タモリと戦後ニッポン (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883283

作品紹介・あらすじ

終戦直後に生まれ古希を迎えた
稀代の司会者の半生と、
敗戦から70年が経過した日本。

双方を重ね合わせることで、
あらためて戦後ニッポンの歩みを
検証・考察した、新感覚現代史!

まったくあたらしいタモリ本!

タモリとは「日本の戦後」そのものだった!

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本書はタモリの足跡を通して
戦後ニッポンの歩みを振り返るというものである。

なぜ、タモリを軸としたのか。

それはまず何より、彼が一九四五年八月二二日と
終戦のちょうど一週間後に生まれ、
その半生は戦後史と軌を一にしているからである。

(中略)本書ではもちろんタモリと場所と時間を共有した
著名人もたくさんとりあげるつもりだが、それとあわせて、
(中略)タモリとどこかですれ違っていたはずの
より多くの人たちにも目を向けたい。

そんな有名無名の人たちとタモリとの接点にこそ
時代性とやらは宿っていると思うからだ。

というわけで本書には多くの場所が登場する。

大学、ジャズ喫茶、ボウリング場、酒場、生放送のスタジオetc.……

タモリが各時代ごとにすごした場所をたどり、
そこでの人間関係をひもときながら、
戦後という時代を描き出せたらいいのだが。

まずは彼の幻の故郷ともいうべき
旧満洲を旅してみることにしよう。―「はじめに」より

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◆本書のおもな内容◆
序 章  偽郷としての満洲
第1章 坂とラジオ、そしてジャズ―祖父母に育てられて
第2章 大学紛争とダンモ研狂騒曲―森田一義から「タモリ」へ
第3章 空白の7年間―ボウリングブームのなかで
第4章 ニッポン最後の居候―タモリ出現
第5章 テレビ「お笑い」革命―芸能人と文化人のあいだで
第6章 “変節”と“不変”―フジテレビの絶頂と『笑っていいとも!』
第7章 「リスペクト・フォー・タモリ」ブーム―テレビは終わらない
終 章  タモリとニッポンの“老後”

感想・レビュー・書評

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  • 2019年10月17日読了。cakesでの連載を書籍化したというタモリ論。「戦後ニッポン」という切り口は面白い、密室芸人として周りに押し出されるように世に出たタモリはテレビの露出が増えるに従い毒のない人物に変節していった、というイメージがあるが、戦後日本の文化(特にテレビ)レベルの向上、人々の関心の変化が彼を見る目を変えてきただけでタモリ自身の趣味嗜好・観察眼など本質はずっと変わっていない、とする観点は面白い。「他の才能を立てる」という点でタモリはたけし、さんまとは異なり、むしろ森繁久彌にその立ち位置は近い、という指摘も、自分は森繁翁のすごさは知らないのだが興味深い。いいともの最終回、見ておけばよかったな。

  • ほぼずっとタモリの話で「戦後ニッポン(社会学的分析)」の話は少ない。タモリに興味ない人は読んでいて辛い

    ●感想
     タイトルに惹かれてaudiobook.jpで購入。タモリという芸能人と「戦後日本」のダイナミクスが語れることを期待してしまったが、内容は「タモリ」一色である。タモリの大学時代から今に至るまでを終始ミクロに語る。「あの時代のとき、~なタモリの芸がウケた」「タモリのこういとろが革新的だった」と語られるが、芸能界・タモリそのものに興味がない私にとっては読み通すのが辛かった。タイトルのように、タモリや芸能界の事象をもっと抽象化して、日本社会と結びつけて語ってくれれば良いのだが...。そういった理論化・抽象的コンセプトはとくに見当たらない。当時の芸能事情が多く書かれているばかり。タモリ好きは読めばよいと思うが...

  • タイトルや「はじめに」からは、タモリを通して戦後日本を説明するもののように見えるが、実際の内容はタモリの活躍の歴史をつづったもの。

    タモリのTVへの登場したころの話は赤塚不二夫の居候くらいしか知らなかったが、その前に山下洋輔たちとのかかわりからブレイクしていったというくだりが、読んでいてワクワクした。

    ロックでも60年代とかのビートルズやストーンズが生まれてきて色々なバンド、色々なロックの形態ができてくるころ発展途上の文化において化学反応を起こしていく頃の話はワクワクするが、それに似ていると思う。

    いわゆるJazzの持っているフリー感がタモリの芸に影響を及ぼしているのだなというのが発見んだった。山下洋輔の初期トリオの中村誠一という方がタモリと同様のインチキ外国語しゃべったり、フリー落語というものをやったり、音楽と同じように、フリージャズの奔放さを笑いにつなげるという、深遠さ。そういえば、現代アートのハプニングとかも、この少し前のころの話なんでしょう。
    芸術が格式ばったものではなく、サブカルチャーとして生き生きと表現されていく生命感。そんな気配がする。

