- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062930826
感想・レビュー・書評
-
様々な家族の姿を描いた短編集
祝直木賞! ということで久々の荻原浩さんの小説を読みましたが、ユーモラスな話も、シリアスな話も、どちらも登場人物の心理描写が相変わらず丁寧でそしてリアルです。
この荻原さんの心理描写のリアルさの根底にあるのは、様々な登場人物の、それぞれの情けなさをしっかりと描いているからこそだと思います。
シリアスでいえば、男手一つで育てた一人娘の結婚に複雑な心情を抱く父を描く「結婚しようよ」
古くからの写真館を営む父に反発し家を飛び出し、独自で写真の仕事を続ける息子。しかし父が倒れたという連絡を受け、その息子や娘たちが写真館に集うことになる表題作の「家族写真」
こうしたシリアスなドラマの完成度の高さはもちろんなのですが、やはり個人的にはユーモラスに人間の情けなさを描いた短編こそ、荻原さんの真骨頂だと思います。
一家全員太っている内村さん一家のご主人のダイエットを描いた「肉村さん一家176kg」
奥さんから聞いた効果があるかどうかわからない、怪しげなダイエットに精を出す様子や奥さんとのやり取りなど、どこかにありそうな光景が、荻原さんの手にかかるとついついクスリとさせられます。
終わり方のなあなあな感じも、またリアルです。
「住宅見学会」は、マイホームを夢見る主婦が、家族とともに、実際に住民が住んでいる様子を見学できるモデルルームに行く話。
モデルルームに住んでいる若くてきれいな奥さんについつい嫉妬したり、自分の家族と相手の家族を比較してしまったり……。書きようによっては、グチグチしてしまいそうですが、荻原さんが書くと、どこかカラッとした雰囲気に仕上がります。こういう書き方はやっぱり荻原さんらしいですね。
一番印象的だった短編は、「しりとりの、り」
家族でドライブに行った最中、父がいきなり「会話が足りない」と言い出し、家族全員でしりとりをすることになるのですが……。
全編会話だけで進む作品なのですが、やりとりが秀逸! 空気の読めない父、しりとりに乗りきらないほかの家族の面々。それが会話だけで映像として浮かび上がってきます。
そして展開も一筋縄ではいきません。単に笑わせるだけでなく、会話が進むごとに、この家族の違った一面が浮かび上がってきます。構成や書き方もうまい!
『明日の記憶』や『砂の王国』といったシリアスな大作ではないですが、それでもしっかりと荻原さんらしさがつまった短編集だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
全7話からなるいい感じでダメなおやじの話
前半5話はダメダメでこりゃアカンてな感じで笑えるが6話で色が変わり7話で感動します
7話それぞれ別の話ですがなんか繋がってる感じがしました。
萩原さんのコメディーは笑えます。 -
ちっちゃい赤ん坊だった準子が嫁に行くんだぞ…男手一つで育てた娘を嫁がせる「結婚しようよ」。あの主人公が同年代の54歳と知って愕然とする「磯野波平を探して」。もはや見ないふりできない肥満解消のため家族でダイエットに励む「肉村さん一家176㎏」他。短編の名手による、笑って泣ける7つの家族の物語。
-
色々な、家族に関するお話。
結婚しようよ… 娘の結婚を機に、ありし日の妻に想いを馳せ、再度人生の再スタートを切る
磯野波平を探して…歳をとっても、無理に肩肘張る必要はない、と言ってくれるような話
肉村…ダイエットの話
住宅見学会…見栄を張ってもしょうがない、というかどこのお家も何かしら悩みは抱えている…という話
しりとり…小君よく話が進み、面白い。なんだかんだで愛されてるお父さん。
家族写真…ほっこり -
以前「神様からひと言」「なかよし小鳩組」に笑わせてもらい、力をもらった作家さんの短編集。電車で読んでいて、やはりクスクス笑ってしまった。あっさり面白く読めるお話ばかりで、一つずつ違ったタッチで良かった。順番がまた良かったかも。
また長編が読みたくなった。 -
荻原浩氏にしては、少しシリアス系で重松清氏を思わせる構成だった。
実家が写真家の3兄弟がそれぞれの生活の中で父親に触れあってゆく。
荻原テクニックが少し少ないと思われたが、面白く読めました。 -
軽い気持ちで読めて面白かった。
-
安定の荻原浩。お父さんのキャラがどの話も面白い。ただ、ほかの登場人物はテンプレート感が否めない。『しりとりの、り』に出てくる雅之くん、地雷すぎます。ちょっと気持ち悪かった、ごめんなさい。また『住宅見学会』も貧乏家族=幸せ&裕福家族=難あり不幸…な図式がちょっとデジャブーでした。
ただし、プラスチックファミリーは面白かった。菜実子さんと雪乃ちゃんとお父さんに幸多かれ!最後少しウルっと来ちゃいました。 -
波平が54歳。
えーーー
という驚き。
しかし、これを地でやろう!と思うのが
また笑える。 -
たかが家族されど家族。世界レベルでは小さなコミュニティである家族でも、事が起きれば大事件。そんな家族の笑って泣ける七つの物語。
まずは直木賞受賞おめでとうございます。デビュー当時から愛読している私にとって、本当にやっとという気持ちです。本作も荻原さんらしい、あったかい気持ちになる短編集です。小春日和の日に日向ぼっこしている感じ。いい時間を過ごすことができました。