はじめての経済思想史 アダム・スミスから現代まで (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065122273

作品紹介・あらすじ

よいお金儲けを促進し、悪いお金儲けを抑制する、それが経済学の本質だ! アダム・スミス、マルクス、ケインズら経済思想家は、現実といかに格闘したのか? 一冊で経済学の歴史がわかる決定版入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1215683

  • 経済学の本なんて一生読まないだろと思っていたが、社会に生きる一大人として興味本位の挑戦に身を投じました。
    結論
    やっぱ全体的に興味ないけど、金儲けそのものは悪いものではないと薄々感じた次第で、要はその方法と倫理観が重要。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/712619

  • 中村隆之(1973年~)氏は、京大経済学部卒、京大大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学、鹿児島国際大学経済学部准教授等を経て、青山学院大学経済学部教授。専門は経済学史。
    私は、世界に広がる格差と、それを生み出す資本主義に問題意識を持っており、これまで、ジョセフ・E・スティグリッツ、広井良典、水野和夫、トマ・ピケティらの著作、斎藤幸平『人新世の「資本論」』等を読んできたが、今般改めて資本主義の経済思想史的な変遷を整理したいと思い、本書を手に取った。
    本書は、題名の通り、経済学の父アダム・スミスから新自由主義の旗手フリードマンまでの思想を追ったものであるが、読了して、いい意味で二つ裏切られた。一つは、単にそれぞれの思想を紹介するのではなく、スミスが挙げた資本主義の道徳的条件を軸に、それ満たすためにそれぞれが挑戦・工夫をしてきたという流れで論じていることであり、これは新自由主義に強い違和感を持っている私には、得心しやすいものであった(ただそれ故に、“はじめての”経済思想史として適しているかは疑問であるが)。二つ目は、最終章で、これまでの歴史を踏まえて、「会社は誰のもの(であるべき)か」が考察されており、これは自分の仕事に直結する問いであり、参考になった。
    大まかな流れは以下である。
    ◆スミスは、市場の機能を「見えざる手」と呼び、資本主義経済の始祖と言われているが、お金儲けや格差を無条件に肯定したのではなく、自由競争市場を肯定するためには、フェア・プレイに則った競争の場であること、社会全体の富裕化を促進することなどが道徳的条件であるとした。
    ◆ミルとマーシャルは、スミスの道徳的条件を逸脱して労働者をフェアに扱わなくなった現実に対し、あるべき事業経営者像を示した。
    ◆ケインズは、一般的にスミスの思想と対立すると考えられているが、その本質は、株主等の資産所有者と事業経営者等の資産活用者の分離が進み、資産所有者による悪いお金儲け(=金融)が事業経営者による良いお金儲け(=産業)を阻害するようになり、資本主義の歪みが大きくなった現実に対し、それを改善するために政府が積極的な役割を果たすような改革を提唱したことである。
    ◆マルクスは、スミスの条件が満たされなく究極の要因は「私有」財産権にあると考えた。よって、ミル、マーシャル、ケインズ、マルクスらは、いずれもスミスの条件を回復しようとした経済学者と位置付けられ、また、それらは「所有者が主役から降りていく」という大きな流れの一環といえる。
    ◆1980年代以降、世界の趨勢となった新自由主義は、ハイエクやフリードマンの思想を背景としたが、それは「所有者が主役から降りていく」という流れに逆行するものであり、経済思想史の観点からは傍流に位置付けられる。
    ◆現代の経済理論においても「一応の株主主権」が暫定的結論ではあるが、株主を支配者とした場合に「利益の自己目的化」を超えることは難しい。「所有者が主役から降りていく」という歴史の流れも踏まえれば、いずれは、会社の利益・資源は従業員組織に託し、株主(所有者)は従業員組織の活動をチェックするような制度が望まれる。
    近代経済思想史を、スミスの思想をベースに大きな流れとして整理した好著である。
    (2021年10月了)

  • アダムスミスから、現代経済学に至るまで、会社と個人のあり方を整理した経済思想史を概略。

    非常に分かりやすい一つの筋が通っている。
    この考え方がメインストリームかどうかは別にして、著名経済学者の立ち位置が明確になった。

  • アダム・スミス以来の経済学が、時代に合わせてどうとらえ直されてきたのかという観点の経済学の思想史。

    経済学を勉強している時、ケインズの理論があまりに突然変異的に出て来て学問的な連続性を感じ取る事が難しかったのだけれど、ケインズの背景として「大会社が登場して会社の所有と経営が分離した時代に、金融が公正な競争の足を引っ張る様になったので、それを解決するために出されたのが一般理論」(意訳)という話を読んで、自分の中の経済学の理解にやっと一本の筋を通せた気持ちにさせられた。

    全体の「アダム・スミスが、経済において必要だと考えていた道徳に紐づく諸条件があり、時代の変化とこの諸条件をすり合わせるのが経済学の思想史」という流れは面白いのだけれど、アダム・スミスが考えていた諸条件が絶対視されており、その理由の解説が特になかった事は少し気になる。

  • まさに経済学が実学としてどう適応されてきて今後どうなるかをわかりやすく体系化した入門書。社会福祉国家の行き詰まりから哲学的自信を失った経済学が道を誤った1980〜の40年間。そこからようやく抜け出そうとしている兆しを書いている。

    また、会社は何のためにあり誰のもの?という経営と労働に関する手引きにもなる。

    経済学部以外の大学生が教養原論として通って欲しい1冊。もちろんこれは筆者の意見というストーリーに揃えられているのだが、反対派の意見や推薦図書も出てくる。そこも学んで自らの見解を持てるとなおよいと思う。

  • アダム・スミスにはじまり、ミル、マーシャル、ケインズ、マルクス、さらに現在の市場主義的な常識の形成に影響をあたえたハイエクやフリードマンの思想についてわかりやすく解説している本です。

    著者は「はじめに」で、「本書では、あえて経済学の歴史を一筋のストーリーとしてとらえたいと思う」と述べています。著者はまずスミスの思想について解説し、資本主義経済を正当とみなすことができるための条件として、「自由競争市場がフェア・プレイに則った競争の場であること、特に資本を動かす人間がフェア・プレイを意識する人間であること」「資産を事業に活用するのではなく、貸し出して利益(利子・地代)を得ようとする場合、その行動が資産をよい用途に向けていく助けになり、全体の富裕化を促進すること」「強者が弱者を支配せず、相互利益の関係を結び、弱者の側の能力も活かされること」の三つの条件をあげます。そのうえで、その後の歴史的展開のなかでこの三つの条件を回復する試みとして、ミル、マーシャル、ケインズ、マルクスの思想を解説しています。

    わかりやすいストーリーに載せて経済思想史を解説しているので、著者自身の立場にそった解説となっており、どうしても一面的な見方になっているようにも感じますが、「はじめに」で述べられている著者のねらいは十分に果たされているように思います。

  • 経済思想史が「良いお金儲け」にまつわる道徳の歴史であることがわかった。
    ユダヤ教にしか認められていなかった私有財産をアダムスミスが認めたということは神の人間化のような宗教観の変化もあるんだろう。

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著者プロフィール

中村 隆之(なかむら たかゆき)
早稲田大学法学学術院教員。フランス語を中心とする環大西洋文化研究。著作に『カリブ-世界論』、『環大西洋政治詩学』(以上,人文書院)、『エドゥアール・グリッサン』(岩波書店)、『野蛮の言説』(春陽堂書店)など。訳書にル・クレジオ『氷山へ』(水声社)、『ダヴィッド・ジョップ詩集』(夜光社)などがある。

「2024年 『マニフェスト 政治の詩学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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