SFを実現する 3Dプリンタの想像力 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882651

作品紹介・あらすじ

「情報処理」から「物質変換」へ
おどろきの未来はもう始まっている!


私は「3Dプリンタで何がつくれるのですか」という質問をよく受けるのですが、
そのたびに「ワープロで何が書けるのですか」や
「ピアノで何が弾けるのですか」という質問と同じような奇妙さを感じてしまいます。

3Dプリンタをはじめとするデジタル工作機械は、
既存の何かを効率化したり、つくりだしたりするツールというよりも、
……創造や発想を刺激する「発明」ツールだと常々考えてきたからです。

3Dプリンタは、私たちに「何をつくりたいのか」を問いかけているのです。
――本文より

感想・レビュー・書評

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  • 文字と絵のデータのやりとりをする情報時代に「物質データ」を受けることで、3Dプリンターで「もの」が出力できる。ものが、データだけで移動できる。
    音楽や映画もデータで受け取り再生できる。ものが、データで再生できるのも不思議ではない。

    3Dプリンターが、3Dプリンターの部品を作る。それができるならば、3Dプリンターが自己増殖することになる。自分自身で複製する。
    デジタル革命1.0は、半導体とコンピュータによる計算。
    デジタル革命2.0は、スマホとインターネットによる双方向の通信。
    デジタル革命3.0は、新材料と3Dプリンターによるものつくり。

    工作機械などにコンピュータがついたのが、コンピュータとネットワークに工作機械がつながることで、物作りが変わるのだ。スイスでデータを作り、送信して日本で作るということができる。
    ハサミ、カッター、ドリル、レーザーカッター、工作機械は、材料があって切り取っていく、「引き算」の製造で、いらないゴミが出てくる。3Dプリンターは、粘土で作るように、材料をつけたりして「足し算」の製造となる。そして、ゴミも出ない。また作ったものを粉砕して、リユースできる可能性もある。環境に優しい製造になる。
    作りたいものを、3Dスキャナーで読み取り、3Dプリンターで複製する。それは再生産可能である。
    私は、マグロの寿司を作る3Dプリンターを見た。それは、まるでケーキのようだった。素材と3Dプリンターがあれば、マグロ寿司は、世界中でどこでもできる。そして、宇宙船の中でも、マグロ寿司ができる。
    3Dプリンターは、樹脂、シリコン、金属、ゴム、石などで作ることができ、大量生産ではなく、必要な分量を作ることができる。ものを作ることと移出型にすれば、壁や道路も作れる。今までにない新しいものづくりの風景が生まれることになる。

  •  ある意味SFを実現していると言っていいと思った。FABに関する成書。オライリー系以外で、しかも新書ということで即入手。一気読み。
     3Dプリンタの課題の1つである、印刷速度の遅さについてはそのうちなんとかなるんであろうか?とか思いつつも、欲しくてしょうがない。近所にはFAB工房はないが、木工工房はあるので、その辺からデビューしていけたらと画策開始。何かしらないが久々のワクワク感に駆られている。デジタル化しているだけで、やってることは子供時代の秘密基地ごっこ+αみたいなところが多々あるが、それもまた良しか?!
     小型の旋盤とかフライス盤をつくろうという動きもぜったいあるはずなので、色々調べていきたい。工作者は潜在的にかなりの人数いるはずだし。

  • SFというよりは、近未来だと思いました。これから、3Dプリンタが、よりこなれていくのに期待したいと思います。

  • 6、3Dプリンタについて何が出来るのか、についてもう少し突っ込んだ本を読みたくて。「SF」は想像していた「サイエンスフィクション」ではなくて「ソーシャル・ファブリケーション」(筆者の造語?)だったのがちょっと驚きで、その分求めていた内容とは違ったけど、これはこれで。

  • 3Dプリンタで色々やってみたいことがあり、ただそれだけの理由で本書を手に入れたところ、あまりに内容が深すぎるのと、著者の考えや「ものづくり」への深い想いに強く共感してしまい3Dプリンタどころでなくなってしまった。

    本書で語られているのは「思想としての3Dプリンタ」であり「ものづくりを通して見る社会」である。単なる「3Dプリンタでなにがつくれるのか?」という問いかけが、じつは形而上的な性質を含んでおり、それらとても深い返答を試みているように思える。

