神とは何か 哲学としてのキリスト教 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065135037

感想・レビュー・書評

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  • トマス研究の泰斗として知られる著者が、「神とは何か」という問題について、「哲学を素地として誰にでも解る平易な言葉で」語ることを試みた本です。

    こうしたもくろみにのっとって書かれた本なので、著者は随所で「神とは何か」という問いそのものに意味を見いだしがたいと素朴に考える読者に対する注釈を交えつつ、なぜ「神とは何か」と問うべきなのかを説明しています。そうした著者の姿勢には好感をもちますが、けっきょくのところそのような疑問をいだく読者を説得することに成功しているかといえば、疑問符をつけざるをえないように感じます。

    著者はまず、デカルトにはじまる近代以降の哲学が、経験と理性にもとづく「知識」を求めることにのみ邁進する知的伝統をかたちづくっていることを指摘し、そのような限定された問題設定からはずれてしまう、「知恵」にかかわる形而上学的な問題領域が存在することを説明しています。そのうえで、こうした形而上学的な探求は、経験と理性のみに依拠することによっては果たしえず、信仰の光にみちびかれつつおこなわれなければならないという立場が打ち出されています。

    ここまでは、宗教哲学的な考えとしてある程度理解できるのですが、その後著者は神の「一」性や「無からの創造」、「三位一体」といったキリスト教の教義にもとづく議論を紹介し、その哲学的意義を明らかにしようと試みています。ただ、どうしてもキリスト教の教義を前提にしており、ドグマティックな印象をぬぐいきれません。また、滝沢克己の「インマヌエルの原事実」についての理解を「観念的承認」すなわち「教養や学識のある人が聖書を熱心に学んで、自らがそれに基づいて生きるべき自覚的信念として形成した信仰」だと批判しているところに、そうした疑問を強く感じました。

  • 信仰ありきですからね。
    困ったものです。
    信じない者は門前払いです。

著者プロフィール

稲垣良典(いながき・りょうすけ)
一九二八年生まれ。中世哲学。東京大学文学部哲学科卒業。アメリカ・カトリック大学大学院(哲学)M.A.、Ph.D取得。ハーバード大学法学部研究員。南山大学、九州大学、福岡女学院大学、長崎純心大学大学院教授などを歴任。著書『現代カトリシズムの思想』(岩波新書、一九七一年)、『トマス・アクィナス「神学大全」』(講談社選書メチエ、二〇〇九年)、『カトリック入門』(ちくま新書、二〇一六年)、『トマス・アクィナス哲学の研究』(創文社、一九七〇年)、『習慣の哲学』(創文社、一九八一年)、『抽象と直観』(創文社、一九九〇年)、『神学的言語の研究』(創文社、二〇〇〇年)、『人格〈ペルソナ〉の研究』(創文社、二〇一〇年)、トマス・アクィナス『神学大全』翻訳(創文社、一九七七~二〇一二年)で毎日出版文化省受賞、『トマス・アクィナスの神学』(創文社、二〇一三年)、『トマス・アクィナス「存在(エッセ)」の形而上学』(春秋社、二〇一三年)で和辻哲郎文化賞受賞。

「2017年 『nyx 第4号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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