メタサイコロジー論 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062924603

作品紹介・あらすじ

本書は、ジークムント・フロイト(1856-1939年)が1915年に執筆し、『メタサイコロジー序説』という表題で1冊の書物にまとめることを意図していた論文のうち、現存する5篇と草稿1篇を収録したものである。
1900年に『夢解釈』を発表して衝撃を与えたフロイトは、その後、「ドーラ」、「ハンス」、「鼠男」、「狼男」などの症例における臨床経験を経て、包括的な理論の構築を「メタサイコロジー(メタ心理学)」の名の下に企図した。精神分析にとって大きな画期となるはずだった『メタサイコロジー序説』は12篇の論文から成るものとして計画され、フロイトは1915年3月15日から5月4日までに5篇を執筆し、『国際精神分析雑誌』で発表する。それが本書に収録された「欲動と欲動の運命」、「抑圧」、「無意識」、「夢理論へのメタサイコロジー的補足」、「喪とメランコリー」である。
さらにフロイトは、3カ月後の8月9日までに残る7篇をも書き上げた。その爆発的な知的エネルギーには圧倒されるばかりだが、なぜかそれら7篇は公表されず、『メタサイコロジー序説』も幻の書物となる。「意識」、「不安」、「転換ヒステリー」、「強迫神経症」、「投影」、「昇華」、「転移神経症概要」という表題が知られる7篇はフロイト自身の手で破棄されたものと考えられていたが、しかし1983年、書物の掉尾を飾るはずだった第12論文「転移神経症概要」の草稿が発見された。本書にはこれも併せて収録し、1915年のフロイトに起きていた思想劇を最善の形で見ることができるようになっている。
各論文の表題に示されているとおり、ここでなされているのは「欲動」、「抑圧」、「無意識」、「夢」といった精神分析の根幹に関わる概念の再構築にほかならない。書物の形にすることを放棄したことに示されているように、フロイト自身はここからさらなる進展を遂げていくが、その出発点としてこれらの論文が存在していることは否定しようもない。現存するメタサイコロジー論文の日本語訳が1冊の形にまとめられるのは今回が初めてとなる。本書は、フロイトと同様、常にみずからの理論を刷新する第一級の分析家による渾身の訳書である。

著者プロフィール

1856年生まれ、オーストリアの心理学者、精神科医。神経病理学者を経て精神科医となり、神経症研究、自由連想法、無意識研究を行った。精神分析学の創始者として知られる。心理性的発達理論、リビドー論、幼児性欲を提唱し、人間の心の『無意識』という世界を発見したことによって、マルクス、ダーウィンとならんで20世紀の思想に大きな影響を与えた人物の一人ともされる。1939年没。主な著書は『ヒステリー研究』『夢判断』『日常の精神病理学』『精神分析入門』『自我とエス』『性欲論三論』など。

「2024年 『フロイト著作集第7巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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