    事実、本書によると3Dプリンタがつくるのは「新しい社会」であり、「新しいコミュニティー」である。そして、それらは「新しい生産体制」から生み出されるようだ。

    またインターネットという括りで本書を捉えると、宇野常寛の主張する「遅いインターネットで知的衰退から逃れる」といった「僕たちはあなた方と違って、考えて行動する人なんですよ」みたいな多様性を葬り去った上での優越感あふれる思考上の「集会」とは異なり、あくまでフィジカルに多様性を保ちつつ、社会の可能性を追求する姿勢が全面に出ていて好感が持てる。

  • 現在、読書をするときのテーマとして何項目かありますが、その一つに「3Dプリンタ」があります。凄い技術であると悟ったのが、なんと今年(2017)になってから、理系出身・金属工学を専攻・自動車部品関連メーカ勤務の私にとっては恥ずかしい限りですが、遅まきながら、関連図書を読んで情報収集をするこの頃です。

    モノをつくるときに、今までは塊をスタートとして、切ったり伸ばしたり削ったり磨いたりと、ゴミ(再利用できるかもしれませんが所詮、不要物です)を出しながら作り上げるプロセスでした。その過程で、潤滑油や刃物、磨き粉等が必要になってきたのです。

    それら全てを不要にしかねない技術が、この本のテーマである、3Dプリンタです。これはまさしく、私が子供の頃(40年以上前)に見た、SFやアニメでの世界です。それらを見て育った技術者が開発して、ますます進化させています。

    携帯電話も初めは話すだけで(それでも凄いと思いましたが)、その後、写真や動画が遅れるようになり、さらにはインターネットが利用でき、今では小型パソコンとして機能しています。電子マネーの財布、銀行振り込みもできて、10年前でも想像できなかった世界です。

    今進化中の3Dプリンタが、あと10年から20年経過したらどうなっているのでしょう。今どの家にもある、コードレスのカラープリンタ、レーザープリンタが、3Dプリンタに置き換わる日も近いことでしょう。ということを考えながら楽しく読ませてもらった本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・モノの受送信とは、すなわち、かつては空想だった「遠隔転送(空間伝送)」の技術に他ならない、画面上の文字情報(デジタルデータ)のみをやりとりする現在の情報社会を超えた、「物質データ」をもやりとりするネットワーク社会の次のフェーズが、今目前に迫っている(p5)

    ・今ここに書き残しておきたいのは、21世紀初頭を生きる私たちが持ちうる新しいビジョン、そしてそれを実現していくために必要な態度(アティチュード)である(p7)

    ・デジタル革命3.0からは、頭脳だけでなく、ものをつくる「手」「道具」そして「機械」をつないでいくことから始まる。世界中の「つくる手段」が接続されてゆくのです。インターネットを背景に、より強く、外の世界へと働きかけていく(p37)

    ・私達の細胞のなかには、3Dプリンタと似た機能がもともと備わっている、遺伝情報が書き込まれたDNAの塩基配列は、4種類の記号の組み合わせ(2ビットのデジタルデータ)の列に過ぎない、このデータは、リボゾーム、と呼ばれる細胞内の小器官で、20種類以上の材料に対応づけられ、それらが連結されてアミノ酸が組み立てられる。それらは最終的にたんぱく質をつくる(p41)

    ・3Dスキャンと、3Dプリンタは、写真における「撮影と現像」の関係になる(p75)

    ・3Dプリンタは、プリンタ(印刷)という意味では「図書館」につながっているが、3D(立体物)という意味では、土器・石器のならぶ「博物館」とつながっている(p91)

    ・これまでテクノロジーが届くことが無かった辺境の場所で、大量生産品だけはカバーできなかった、問題解決型エンジニアリングを促進する場所として、ファブラボが広まっている。世界の周縁の地ほど、最先端技術を必要としている(p97)

    ・リバースイノベーションとは、個別具体的な問題に即した途上国の「現場」でまずイノベーション(新しい情報の組み合わせ)が起こり、それが先進国へと逆流することを説明した概念(p110)

    ・いまでは各デジタル工作機械が、バラバラに分かれている。それはかつての、ワープロ・シンセサイザー・ビデオデッキ、のように感じられる。それらが、また、その一部がソフトウェアに改宗されながら、パーソナルコンピュータ、というひとつの装置に統合されたように、今はバラバラの工作機械が複合機となり、最終的には汎用的な機械に統合される未来が考えられる(p122)

    ・ロングテールが示すように、新しい時代とは、大ヒット作がなくなる時代ではなk、大ヒット作による独占が終わる時代である(p179)

    ・マサチューセッツ州でできた法案は、自分の自動車は自分が好きな工場で修理できる、というもの。この法案では、自動車メーカ各社に対して、州内の自動車保有者や修理業者にすべてのサービス情報を公開するように義務付けている、メイン州でも法案提出(p187)

