珈琲挽き (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 82
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062902229

作品紹介・あらすじ

平穏な日常、花鳥風月、友人たちと師との交流。
遠い風景や時間の流れを、淡いユーモアで見事に描く、
大正・昭和・平成を生きた作家、小沼丹。
移ろいゆく心象風景の中に、人生のドラマを明るく描く、
『小さな手袋』につづく生前最後の随筆集。
「狆の二日酔い」などの秀逸な作品を含み、
上質な文章で心優しく読者を誘う、85篇収録。

感想・レビュー・書評

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  • だいぶ前に雑誌で、「coffeeが飲みたくなる本」と紹介されていました。
    85篇の随筆集ですが、珈琲について書かれているのは1編のみで、それほど珈琲が飲みたくなる感じもしませんでした。
    しかし、1970-80年代の何気ない日常が文章巧みに書かれていて、鳥や花なども多く出てきて、楽しい内容でした。
    また、文庫本はどうなのかわかりませんが、私が図書館で借りた1994年発行の本は、旧漢字が多く使われ、色々と勉強になりました。

  • しかし文庫なのに高いよなぁ。

  • 読み進めるのがもったいない。そんな感じがずっとしていて、「懐中時計」で気に入ったこの作者の日常と考えていることが垣間見られて、よい読後感。ファンじゃなくても、時代と交友がよくわかります。

  • 2016/4/26

  • 感情の乱高下を
    微塵も感じさせない
    整った文体は まさしく
    漱石を思い起こさせる。

    自然の風物が
    人間と同じ重さで登場する様は
    梨木香歩のエッセイに通じる
    視座の確かさを 感じさせてもくれる。

    悠揚として迫らぬ整頓された言葉たちは
    一気に読み通してはつまらぬと気づき
    2週間をかけて ゆっくりと途切れ途切れに
    行きつ戻りつしながら 読み進めた。

    ひとつの特徴に思い当たった。
    「…かしらん?」という口癖のことではない。
    このエッセイに書かれた 愛すべき文人や
    市井の人々は みなこの本に載せられた時には
    亡くなっているということだ。

    作者の礼節ある態度に思い至り
    大変吃驚した。

    つまりは 生者のことを書けば
    何かしらの迷惑をかけるだろうと
    小沼氏は考えたに違いない。

    既に亡くなった人たちの愛すべき振る舞いも
    小沼氏の超然とした面差しや発言も
    この本が醸し出す気品には
    欠くべからざる要素なのだな。

    梨木氏と僅かに異なる点もまた見出して
    とても面白かった。

    梨木氏が自然の風物に同化すると
    必ず生まれ始める幻想性。
    ところが小沼氏は ぎりぎりのところで
    人間界に踏みとどまってみせる。
    時々危うい時も散見されるけれども。

    この文体は味わうにふさわしい風格がある。
    言葉は明治の薫香を匂わせながらも
    重厚で黴臭い時代の重みから
    さらりと身をかわす 軽業師のような所作で。
    小沼氏の文学は 単体で
    ひとつの文化だと 私は思う。

  • 気があう。一気読みというよりは、思い出しては手に取って読む感じ。

  • 小沼丹の本は、私にとっては別格である。

  • 鰻屋、冷房装置、レモンの木、珈琲挽き、古本市の本、日夏先生、読了。すずやかな味わいというか。

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著者プロフィール

小沼丹
一九一八年、東京生まれ。四二年、早稲田大学を繰り上げ卒業。井伏鱒二に師事。高校教員を経て、五八年より早稲田大学英文科教授。七〇年、『懐中時計』で読売文学賞、七五年、『椋鳥日記』で平林たい子文学賞を受賞。八九年、日本芸術院会員となる。海外文学の素養と私小説の伝統を兼ね備えた、洒脱でユーモラスな筆致で読者を得る。九六年、肺炎により死去。没後に復刊された『黒いハンカチ』は日常的な謎を扱う連作ミステリの先駆けとして再評価を受けた。その他の著作に『村のエトランジェ』『小さな手袋』『珈琲挽き』『黒と白の猫』などがある。

「2022年 『小沼丹推理短篇集 古い画の家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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