨幣の需要」の理解が深まりました。
本から抜粋
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■インフレ目標政策によるデフレ脱却のメカニズム
日銀がインフレ目標の中期的達成のコミット
↓
長期国債買いオペによるマネタリー・ベースの持続的拡大
↓
予想インフレ率の拡大→予想実質金利の低下→投資と消費の増加→*へ
株価の大幅上昇
↓ ↑
円ドルレート、実質実効為替本場の低下
↓
輸出増加、輸入競争産業に対する需要増加
↓
総需要の持続的増加(*)
↓
デフレ脱却 -
消費増税が叫ばれる中、いま日本が置かれている状況を知るために読んでみた。
デフレを止め、景気を回復させるには、
①単純に供給する貨幣を増やせばよいというのは誤解で、
②世の中にインフレ予想を形成させることが重要であり、
③そのためには中央銀行である日銀の「金融政策レジーム転換」が必要、
というロジックはなるほどと思った。
ただ、日銀批判が前面に出て論調が極端なこと、グラフの見せ方に恣意性を感じることから、星は3つで。
今度はこの対論となる本も読んでみよう。 -
2012年2月からの日銀によるインフレ予想への誘導が、本書の内容を実証しつつあると感じる。
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岩田規久男節炸裂。日銀批判が強いのは、それだけ日銀が政策責任者だということを自覚していないこと
20年程にもわたるデフレ放置が日銀によって続くこと
デフレによる弊害、平均賃金の低落が続き、それによって、消費量が減り
国民所得が減り、企業間競争が必要以上に苛烈になり、雇用も満足に確保できず、比較的体力のある企業は投資先が見つからず内部留保に邁進し続けること、株価の上昇もなく、年金運用も旨く行かなくなることなど
・・・クルーグマンが10年以上前から言っていることがマクロ経済として日本で起きているんだよねぇ。
その辺も推察してやらなければ、著者を指弾することに躍起となるのもどうかと思う・・・。
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本書の著者は「インフレ・ターゲット派の総帥」だそうであるが、本書はそれにふさわしい迫力と説得力があると感じた。
超円高や失業増の原因などの日本経済の諸悪の根源は「デフレ」であるとの詳細な論理的主張は説得力があるし、「デフレでは財政再建は不可能」との主張もわかりやすい。また、その「デフレ」を放置している「日本銀行」への攻撃も強い説得力がある。
確かに本書で指摘しているとおり、日本経済の「長期経済停滞はバブルつぶしの金融政策から始まった」し、「日本以外はなぜデフレではないのか」の主張ももっともであるとは思うし、「デフレと円高で得をする特権階層」もあるとは思うし、「インフレもデフレも貨幣的現象である」ならば、大きな責任が「日本銀行」にあるのは間違いがないとは思うが、はたしてすべてが「日銀」のみの責任なのだろうか。
本書は、解決法として「インフレ目標でデフレも円高もとめられる」と主張している。
現実の昨今の日銀の政策目標も、本書の主張どおりに進行しているように思えることから、本書の主張が正しいものなのかどうかは現在検証されているかのように思える。
本書は日本経済の現状と進行について、こういうことなのかと深く理解できるように思える良書であると高く評価したい。
それにしても、どんなことを行っても日本経済が長期のデフレと経済低迷から脱却してもらいたいものだと強く思った。だれの責任であろうとも、20年近いデフレなど過去の経済史からは前例もないひどい状況なのだろうから。 -
安達誠司『円高の正体』とほぼ同様の意図で同種の内容が書かれている。為替と物価には深い関わりがあり、現状のデフレと円高は金融政策の結果として持続されていることが示されている。
このテーマにこれまであまり触れたことがなければ、まず『円高の正体』を薦めるが、併読すれば為替と物価の関係について一層理解が深まる。本著では日銀の金融政策の現状とその対処策としてのインフレ目標の有効性についての記載が詳しい。
両著を読んだうえで日々の新聞報道に接すると、日米の中央銀行の政策動向が現実の為替や株価に実に鮮明に影響を及ぼしていることが感じられるだろう。