    ・今回は、家内制手工業ではなく、歴史上初めて、ネットワークにつながった、デジタル工作機械による「家内制機械工業」である(p189)

    ・長さを2倍にすれば、面積は4倍、体積8倍、つまり重量も8倍となる、縮小模型では、自重がかかった実寸大でどれくらい耐えられるかを完全に実験できない(p214)

    ・ガリバー旅行記のガリバーの場合、地面と接する足の面積は、12の2乗で144倍、144倍しかない足の面積で、1728倍(12の3乗)の体重を支えることはできない。これが空想と現実の大きな違い(p215)

    ・コンピュータの画面上のデジタルな文字は、細かな光の点(ドット)の集まりである、この「ドット」が、手に触れられる物理的な「粒」となって、立体となって取り出すこともでき、ディスプレイに戻すこともできる(p228)

    ・フィジタルなものづくりとは、ある単位をもとに、バラバラに組み立てたり分解したりするような、本質的に終わりのないものづくり、である。この性質をもったものとして、1)木組み(組む)、2)折り紙(折る)、3)編み物(編む)、がある(p249、250)

    2017年11月12日作成

  • 第1章 SFとFAB 空想から現実へ
    モノの代わりとなるデータの流通。モノの送受信をする3DFAX。物質データのやりとり。空間伝送、遠隔転送。
    ソーシャルファブリケーション。オープンソースハードウェア。バージョンアップされる3Dプリンタの部品データ。RepRap。
    1個からでもつくれる、複雑なものを出力するだけ、データは距離を超える。
    自発的な人々が社会的に連携することで進行していくプロセスに意味がある。ネットワークxものづくり。
    第2章 メディアとFAB 情報から物質へ
    デジタル工作機械=創造や発想を刺激する発明ツール。
    情報の見える化から触れる化へ。
    第3章 パソコンとFAB つかうからつくるへ
    ローカルでありながらグローバルである。 ハイテク自給自足生活。問題解決型エンジニアリング。 世界の周縁の地ほど最先端技術を必要としている。
    ネットワーク型の工房。 ビデオ会議システムでの同時会話。カメラ組み込み式作業共有テーブルFabtable。
    ハードウェアとしての pc を配るだけでは意味がない。重要なのは、現場で使用者自身がその場合やその人に合うようにテクノロジーを再編集できるための施設。 ファブラボ標準機材、レーザーカッター 、cnc ミリングマシン、3 d プリンター、ペーパーカッター、デジタル刺繍ミシン、電子工作の道具一式。
    第4章 地域地球環境とFAB グローバルからグローカルへ
    未来の3 d プリンターはただ作るだけではなく材料まで戻すことを担わなければならない。

    情報技術と環境技術という二つの視点に立脚した新しい作り方の提案である。

  • 2014年刊。著者は慶應義塾大学環境情報学部准教授。

     紙やアクリル製の「自作レコード盤ができるよ」との件でイメージし得る3Dプリンター。

     元来計算機でしかなかったコンピュータは、情報の伝達・発信・受信(通信)機器となり、そして「物」の製造装置へと変化していく。
     かように情報出力の革命的変容をもたらすであろう3Dプリンターが作り出す未来の生活像について、本書は開陳して見せる。
     ここで描かれる将来像は楽しそうだし、それ自体は確かに、C(コンシューマ)ではそうかもと思える。
     が、B(ビジネス)やP(プロダクター)からはどうかなと思わなくはない。

  • リバースイノベーションとはイノベーションgあ先進国から途上国に普及すると思われていたのに、むしろ逆で、より個別具体的な問題にそくした途上国の現場でまずいのべー所願起こり、それが先進国へと逆流するtこを説明した概念。

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著者プロフィール

慶應義塾大学環境情報学部准教授。
1998年京都大学総合人間学部卒業。2000年京都大学人間環境学研究科修了、2003年東京大学工学系研究科博士後期課程修了、博士(工学)。2003年京都大学情報学研究科COE研究員、2004年東京大学生産技術研究所助手などを経て、2008年より現職。2011年Fab Lab Kamakuraを設立。未踏ソフトウェア開発支援事業天才プログラマー・スーパークリエイター賞、日本グッドデザイン賞 新領域部門、アルスエレクトロニカ ハイブリッドアート部門 Honorary Mention等、受賞多数。
主要著書に、『FabLife――デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」』(オライリー・ジャパン、2012年)、『Fab――パーソナルコンピューターからパーソナルファブリケーションへ』(監修、オライリー・ジャパン、2012年)ほか多数。

「2013年 『x‐DESIGN 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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