    言葉がわからないこと、意味がわからないということが重要とか、ネクラネアカのことを根が明るいか暗いか、表面上の明るさ暗さではなく、あくまで根がどうなのかという点が重要とか、本質的な部分、タモリは冷静に、物事の核の部分に焦点を合てているのが、非常にアーティスティックだと思う。

    もともと登場したてのタモリは毒いっぱいでインディーズスピリッツ満載だったのが、芸能界の表舞台にぱっと適用して洗練してしまうという器用さがあったことが凄いのでしょうね。

    と、タモリのことに詳しくなれる本ですが、戦後のことはあまり関係ないので、タイトル通りではない点が物足りない。

    西川きよしがタモリ、たけしとほぼ年齢が同じというのが驚きでした。(きよしは中卒、タモリ、たけしは大卒の違いから、きよしはタモリ、たけしの芸能界入り時点ですでに大御所だった)

  • タモリを過剰に賢しらに持ち上げることがスノッブであるという最近の風潮(に片足は乗りつつも)どうかと思うのだけれど、この本は面白かった。

    終戦の7日後に生まれたタモリというひとりの人間を通して戦後日本を振り返るという試み。なるほど、こういう企画にこれほど打って付けの人もいないではないか。


    戦後の日本が築き上げてきた「平和ボケ」を体現してきた人だと言っても過言ではないか(んなぁ、こたぁ、ない)。


    90年代においてはタモリは低評価だったと思うが、それとその頃の時勢が左傾化していたことと因果関係がある? ない? …ないか。

    にしてもタモリの代名詞である『笑っていいとも!』テレフォンショッキング終盤のゲストに安倍晋三が出たことは皮肉で象徴的な出来事であると思う(仕込んだ人間が後の歴史的評価を込みで仕込んだというと相当性格悪いな)。

  •  とても面白い戦後日本文化?史。
     読後、記述にもあった、赤塚氏葬儀での氏の弔辞を思い出した。タモリと言えばジャズ、という印象だったが、懐かしの4か国語麻雀やらハナモゲラ(言葉だけ聞いたことがあった)の話を通じて、日本の大衆文化を記す、というのが面白かった。

  • よく調べたなぁと感心するものの、いいとものあたりからくどさを感じた。上京〜帰郷〜再上京のくだりはワクワクさせてもらった。タモさんが見出されるのはその必然性があったと。

  • 「タモリ」と「戦後ニッポン」
    ミスマッチ(?)の妙でしょうか
    大変 興味深く 読みました

    TVは全く見ないので
    タモリさんという人がどんな人なのかも
    ほとんどよく知りません
    ただ 山下洋輔さんのエッセイの中で
    かなり興味深い人であることは
    なんとなく思っていました

    この本に登場する固有名詞は
    なんとなくわかる程度です

    それでも
    いやはや 面白く
    よませてもらいました

    その固有名詞の人たちを
    もうちょっと 知っていたら
    もう少し深く味わえたのでしょうね
     

  • 芸人さんを通して戦後の日本を俯瞰視するには、肩が凝らず 良い
    読み物である。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00533843

  • タモリの人生を振り返りながら日本の戦後史を語る。終戦の年に生まれたタモリさんの半生を見ていくことで日本の時代、風俗が立体的に浮かび上がる感がある。
    タモリさん自身への直接のインタビューはないので、まるで死後に出版された本みたいな印象も。
    ブラタモリは末永く元気に続けてほしい。

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著者プロフィール

1976年愛知県生まれ。ライター。サブカルチャー誌『クイック・ジャパン』(太田出版)の編集アシスタントを経て、1997年よりフリーランスに。『ユリイカ』『プレジデント』『AERA』『ビジスタニュース』『エキレビ!』など、雑誌やウェブへの執筆多数。著書に『ビートたけしと北野武』、『タモリと戦後ニッポン』(いずれも講談社現代新書)、『私鉄探検』(ソフトバンク新書)、『新幹線と日本の半世紀』(交通新聞社新書)がある。現在、ウェブサイト「文春オンライン」にて毎日その日にちなんだ記事「ご存知ですか?」を、「cakes」にて物故した著名人の足跡をたどるコラム「一故人」を連載中。一見関係のなさそうな事物や人物を結びつける“三題噺”的な手法を得意とする。モットーは「現在の事象のなかから歴史を、歴史のなかから現在を見出す」。

「2017年 『一故人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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