道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062924740

作品紹介・あらすじ

孟子とカント、ルソー、ニーチェ。中国哲学と西洋哲学を往還しながら、人間の道徳の根拠を問う、現代フランス思想の旗手のよるスリリングな著作が、ついに文庫化! 東浩紀氏も絶賛する注目の書。
西洋哲学、東洋思想という枠を軽々と乗り越え、普遍に迫ろうとする知の力を堪能してください。

感想・レビュー・書評

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  • しんどかったかなあ。社会的意義はわかるけど,自分に刺さるかと言われると,ない。

  • 「道徳」というものについての考察。過去、この言葉がどのように捉えられ、政策者によって解釈され、人々に影響されてきたのかについて、東西の賢人の考え方を紹介される形で迫ろうとされています。洋の東西にかかわらず、人間に同質の性向があるということから、それをどのように捉えられてきたのかが、本書を読むことで少しずつ見えてくるようになります。利己的に生きることが当人にとっては一番のはずなのに、そうしないことは何故なのか。他者の苦しみに心動かされてしまうのは何故なのか。中国の孟子、西欧の哲学者達は、それをヒントにそれぞれ行動を起こし、それは奇しくも同じ時代に同じ動きをすることになります。
    同じ時代に、東西それぞれにて行われた道徳についての考察を辿ることで、「道徳」を使うことで、人間に本質的に備わっている性向について知ることができると思います。

  • mybest 2019年3位

  • 『道徳を基礎づける――孟子vs. カント、ルソー、ニーチェ』
    原題:Fonder la morale(1996)
    著者:François Jullien (1951-)
    訳者:中島隆博(1964-) 〔なかじま・たかひろ〕
    訳者:志野好伸(1970-) 〔しの・よしのぶ〕

    【書誌情報】
    発売日 2017年10月11日
    価格 定価 : 本体1,150円(税別)
    ISBN 978-4-06-292474-0
    判型 A6
    ページ数 360ページ
    シリーズ 講談社学術文庫

    孟子とカント、ルソー、ニーチェ。中国哲学と西洋哲学を往還しながら、人間の道徳の根拠を問う、現代フランス思想の旗手のよるスリリングな著作が、ついに文庫化! 東浩紀氏も絶賛する注目の書。西洋哲学、東洋思想という枠を軽々と乗り越え、普遍に迫ろうとする知の力を堪能してください。
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062924740

    【簡易目次】
      I 憐れみをめぐる問題 027
    第1章 忍びざるものを前にして 028
    1 ある王の逸話 028
    2 無関心であること 030
    3 仁と義の定義 034

    第2章 基礎づけか比較か――あるいは基礎づけのための比較 036
    1 西洋における道徳の基礎への問い 036
    2 カントとニーチェ 041
    3 マルクスとフロイト 046
    4 中国との比較 048

    第3章 憐れみの「神秘」 053
    1 根源的憐れみの感情 053
    2 ルソーの限界 057
    3 ショーペンハウアーによる神秘化 063
    4 中国の道具立て 066

    第4章 道徳心の徴候 073
    1 カントによる道徳の基礎づけ 073
    2 孟子の四端 080
    3 端緒から遡る 083

      II 性と生について 091
    第5章 人性論 092
    1 孟子以前の性説 093
    2 孟子の反駁 097
    3 天と性 102

    第6章 善か悪か 109
    1 二者択一の論争 109
    2 荀子の性悪説 111
    3 荀子の孟子回帰 115
    4 荀子とホッブス 120

    第7章 失われた性を求めて 127
    1 失われた本性 127
    2 今、塞がれている本性 131
    3 自明なる道徳性 135
    4 理想的な便宜主義 141

      III 他者への責任 147
    第8章 人間性、連帯 148
    1 人間的(仁)であること 148
    2 万物はわたしの中に備わっている 153
    3 道徳と政治 159

    第9章 天下を憂う 164
    1 聖人の憂い 164
    2 この世を肯定する憂い 168
    3 この世に対する責任と神に対する責任 171

      IV 意志と自由 177
    第10章 妄想的な意志? 178
    1 意志は自明のものか? 178
    2 意志することと為すこと 183
    3 善をもたらす条件 189
    4 悪は克服できるのか? 194

