鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065139592

作品紹介・あらすじ

<文庫書き下ろし!>
すべての事件【ものがたり】はここから始まった。
謎は原点【ゼロ】に収束する――鏡の館が写す過去と現在。

大人気シリーズ、クライマックス!

異形の建築家が手掛けた初めての館、鏡面堂。すべての館の原型たる建物を訪れた百合子に、ある手記が手渡される。そこには、かつてここで起きたふたつの惨劇が記されていた。無明の闇に閉ざされた密室と消えた凶器。館に張り巡らされた罠とWHO、WHY、HOWの謎。原点の殺人は最後の事件へ繋がっていく!

感想・レビュー・書評

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  • 展開や読み易さは流石です。

  • 前作が衝撃的でドラマチックな展開だったため、出だしはイマイチ地味な印象が拭えなかったが中盤からの展開でどんどん引き込まれる。
    あとがきで作者も触れているけれど、このシリーズは主人公がどんどんかわっていくので大枠を包括する視点も移り変わり驚くほど飽きさせられずに読み進められる。
    残りは、大聖堂のみ。どんな最後をむかえるのか楽しみ。

  • 堂シリーズの第6作。前作が正直かなりの駄作であり、主要登場人物を退場させてしまう大胆な展開を見せたので、どうなることかと思いきや、一定のらしさを取り戻している。序盤から物語の核心に触れているため、シリーズを通じて読まないとチンプンカンプンであろう。理系的なバカミス密室トリックや、フーダニットについてはなるほどという感じですが、前作でメインストーリーが崩壊しており、やや冗長な感じは否めない。
    毎度お馴染みでやっぱり館は回転します。

  • 記録

  • ○ 総合評価
     シリーズ6作目。あとがきによると5作目の教会堂の殺人を書いたあと,しばらく続編が出ず,3年半近くの期間があいてこの作品が出たとのこと。時間軸でいうと,眼球堂の殺人よりはるか前。シリーズの重要人物である建築家の沼四郎が,黒幕である藤衛に挑戦した事件という位置付けとなっている。
     物語の構造としては,沼四郎が数学者の久須川剛太郎と料理人である村岡幸秀の二人を協力者として,藤衛に殺人劇で挑戦をしようとしていた。沼四郎が鏡面堂に仕掛けたトリックは,焦点の合わないスコープをコンタクトレンズを利用して使えるようにするというもの,楕球が2つの焦点を持つという性質を利用して,光を集めて照明にしたというもの,ほぼ常温で液体になるというガリウムという金属で床を作り,ガリウムを利用して凶器にするというもの。更に中心部分の壁を回転させることで,弾道を確保するというもの。
     沼四郎は鏡面堂に用意したこれらのトリックを駆使した殺人劇で藤衛に挑戦しようと思ったが,藤衛は,トリックを見抜いて,これらの仕掛けを利用して実際に久須川と村岡を殺害してしまう。かなり無茶な展開だが,こういった無茶なスジが周木律の個性とも思える。
     実行犯は手記を書いていた宮司潔。宮司潔を裏で操っていたのが藤衛であった。
     トリックの無茶さも,荒唐無稽なスジも周木律らしさ。バカミスとも思えるようなトリックであり,教会堂の殺人では少し逸脱していたが,バカミス的な本格ミステリというシリーズの原点に戻った作品だといえる。これだけのトリックを用意し,整理するのに時間が掛かったということだろう。
     こういう現実感がないバカミス的な本格ミステリは,個人的には結構好みの作風である。とはいえ,世間的には批判が多そう。沼四郎が殺人劇で藤衛に挑戦するために,こんな屋敷を作ったというのは,リアリティが全くない。その上,その殺人劇の仕掛けを瞬時に見抜いた藤衛が,そのトリックを利用して二人の人間を殺害するという展開はむちゃくちゃ。トリックありきの小説を成立させるために無茶なストーリーを描いている。
     そのトリックも楕球の焦点が2つあることを利用した照明と館の回転,ガリウムという金属を利用した凶器とかなりバカミスチックなもの。確かに,これらのトリックでリアリティのある話を書くことは難しそう。そうであれば,いっそ,この物語のようなむちゃくちゃな話の方が合っている。
     ガリウムという金属を利用した凶器や,楕球に2つの焦点があるという図形的な性質を利用したトリックなど,正直,ある程度の知識がないと見抜くことはできない。やられたという驚きより,ふーんと感じてしまう。現実的ではないけど,まぁ,面白いトリックだなと思う程度。サプライズはあまりない。
     スジとしては,手記を書いていたのが宮司司と宮司百合子の父であるということは推測できてしまう。ここにあまり驚きはない。館の構造そのものを利用したトリックなので,犯行に沼四郎が関わっているのは明らか。沼四郎の物語内での行動を見る限りでは,沼四郎が藤衛に挑戦をしたというところまでは,なんとなく分かる。藤衛がそのトリックを利用して2人を殺害するというのもそれしかあり得ない感じで,サプライズはそれほどでもない。
     総合評価としてはどうだろう。こういった荒唐無稽なスジでバカミス的トリックの作品は嫌いではない。しかし,ここまで無茶な筋書きなら,素直に驚ける作品にしてほしかったところ。★3で。

