- Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784063883961
作品紹介・あらすじ
2012年秋、竜田は6次下請け企業からの脱出を図り、念願の建屋内作業の職に就く。2012年末、一旦首都圏に戻り覆面漫画家としての活動を始めた竜田だったが、実は彼は2014年夏、ふたたび作業員として1Fで働いていた。作者が見てきた「福島の現実」に賞賛、反響続々!! NHK「クローズアップ現代」や朝日新聞「プロメテウスの罠」などで特集され、今も世界中から取材依頼が殺到する話題作、待望の最新刊です!
感想・レビュー・書評
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たった一人の報告はつづく。でも大げさじゃないんだよね。生活している人間の目線の良さ。批判とか摘発じゃない、現実に対する、働く人間の感想。そこがいい。
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福島第一原発で廃炉作業を行う作業員の日常を描いたコミックの第二巻。
あの原発事故から3年が過ぎた2014年。より線量の高い現場での作業に従事する主人公の日々が、3年という時間の経過で変わった原発周辺の状況(瓦礫の撤去や国道6号線の開通など)とともに描かれている。
3年という時間の経過とまだまだここまでという現状、そして、限られた年間線量の制限の中で行われる日々の廃炉作業のなんとも途方のない感じから、復興・復旧や廃炉への道のりの果てしなさが伝わってくる。
自分の世代では完了しない、いつ終わるともしれない状況に途方に暮れそうになる。でも、作者は、少しずつではあるにせよ確実に変わっていく状況に希望を見出していて、読む者は少し救われる。 -
福島第一原発作業員が描く、ルポルタージュ漫画の第2巻。
原発作業の実態と少しずつ復興していく、周辺の様子がリアルに描かれる。しかし、著者が放射能の影響を安易に考えている描写もあり、読者としては少し心配になる。
それにしても、廃炉までにあと何十年掛かるのだろうか… -
残るは圧力容器上蓋 玉掛け=クレーン荷吊りワイヤー掛け 1Fにウンコしに来てるみたい 歯軋り 前借りの清算も追いつき 番を張った 侠気に溢れた人物 いわき市内にもビニールシートがかかった屋根はまだあった 姉御肌な人物 高線量現場の話 一口に多層下請けといっても内情は複雑だ 当然その間で給料の中抜きをしつつ TBMツールボックスミーティング KY危険予知 でもそういうのって抜き打ちで来なきゃ意味ねんじゃね 実態把握が目的ならね 放管手帳には毎月の被曝量を記載する欄があり 電動ディスクグラインダー通称サンダー 海江田経済産業大臣 TIG溶接 PT検査 バンドソー(電動金ノコ) タイベック 線量役者 サーベイ=汚染検査業務 JV=ジェイヴィレッジ ADP=警報付き個人線量計 「酪王カフェオレ」は福島県が誇る県民的飲料なのだ 常磐線竜田駅 小名浜特殊浴場街 美空ひばりのみだれ髪 震災の風化 ガラスバッジ リングバッジ 南相馬 凍天しみてん 楢葉の水田に秋桜 分譲中 冷却停止 いわき市平 目光メヒカリ唐揚げ WBC=ホールボディカウンター 昔から漁師には水死しても身元が分かるように刺青入れる風習があんだってよ
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異常が日常になり、多重下請け構造や廃炉技術の継承などの根本的な問題を放置・先送りにしたまま、目の前の作業は続く。たった2万円の日当で除染作業を行う現場と、東電や上流会社を「お客さん」と呼ぶ、意識の断絶。現場の眼である本書を読む限り、東電に当事者意識はまるで感じられない。復興作業はフロンティアスピリッツを感じるのかもしれないが、そういった男気、心意気に自分も含めておんぶにだっこだ。
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『いちえふ』第二巻。一巻でも思ったけど、原発で働く人たちがこれだけ汚染対策をして線量限度を守っているというのはうれしく思う。労働者が自分の健康のために注意するのはある意味当然だけど、体制として法令をちゃんと守るようになっているのが安心できる(本来これも当然なんだけど)。やっぱり日本人はまじめだね。
作業員が住居探しで苦労したり、作者さんが取材されるときに記者の偏見に遭遇したりというエピソードもあって、やっぱり放射線の無理解はあるんだなと思わされる。
原発そのものの話ばかりでなく、被災地の復興に関する情報もあるのでいい。現場で働く人本人の発信する情報だから説得力がある。