    第11章 自由の観念無しに 200
    1 自由に基礎づけられた道徳 200
    2 道徳的価値観の超越性と「ほとんどない」違い 207
    3 二元論を越えて 212

      V 幸福と道徳の関係 223
    第12章 正義は地上に存す 224
    1 地上の報い 224
    2 仁は利に優る 230
    3 徳の効力 235
    4 不可避的な成功 240

    第13章 地は天に肩を並べる 244
    1 仁徳による勝利 244
    2 王朝の創設 250
    3 地上の天 254
    4 民は天を代弁する 260

    第14章 これは中国的教理〔カテキスム〕ではない 265
    1 孟子の後退 265
    2 ストイシズムの幸福 273
    3 憂患に生き、安楽に死す 278

    第15章 道徳心は無制約者(天)に通じる 286
    1 心を尽くして天に事える 286
    2 個別性を越えて広がる 294
    3 内在の果ての超越 298


    【目次】
    日本の読者へ(二〇〇一年六月十五日 パリにて フランソワ・ジュリアン) [003-009]
    訳者による序(中島隆博) [010-013]
    目次 [015-020]
    緒言 [023-025]

    I 憐れみをめぐる問題 027
    第1章 忍びざるものを前にして 028
    1 ある王の逸話 028
      なぜ羊ならよいのか
    2 無関心であること 030
      井戸に落ちそうになっている子供
      ‎親を埋葬する理由
    3 仁と義の定義 034
      道徳性の拡充

    第2章 基礎づけか比較か――あるいは基礎づけのための比較 036
    1 西洋における道徳の基礎への問い 036
      神に権威づけられた道徳
      ‎懐疑論の展開
    2 カントとニーチェ 041
      ニーチェによる懐疑
    3 マルクスとフロイト 046
    4 中国との比較 048
      なぜ中国か
      ‎比較から対話へ

    第3章 憐れみの「神秘」 053
    1 根源的憐れみの感情 053
      憐れみの根源性
      ‎憐れみが広がる
    2 ルソーの限界 057
      憐れみに必要な想像力
      ‎憐れみは利己主義である
      ‎個人主義に囚われたルソー
    3 ショーペンハウアーによる神秘化 063
      神秘としての憐れみ
      ‎形而上学的な解決策
    4 中国の道具立て 066
      孟子の忍びざる反応個人横断的な存在
      ‎それは弱さではない

    第4章 道徳心の徴候 073
    1 カントによる道徳の基礎づけ 073
      カントによる憐れみの放棄
      ‎なぜ道徳律を求めるのか
    2 孟子の四端 080
      四端
    3 端緒から遡る 083
      憐れみは範例か
      ‎孟子に内なる声はない


    II 性と生について 091
    第5章 人性論 092
    1 孟子以前の性説 093
      性=生
      ‎はじめての哲学論争
    2 孟子の反駁 097
      水の比喩
      ‎「内」の意味
    3 天と性 102
      孔子とソクラテス
      ‎天に根ざした本性

    第6章 善か悪か 109
    1 二者択一の論争 109
      人間は悪か
    2 荀子の性悪説 111
      道具としての道徳
    3 荀子の孟子回帰 115
      道徳の社会的次元
      ‎荀子の孟子回帰
    4 荀子とホッブス 120
      欲望から定義する荀子とホッブス
      ‎契約の欠落

    第7章 失われた性を求めて 127
    1 失われた本性 127
      カントとルソーの解決策
      ‎心で実感すること
    2 今、塞がれている本性 131
      失われた森の話
    3 自明なる道徳性 135
      本性を思え
      ‎道徳は当為ではない
      ‎おのずと得られる道徳性
    4 理想的な便宜主義 141
      便宜主義の肯定
      ‎「権」の重視


    III 他者への責任 147
    第8章 人間性、連帯 148
    1 人間的(仁)であること 148
      「人間」という不当な前提
      ‎仁と人間的であること
    2 万物はわたしの中に備わっている 153
      万物との関わり
      ‎痺れの比喩
    3 道徳と政治 159
      利と仁
      ‎政治的な道具の不在

