明治洋食事始め――とんかつの誕生 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062921237

作品紹介・あらすじ

明治維新は1200年におよぶ禁を破る「料理維新」でもあった。近代化の旗のもと推進される西洋料理奨励キャンペーン、一方で庶民は牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケなどを生み出し、ついに「洋食の王者」とんかつが誕生。日本が欧米の食文化を受容し、「洋食」が成立するまでの近代食卓60年の疾風怒涛を、豊富な資料をもとに活写する。

感想・レビュー・書評

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  • 講義のような展開が読みやすい。木村屋のあんパン、ロース豚カツ、コロッケ、カレー、精養軒の洋食が食べたくなる。

  • かしはての臣も心や尽すらんそのあちはひもかはるおものに
     昭憲皇太后

    「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたばかりだが、明治期における西洋食への転換は国家的大事業でもあった。約140年前の明治維新は、言うなれば「料理維新」。西洋に追い付き追い越せの方策のもと、肉食が大いに奨励された。
     1872年(明治5年)1月、明治天皇「肉食解禁」。これが大ニュースであったと近代文学史の講義で話すと、学生は一様に驚きの声を上げる。「え、肉を食べたことが大事件だったのですか?」。
     歴史を振り返るなら、7世紀後半、天武天皇による「殺生肉食禁止の詔【みことのり】」発布以来、獣肉食は長く遠ざけられていた。病人が薬として食べることはあったが、忌避する意識が浸透していたのである。
     けれども、明治に入り、近代国民国家としての舵取りが始まる。まず練られた作戦は、日本人の貧弱な体格を向上させること。体力的、文化的にも、西洋料理の普及が明治新政府の急務となったのだ。
     そこで、若き明治天皇の食生活にも「肉食」が加わった。掲出歌は、1877年(明治10年)、天皇とともに西洋食を味わったあと、「西洋料理」の歌題で詠まれたものという。「かしはて(膳)の臣」は、宮中での食膳の担当者。「おもの」は「御膳」で、手慣れない、味わいも異なる西洋料理を作るため、料理人たちも心を込めたのでしょうね、という大意。
     「明治洋食事始め」を副題とする「とんかつの誕生」は、その経緯を実証的に記述しており、豊富なうんちくも楽しめる書。

    (2014年3月16日掲載 本紙では「講談社、2000年」と紹介しましたが、現在は講談社学術文庫で手軽に入手できるのですね!)

  • 「あんパン、ライスカレー、コロッケ、とんかつはどのようにして生まれたか」という副題にわくわくして、即購入。

    めっちゃおもしろかった~!!
    「これ読んでめっちゃ賢くなった」「すんごい知識増えた」という類の本ではないけど、これぞ読書の醍醐味。あまり知らなかった分野を知れた、それに伴って他分野を勉強してみたくなった・・・という好循環(^^)

    明治天皇が肉食解禁してくれてよかった。
    そしてとんかつが生まれてよかった。もちろんカレーもコロッケも。
    あんパンの誕生秘話がいちばん興味そそられた。パンを作るということが、日本人にとっていかに大変だったかよくわかった。

    日本人は、西洋文化・料理をうまく自分たちの文化に取り入れた。牛肉も、自分たちが食べやすいように煮込んで和風の味付けにしたことで、すき焼きが生まれた。
    すばらしい!
    あんパンが食べたい。とんかつ食べたい。昔の日本人に感謝したい。

    歴史はおもしろいなーと初めて思えた本。
    食べ物の歴史に照らし合わせると、苦手な歴史も楽しかった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「食べ物の歴史に照らし合わせると」
      学校で教える歴史って生活感が無いですからね。面白く無い訳ですよ。
      「昔の日本人に感謝したい」
      食べる前に...
      「食べ物の歴史に照らし合わせると」
      学校で教える歴史って生活感が無いですからね。面白く無い訳ですよ。
      「昔の日本人に感謝したい」
      食べる前に「頂きます」言う時は、昔の人への感謝も含むようにします。
      2012/09/03
  • 明治以降、日本に入ってきた”西洋料理”がどのようにローカライズされて”洋食”として広く普及していったか、さまざまな資料を基に活写されていて、とても興味深い。
    ”牛鍋(すきやき)”にはじまり、”あんぱん”や”とんかつ”など、それぞれが一つのドラマであり、プロジェクトXでもある。”カレーライス”と”コロッケ”の分量が少ないのが残念だが、トリビアも豊富で、この本を元にしてどこかテレビでやってくれないかなぁ…。私がプロデューサーなら絶対企画書作っているぞ。