廃炉に向けて作業に取り組む作業員の方に敬意を持たなければ。「1F作業員をやたらと虐げられた労働者や逆に強靭なヒーローに仕立てたがる傾向には戸惑っている仲間も多い」とあるけども、適切な情報と理解が広まればこういうことも減っていくと思う。この漫画の役割はとても大きい。 -
第八話において、作者は原発労働者の下請け構造についてスケッチする。4次下請けの段階で既に20000万円だった給料が6次下請けで10000万円になる仕組みは、下手なルポで書くよりもわかりやすい。しかし、作者にそれに対する根本的な批判思考はない。人数を揃えるためには必要悪だという認識である。
まあ、そういうスタンスのルポだからこそ、二回目の原発労働が2014年に行けたのだろう。本人がそれを計算してやっているかどうかは別として、読む方はあくまでも原発労働の「真実」を描いているのでは無く「実態」を描いているマンガだという目は持っておかなければならない。
実際作者が関わった労働は、パイプのほんの一部の溶接(の補助労働)のみであり、それで全体を見渡せ、という方が無理なのかもしれない。
作者が無意識のうちに書いている、原発周辺の荒涼たる景色が、あと数年後には貴重な記録になるのかもしれない。
2015年3月12日読了 -
原発ルポというより、原発を職場に選んだ男たちの物語、という感じになってきていて大変良いです。センセーショナルな方向より、このままじっくりじんわり味のある内容で行って欲しい。
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図書館の都合で最後になった2巻
続きのストーリーが問題にならない作品なので、特に読後に違和感はない。
相変わらず面白い。
必読。 -
きっちり被曝管理されながらの肉体労働
誰かがやらないと、ですね。 -
プレハブ
現場に入る前に別の場所で部品をある程度組み上げておくこと -
借りたもの。
福島第一原発の廃炉作業は少しずつであるが確かに進んでいた。
廃炉に向けての具体的な作業の一部(解体とか)が描写され、大変な環境(放射能だけでなく防護服着た状態とか、低賃金とか…)で作業されている事が垣間見れる。
1巻では(どうしても)主に放射能対策ばかりに目がいってしまっていたので、「今」を知るためにこうした描写があるのが大切だと思った。
現場での風景の変化――瓦礫の撤去、解体だけでなく女性職員が現場に入るようになったこと等、悪い方向に行っている訳では無いのかもしれない。
作者の“楽しむ”姿勢が心強い。
地元のB級グルメや、パチンコだけでなくバーで演歌演奏したりと地元の人達との交流が描かれる。
休耕田のコスモス畑に遭遇するエピソードは、自然の力強さにも癒やされたのだろうと想像する。
コミックを出したことでの周りの反応だけでなく、各種マスコミから受けた取材のエピソードには、興味深いものがある。
現場でさえもあらぬウワサが立ったり、週刊誌などマスコミでさえも極論や尾ひれの付いたウワサが実しやかに報道される現実は、震災から3年(2014年)経っても変わらないようだ……
勿論、何が真実なのか、現場に私たちはメディアを通してしか知れないのだが……このコミックを通しても然り。 -
雑誌「pen」の漫画特集で気になって購入。気になった点は、絵が古臭いのと、字が多くて読むのが疲れること。前者はそれが味だって言われればそれまでだし、後者はルポの特性上やむを得ないことだとは思うけど。内容としては、現場で実際に働いた人ならではの視点が垣間見れて良かった。外部の人がいくら理論を並べたててみても、実際の現場とはどうしても相容れないところって、どういう現場にもありますもんね。
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現場作業のルポ漫画第二弾である。待望と言っていい刊行だっただろう。
相変わらず、非常に興味深い内容である。今回から現場作業でもより重要度の高いものへと移行し、物語的にも内容的にもより良い進行が見られる。
物語としては地味になりがちな題材だが(トラブルがあってはシャレにならないのだし)、そこにある実感が物語のリアリティとなって表れていて、物語の質自体も高いものである。
文句なしに星五つ。本当に興味深く読ませていただいた。
多少の箸休めや刊行速度の遅さはあってもいいから、これからも福島原発の廃炉作業の今や現地の様子を活写していってもらいたいものである。 -
東日本大震災後の福島第一原発で事後処理に当たる作業員実録コミックである。
「いちえふ」とは「1F」のことであり、「1」は第一、「F」は福島を指す。現地作業員や地元住民はこの通称で呼ぶという。
「現場感覚」が信条の作品である。
仕事の性質上(機密上というのもあるのだろうが、作者にとってはそれよりも職場や同僚に対する「仁義」の部分が大きいようだ)、明かされない箇所、触れられない内容は当然含む。そうでありつつ、本作を支えるのは、現場を見て、そこで働いてきた人でなければ描けない「実感」である。