    第9章 天下を憂う 164
    1 聖人の憂い 164
      舜の憂い
    2 この世を肯定する憂い 168
      憂うる心の展開
    3 この世に対する責任と神に対する責任 171
      カント的な責任主体性と良心の呵責


    IV 意志と自由 177
    第10章 妄想的な意志? 178
    1 意志は自明のものか? 178
      中国における意志の欠如
      ‎意志は自明なものか
    2 意志することと為すこと 183
      選好も熟慮もない「志」
      ‎「できる」と「為す」
    3 善をもたらす条件 189
      選択肢の不成立
      ‎欲望を減らせ
    4 悪は克服できるのか? 194
      植物の発育というモデル
      ‎舜を殺そうとする弟

    第11章 自由の観念無しに 200
    1 自由に基礎づけられた道徳 200
      中国における自由の欠如
      ‎自由な行為という先入見
    2 道徳的価値観の超越性と「ほとんどない」違い 207
      尊厳と平等
      ‎人間と動物の違い
    3 二元論を越えて 212
      カントの二元論のゆくえ
      ‎二元論を知らない孟子
      ‎心も一つの器官である


    V 幸福と道徳の関係 223
    第12章 正義は地上に存す 224
    1 地上の報い 224
      徳は幸福にならないという二律背反
      ‎神なき地上に正義は存す
    2 仁は利に優る 230
      徳があれば得るものがある
      ‎利を語れば国は滅びる
    3 徳の効力 235
      君子の徳は風のように伝わる
      ‎王の誘引する力
    4 不可避的な成功 240
      熟した果実

    第13章 地は天に肩を並べる 244
    1 仁徳による勝利 244
      カントとマキャベリの両立
      ‎容易な勝利
    2 王朝の創設 250
      始まりの徳
    3 地上の天 254
      天吏としての王
      ‎乱も天の中
    4 民は天を代弁する 260
      民に尋ねよ

    第14章 これは中国的教理〔カテキスム〕ではない 265
    1 孟子の後退 265
      悪を患わない
      ‎孟子のストア的後退
    2 ストイシズムの幸福 273
      内面的な平静
    3 憂患に生き、安楽に死す 278
      天への懐疑
      ‎天が与える試練

    第15章 道徳心は無制約者(天)に通じる 286
    1 心を尽くして天に事える 286
      自由と形而上学
      ‎本性から天へ
    2 個別性を越えて広がる 294
      気を広げる
    3 内在の果ての超越 298
      自然な超越

    注 [304-308]
    訳者解題――存在と道徳への問い直し(二〇〇二年三月二十四日 東京 訳者を代表して 中島隆博) [309-334]
    解題(二〇一七年七月 金沢にて 中島隆博) [335-357]
      一 ポスト世俗化の時代に 
      二 弱い規範 
      三 普遍化すること 
      四 孟子ルネサンス 
      五 二〇〇〇年以降のジュリアンの著作 

    訳者解説コラム① 経験と理性 044
    訳者解説コラム② 内在と超越 108
    訳者解説コラム③ 実定性と天与のもの 121
    訳者解説コラム④ 自由と決定論(可知的と可感的) 216
    訳者解説コラム⑤ 無制約者と天 291

  • 本書は、孟子の考えた道徳の基礎付けとカントやルソーのそれとを比較することで、西洋と東洋それぞれが袋小路にある道徳の問題を互いに揺さぶろうとする。憐れみや忍びない心情をもって、道徳律の根源への可能性を開く。

    でもこのモヤモヤ感は何だろう。孟子の議論からは自由や民主主義が生まれないことをもって、それを西洋思想に対する劣後の要素としようとする感覚は。これが道徳を基礎づけようとする意志の一端なのだろうか。

  • 東2法経図・開架 150.2A/J93d//K

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著者プロフィール

1951年生まれ。フランスの高等師範学校で古典学を学び、ギリシア哲学研究の後、中国思想に取り組む。パリ第八大学教授、国際哲学コレージュ議長を経て、現在、パリ第七大学教授。著書に『無味礼讃』など多数。

「2017年 『道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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