海と月の迷路(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.78
  • (15)
  • (37)
  • (22)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 330
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062935098

作品紹介・あらすじ

もう誰も信用できない? 疑心暗鬼になる「軍艦島」のなかで、ひとつの正義を貫くことはできるのかーー。若き警察官・荒巻の”許されざる捜査”は、「全島一家族」を標榜する島に波紋を広げる。八年前にも小女が水死しており、裏には信じがたい事実が秘されていた。密室ともいうべき島でつながる二つの不審死。その謎を解く鍵は、満月の夜にあった。著者の新境地に達するハードボイルドの最高峰。吉川英治文学賞受賞作

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「昭和30年代…24歳の荒巻巡査…」という回顧談の内容が物語本編である。
    荒巻巡査が赴任したH島は、実に独特な環境の、高層住宅が入組んだ迷路のような場所だった。炭鉱を営む会社の職員、会社との契約で働く炭鉱に入る鉱員、下請け業務に携わる組夫、そういう人達の家族、商店や飲食店に携わる人達、医療機関の仕事に携わる人達、公務員や一部の家族という5千人余りが密集して住んで居る場所でもある。荒巻巡査は、赴任して以来、少しでも早く馴染んで行こうとしながら、先任の岩本巡査と共に勤務を続けていた。
    或る日の夕方、鉱員の娘である女子中学生が帰宅しないという騒ぎが起こった。島での様々な出来事に際しては、働く人達のトラブルを収める鉱山会社の総務課の下に在る外勤係が色々と動き回っていた。その外勤係も警察―荒巻、岩本の両巡査―も動いたが、中学生の少女は見付からない。
    そして一夜明ければ、中学生の少女は遺体で発見された。事故という見立てとなった。その死を巡って波紋が広がる。ここで話題になったのは、8年前にも女子中学生の死亡事故が発生していたということである。そして「不思議な共通項?」ということになる。荒巻巡査は密かに調べようとするのだ。
    荒巻巡査の周囲では、この事故死に纏わる調査の他にも、幾つかの波紋が起こるのだが、それでも荒巻巡査はこの「禁断の捜査」に取組むことになる。その行方は如何に、というのが本作の物語の肝である。
    二転三転し、意外な事の真相が少しずつ解き明かされる。その様が非常に興味深い。これは一寸夢中になれる作品だ…

  • 軍艦島の暮らしに興味があって、書籍を探していて本書に辿り着きました。大沢在昌さんの小説は初だったのですが、失礼ながら大して期待せずに読み始めたところ、期待を裏切っていやー面白かったです。
    創作ではありますが、こんな感じの暮らしだったんだろうな、という描写がやけにリアルで、楽しめました。

  • 吉川英治文学賞
    単行本の後、講談社ノベルスで一度出版された後、文庫化。
    ノベルスっぽいストーリー展開だが、熟練の文章で一気読み。久しぶりのミステリー面白かった。舞台が軍艦島というのも、好奇心をくすぐる。