作業員の多くは、スーパーマンというわけでも高尚な理想を掲げているわけでもなく、ある意味、「普通」の人たちである。仕事が終われば娯楽も求めるし、そりゃ給料だって悪いよりよい方がよい。
「普通」の感覚を持ちつつも、そこで働く人々に共通しているのは、この作業を誰かがやらなければならないという思いであり、そこには当然、「矜恃」がある。
メディアを通してみると、あるいは「虐げられた労働者」であったり、あるいは「強靱なヒーロー」だったり、「わかりやすい」「絵になる」像に落とし込まれがちだが、実態は作者曰く「普通のオッサン」なのだという。
大仰な言い方をすると作者に苦笑されそうではあるが、だがしかし、その「普通さ」の尊さを思う。
何層にも重ねられた下請け階層構造も、なかなか複雑である。あるときはA社が4次下請けでB社が6次でも、また別の現場では立場は逆転しているかもしれない。持ちつ持たれつで作業員を融通しつつ頭数を揃えているのが実態のようだ。そうした中で抜け駆けをしようとすれば、コミュニティからはじかれてしまう可能性もある。それでもよりよい待遇を求めて、個々の作業員の画策もあったりするわけである。
一般に、線量が高く危険な仕事であれば給料はよいが、被曝上限があるため、長期には働けない。逆に線量が低い職場なら長く働けるが給料は安めである。それぞれの事情に合わせ、自分にあった職場を探すことになる。
作者はいちえふで働く一方、特技を生かしてボランティアに行ったり、友人を増やしたりする。この下り、非常におもしろい。マンガを描けるに留まらず、芸のある人、人好きのする人なんだな、と思わせる。
また、「今なら時効だから言うけど」的なこぼれ話がまた興味深い。
その他、家探しの意外な苦労、東電担当者が同席するTBMKY(ツールボックスミーティング・危険予知:工具箱に座るイメージで行う、危険対策ミーティング)、コミックスが話題となったことによる海外・国内メディアの取材など、読みやすいが、濃い内容が満載である。
*3巻は今冬頃出版予定とのこと。 -
いちえふで実際に仕事をしている人ならではの語りであり、貴重な作品だと思う。
第一巻で、いちえふで働く人達の休憩所で仕事をしていた作者は念願かなって高線量被曝の危険のある場所で仕事をすることとなる。
自ら望んだこととはいえ、初めてその職場へ向かう日に、防護のためのマスクバンドをきつく締めすぎてしまい苦労するエピソードが書かれている。高線量の現場に入れて嬉しいなどと言いながら心と体はそれへの恐れを表しているのだ(第9話)。
高線量の現場は給料がいいといっても年間の被曝量が一定に達すればその年はもうそこで働くことはできない。決して割のいい仕事ではない(p.89)
ひとつへぇ、と思ったのが、作者が高線量の職場での勤務を終えて内部被ばく量の検査(WBC)を受けるのだが、それは職場に入る時よりも一定期間職場で働いた後の方が低かったというのだ。それに対し、「東電が数字を操作しているのでは」という疑惑があり、解明のため作者は自費で病院での検査を受け何の問題もないことを確かめる。更に、その後首都圏で過ごした後、また働くために福島に戻ってきて内部被ばく量の検査を受けた時は以前より更に高い値が出たというのだ(p.174)。
作者はこれに関して「この程度は誤差の範囲ということだろう」と書いていて私もそうなの?と思ったが、「WBC 被曝」で検索すると「ホールボディカウンターは内部被曝の危険を隠すためのインチキ測定」などのような記事も出てきたりして、素人にはわかりにくいことではある。
福島で実際に暮らしている方もおられるのだし、無用の不安を煽るようなことはしたくないが、このあたりのことについては私自身はもっと勉強する必要がありそうだ。「被曝の影響をことさら大げさに言いたてる人達」は脱原発をめざす人達からも非難されているが、「ことさら軽く見せている」人はいないのだろうか。
いずれにせよ、廃炉に向けて、作者のように、危険な場所での作業をしてくださる人は必要なわけで、できるだけ安全な作業環境が確保されることを願う。
続編は2015年冬発売予定とのこと。期待している。 -
実際に働いていた方の話はしっかり響きます。ほんと、風評や噂に惑わされて、自分が見たかのように話すのはダメですね。このまま、日常を伝えてほしいです。でも、この本読んで再び震災や原発事故の記憶を掘り起こした自分。記憶が薄れるのを、この作品を読み続けてくいとめたいです。
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やはり、実際に現地で働いていた人のレポートは、報道やましてウワサ話とは全然違うなぁ
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報道と現実は離れているところもあるんだよね。