  • NDC383
    明治維新は「食べ物革命」だった。庶民の舌が生んだ牛鍋・あんパン・カレーから「洋食の王者」の誕生まで、食卓近代60年の疾風怒濤明治維新は「料理維新」だった!
    あんパン、ライスカレー、コロッケ――そして「洋食の王者」とんかつはいかにして生まれたのか

    明治維新は一二〇〇年におよぶ禁を破る「料理維新」でもあった。近代化の旗のもと推進される西洋料理奨励キャンペーン、一方で庶民は牛鍋・あんパン・ライスカレー・コロッケなどを生み出し、ついに「洋食の王者」とんかつが誕生する。日本が欧米の食文化を受容し、「洋食」が成立するまでの近代食卓六〇年の疾風怒濤を、豊富な資料をもとに活写する。

    西洋食の多くは、幕末から明治期にかけて導入された。そのわずか百数十年後の今日、私たちは、世界の国々のなかでも、最も多様化された食べ物を享受している。(中略)そこでは、現代日本の多種多彩な食の文化を理解する上で、もっとも興味深い時代が開幕していたのだ。近代化へ脱皮していく明治維新は、「料理維新」と称するのにふさわしい時代でもあった。――<本書「プロローグ」より>

    ※本書の原本は、2000年3月、小社より講談社選書メチエ『とんかつの誕生――明治洋食事始め』として刊行されました。

    第一章 明治五年正月、明治天皇獣肉を食す
    第二章 牛肉を食わぬ奴は文明人ではない
    第三章 珍妙な食べ物、奇妙なマナー
    第四章 あんパンが生まれた日
    第五章 洋食の王者、とんかつ
    第六章 洋食と日本人

    岡田哲[オカダテツ]
    1931年生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。日清製粉株式会社勤務ののち、NHK放送大学で食文化史講座を担当する(

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740843

  • 「洋食がいかに日本人の食卓になじんでいったか。明治のビックバンから約六〇年に及ぶ『とんかつ誕生』までの疾風怒濤」

  • 料理の成り立ちにはとても興味あるので、とんかつの歴史面白かった。

  • パン食や肉食が明治時代に受容され、普及していく過程が、様々な資料を元に綿密に書かれていて、読み応えがありました。神戸ビーフは明治時代から有名だったとか、あんぱんの起源とか薀蓄も盛り沢山です。この本は文化史的な観点から書かれていますが、経済的側面についてもっと知りたくなりました。牛肉の普及には時間がかかったとありましたが、意識の面だけではなく、牛肉生産は非常にコストがかかるので、所得の向上と余剰労働力の発生が必要不可欠だったのではと思います。次は、明治維新と経済をテーマにした本かな。

  • 文明開化のシンボルとして、明治天皇が進んで肉食を始めたという事実から話は始まる。西洋料理をそのまま導入する努力をしつつも、そこは日本人。コメを主食とするということを大前提に少しずつ工夫をこらす。おやつというアングルからあんパンを生み出し、コメに合う西洋料理としてとんかつという「洋食」を生みだした。
    その背景にあるのは、今も昔も変わらない食に対する高い関心だ。肉食の導入こそお上からの思し召しだったのかもしれないが、それを自らの食の中に取り入れ、アレンジしたのは他でもない一般の庶民。こういう成り立ちを持つ文化の足腰は強い。四年前から料理教室に通い始めたワタシも「庶民の総力によって料理を作りつづける、世界でもまれな日本の食の文化」の一端の一端の欠片くらいを担わせていただこうかと、おこがましくも思っている。
    明日の夕食は洋食にしよう。

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著者プロフィール

1931年生まれ。食文化史研究家。東京大学農学部農芸化学科卒業。日清製粉(株)勤務後、1994~1997年、放送大学食文化史担当。全国調理師養成施設協会『調理用語辞典(改訂版)』の編集委員。主な著書に、『明治洋食事始め とんかつの誕生』(講談社学術文庫)、『コムギ粉の食文化史』(朝倉書店)、『カステラ文化誌全書』(共著、平凡社)、『日本の味探究事典』『世界の味探究事典』『コムギ粉料理探究事典』『コムギの食文化を知る事典』『食の文化を知る事典』(東京堂出版)、『ラーメンの誕生』『たべもの起源事典 日本編』(筑摩書房)などがある。

「2019年 『ラーメンの誕生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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