- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062922791
作品紹介・あらすじ
仏教の原典を求めて、1900年当時厳重な鎖国をしていたチベットに、身に降りかかるさまざまな困難を乗り越えて、単身入国・帰国を果たした河口慧海師の旅行記です。
旅行記としてのおもしろさも第一級ですが、チベットの生活・風俗・習慣の的確な記録となっており、チベット研究の第一級の基本文献にもなっています。
チベット行を決心してから日本を出立するまでの準備。カルカッタ(コルコタ)での語学や物品の調達を経て、ヒマラヤに分け入ります。寒さ、盗賊、野生動物、厳しい地形、国境越えの苦労などを乗り越え何とかチベットに入国。厳重な警備の目をくぐり抜け、チベット第二の都市シカチェからラサへの道中。ラサに潜入した慧海は、チベット人を名乗り、医者として薬などを処方し、大活躍。ついには、法王に召されその盛名がますます高くなります。ラサの生活やチベット外交にも詳しくなります。しかしついに、素性が露顕しそうになり、チベット脱出を決意します。貴重な資料を持ち、幾重にも張り巡らされた関門を奇跡的にくぐり抜け、英領インドに到着し、日本へ帰国するまでの波瀾万丈の旅の記録です。
本書は、『西蔵旅行記』(1904、博文館)を底本とし、ノーカット版で、挿絵も全点収録しています。また、改訂版(1940年)と英訳本(1909年)も参照し、より完全な形になっています。学術文庫の五巻本を上下二巻本に再構成して刊行しました。
感想・レビュー・書評
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Audibleで聴了。
前半部分は、チベットの習俗や文化、外交などの話が半分くらい。観察眼鋭く、情報の量と細かさはスパイだと疑われるのも仕方がない程スパイじみてますが…引き続きチベット人の迷信深さや衛生観念、モラルのなさについての模写が多数で(景色の美しさと対になって、コントラストが強まるのかも)、チベット社会の仕組みやチベット仏教、ボン教についても詳しく、ゾッとするやら呆れるやら興味を引かれるやらでなかなか楽しめました。
後半はついに素性が発覚してしまい、チベット脱出の冒険譚。聴いていて全くハラハラのし通しで仕方がなかったですが、類稀なる機転と知略と仏の導きによって奇跡的なハイスピードでインドへと脱出成功。しかし、旅路で親切の限りを尽くして助けてくれたチベットの人々がスパイ幇助の疑いで捕まって拷問を受けていると分かり、チベット政府に影響力のある隣国ネパール国王の元へ直談判しに行くことに。
著者の高潔なお人柄、仏道に則った行動規範をどんなに困難でも守り通す鋼の意志力、命を賭けてでも恩人に恩を返したい、仏道の為に人生を捧げたいという熱い志にはひどく感銘を受けました。感涙。
その後捕まったチベットの恩人たちは無事釈放されたのかどうか…最後は意外にもあっさりと終わってしまったので、その後の展開が気になります。続編『第二回チベット旅行記』の方に書いてあるんだろうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かった。
これで無事に帰れると思いきや、恩人たちの疑獄事件を聞きネパール国王に直談判するのがすごい。心赴くままに歌を詠むのがいい。 -
鎖国状態のチベットに潜入した僧侶による旅行談。
現地では医師として有名になり、前大蔵大臣宅で勉強を重ねる日々の中、遂に正体が露見し苦悩の末に困難な国外脱出を図るという実話とは思えない波瀾万丈さ。
自分を政府に突き出すように前大蔵大臣夫妻に告白した後でのやり取りは感動的。普通なら突破不可能的な5大関門を越えてインドに入って話が終わるところを自分のために苦境に陥った恩人知人を救うべくネパール国王に会いにいくところがこの人の性格を現している。
国事探偵と疑われて拒否しているが、チベットの内情をかなり細かく描写しており、失礼ながら能力としてのスパイの素質はかなり高いといえる。 -
読み終わった。総じて面白かった。旅行記は面白いジャンルだ。彼は本当にチベット人に成りきっていたんだな。ただ、出来れば最後まで本当の事を明かさないママしらっと出国出来ればなお良かったのだろうが、逃げ切れて良かった。出国後の行動力と出会いの運も素晴らしい。2回目も行ったみたいだし。稀有な人だ。
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登録番号:1027256、請求記号:292.29/Ka92/2
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よくこんな日本人がいたとビックリ。よくこんな偉業を達成されたと思う。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/741180 -
■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
【書籍】
https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001059845
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漢字ではなくサンスクリット語で書かれた本当の経典を求めて、100年以上昔に堺市から旅立った僧侶がいる。貧弱な装備と粗食にもかかわらず、ヒマラヤ山脈を自分の足で越えた強靭な意思は読者を圧倒する。