  • 最後
    フィクションなのかーい!!と叫んだ

    もちろん殺人事件はフィクションだろうけど、他の様々な設定は本当にあったんだと信じ込んでいて…

    そのくらい自分の中で軍艦島の生活の様子、建物、人間関係や上下関係、全てがリアルに目に浮かんだ小説だったからすごい

  • 一気に読んでしまった。荒巻の軍艦島での奮闘物語。自分つらぬくって大事。謙虚も大事。

  • 軍艦島で発生した少女の事故死に疑問を持った警察官が捜査し解明するお話し。

  • 人をどの時点から信用したり疑ったりしたりするかと言う場面を見るたびに、正しい行いというのは何なのかを考えさせられる内容でもあった。 

  • 軍艦島に行ったばかりだったのでよりリアルで面白かった

  • (ネタバレ)主角繼續堅持一個人暗自搜查,但也因堅持逮捕攻擊外勤片桐的組夫江藤,被人認為是偏袒組夫而開始受到排擠,美日如坐針氈。因為這個島有任何事都是私下在島內解決,說不定甚至有外界不知道的私刑,反正這個島上有"意外"也不意外,訴諸法律反而是異樣。主角深感要搜查還是得找人幫忙,因此尋求小宮山和長谷川的幫助,也恐嚇一下喜歡年輕女性的小野一起幫忙調查,昭和十九年到二十年曾在東京、八年前就在這個島上的職員、礦員和組夫。這件事被岩本巡查知道之後暴怒,岩本發現連外勤係所大野、關根等人都在幫主角更有一種被背叛的感覺,揚言如果主角繼續妄想就要把他調離這個島。主角認為他只是要公平對待每個人,並且進行搜查而已,但事勿主義的岩本對他相當不諒解。後來由於在職員、礦員跟組夫間設定的嫌犯都落空,也非お盆期間攻擊年輕少女者,因此才發現搜查有死角,這個島上還有很多開店業者、學校、醫院工作人員等也應該一起調查,因此就以詢問八年前災難與颱風以便做防災紀錄的藉口開始調查。食堂老闆也侃侃而談之前的災難但否認待過關東只說自己大阪人,但其稱呼魚的名稱是關東人的稱呼,不是九州也不是大阪,而且主角要大碗做成普通,這是之前所沒有過的。這時主角(此為回憶談,此時還出道不久)居然按捺不住發現犯人的激動情緒,就開始質問他,後來犯人就逃走了,當天是颱風夜,經過一番惡鬥其似乎落海,從此以後就沒有任何下落。主角深深反省,這段事情也對他的警官生涯有深深的影響(追了半天但到最後一步居然直接質問他引起犯人警覺並逃跑這件事有些令人傻眼(還在颱風天根本沒人可以幫他),還讓犯人拿著菜刀四處亂逃超危險,這種功虧一簣的行為確實可議),他認為自己是手順有誤,應該在聽完芹澤說完就應該尋求本署協助,若此也不會傷害到岩本,甚至讓犯人失蹤。

    這部作品可以看出作者的描寫力是出色的,軍艦島的風土環境也讓人讀起來如進入一個異世界般,而推理的部分也沒有設計得太複雜做作,第一次讀是很有好感的。不過作者輕輕帶過好些令人深思的主題,例如,主角只是想公平對待每個人,但他的公平和這個島上的人認為的公平(偏袒對公司比較重要的人,例如礦員一定大於來來去去的組夫)不一樣,岩本說教的在這個島上要遂行職務,重點是要讓多一點人信賴你,但你的作為(保護江藤讓他受司法審判而非受私刑)讓島民(礦員職員)無法信賴你,職務遂行就有困難,你就不是一個適格的巡查。而堅持是命案而非事故進行搜查,也讓島民認為是攪動島上的「和」的行為,引起側目。最終主角由於是正確的因此島民還是開始尊敬他(岩本卻灰頭土臉),然而若非如此,在那樣的環境下怎麼做才是正確的呢?西方法的所謂人權云云的概念套用在這個島上反而是反效果,島上強大的連帶意識不容一個外人白目地擅自攪動,然而繼續在這個島上和稀泥事勿主義,萬一又造成其他的不幸呢?似乎動輒得咎。似乎一切都沒有正確答案,不過人應該要秉持怎樣的信念,一個近代法下的警官應該怎麼在這個隔絕於世自成一格的島上執法,實在是一個耐人尋味的問題。

  • 正義感、というか真っ当な価値観で事件捜査を進める荒巻の行動は、閉鎖的な島のルールを乱すものとして四面楚歌に会うが、情報が増えるにつれて各グループから協力者が出てきて最後は一致団結する。
    積年の執念、恩人をかばうため、両親の呵責、純粋な正義感など、手助けをする人の動機はそれぞれであるものの、どれもが人としての良心によるところが物語の悲惨さを和らげて、ハードボイルドテイストを強化しているように感じました。

全28件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大沢在昌の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×