    ○ サプライズ ★★☆☆☆
     基本的にはハウダニットの話。そこまでの驚きはない。手記の書き手が宮司司と宮司百合子の父だったというのも読めてしまう。スジにもサプライズはない。これだけ無茶な展開の作品なのにサプライズがあまりないのが残念
     
    ○ 熱中度 ★★★☆☆
     面白くないわけではないけど,鏡面堂での殺人を描いた手記を読むパートと,現実の鏡面堂に善知鳥神,宮司百合子,十和田只人が来るパートが交互にあり,やや没入感に欠ける。そこまでの熱中度はない。

    ○ インパクト ★★★☆☆
     シリーズの立ち位置としては,沼四郎が藤衛に殺人劇で挑戦するというもので,それなりのインパクトはある。トリックも,ガリウムという金属の性質を使っていたり,楕球の性質を使っていた理とそれなりのインパクトはある。でも,それなり程度か。

    ○ キャラクター ★★☆☆☆
     シリーズ6作目ということもあって,各キャラクターの個性はこれまで描かれたとおり。十和田只人のキャラクターがかなりブレているように感じる。それなりに魅力的なキャラクターだったのだが…。

    ○ 読後感 ★★★☆☆
     シリーズの途中の作品。藤衛がひどいやつという印象るが,人間が書けていないため,そこまで深くは感じない。読後感は良くも悪くもない。

  • ■すべての事件【ものがたり】はここから始まった。
    謎は原点【ゼロ】に収束する――鏡の館が写す過去と現在。

    異形の建築家が手掛けた初めての館、鏡面堂。すべての館の原型たる建物を訪れた百合子に、ある手記が手渡される。そこには、かつてここで起きたふたつの惨劇が記されていた。無明の闇に閉ざされた密室と消えた凶器。館に張り巡らされた罠とWHO、WHY、HOWの謎。原点の殺人は最後の事件へ繋がっていく!

  • 2018年147冊目。前作から間が空いているので、細かい点はいまいち覚えておらず。文庫のみ発売になったのもノベルスで揃えてた身としては些か不満。鏡面堂の構造自体はなかなか魅力的だった。次で綺麗に終わることを願ってます。

  • 堂シリーズ、第6弾。

    今回は、シリーズ共通のワケの分からないストーリーと並行に、作中作のような事件の謎解きがメインだったので、比較的読みやすかった。
    善知鳥神、宮司百合子、十和田只人絡みのストーリーは、ワケが分からないままです…。

  • シリーズ6作目。いよいよ次作で完結です。
    今回は、過去に起こった事件の謎解きです。当事者の一人が書き残した手記を読み進めるという形式は、色々と深読みできて楽しいですね。
    この物語がどのような結末を迎えるのか、最終巻を読むのが楽しみです。

  • 「わたし」が書いた手記を読んで、過去に鏡面堂で起こった殺人事件の謎を解く。

    ただ、トリックとか状況設定ありきっぽく感じさせる人物設定はやや残念。

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著者プロフィール

某国立大学建築学科卒業。『眼球堂の殺人』で第47回メフィスト賞を受賞しデビュー。本格ミステリの系譜を継ぐ書き手として絶賛を浴びる。他の著書にデビュー作を含む「堂」シリーズ、『猫又お双と消えた令嬢』にはじまる「猫又お双」シリーズ、『災厄』『暴走』『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』『アールダーの方舟』『不死症』『幻屍症』『LOST 失覚探偵』『死者の雨‐モヘンジョダロの墓標‐』『土葬症 ザ・グレイヴ』『小説 Fukushima 50』『あしたの官僚』『ネメシス3』『楽園のアダム』がある。

「2023年 『WALL』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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