酔象の流儀 朝倉盛衰記

著者 :
  • 講談社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065140352

作品紹介・あらすじ

越前の名門、朝倉家。七代当主・孝景のころ、軍奉行を務める朝倉宗滴は生涯初めての敗北を喫する。能登深くに攻め入るも味方の裏切りに遭い、総崩れとなった。その撤退戦の中で宗滴は15歳の若者と出会う。のちの山崎吉家だ。吉家は敗戦の惨劇を目の当たりにして心が壊れ、言葉を失っていた。責任を感じた宗滴は吉家を手元に置き、親子のように接する。その後、仏門修行を経て周りの民とも打ち解け、吉家はついに言葉を取り戻す。だが、吉家24歳のとき、思わぬ災難が降りかかる。実父・祖桂が謀反を企てて露見し、打ち首となったのだ。宗滴は所領半分と引き換えに吉家を救う。時が経ち、朝倉家当主は父・孝景の後を継いだ義景の代になる。軍事は宗滴に、政務は従兄の朝倉景鏡に委ねられた。宗滴は加賀に攻め入り、一揆勢を次々に討ち果たしていった。だがついに陣中に倒れ、後事を吉家に託した。また、育成していた吉家以外の四将にも加賀侵攻の継続を指示したうえで病没する。命の恩人であり父親代わりであった宗滴の遺命に従い、吉家は朝倉家を守ることを固く誓う。が、のちに将軍となる足利義秋の保護、織田信長の畿内進出、宗滴門下・五将内の対立、そして当主・義景の気紛れと、時代の波に翻弄された名門朝倉家の土台は根底から揺らぎ始めていた。そこで吉家が打った秘策とは!

感想・レビュー・書評

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  • 朝倉宗滴が亡くなってから、織田信長に滅ぼされるまでの、朝倉家滅亡に向かう物語。この作品、やはり「視点」がいい。題名にもなっている、酔象ことあまりに愚直な家臣の山崎吉家と、あまりに愚昧な主君の朝倉義景の対比が、二人を取り巻く主要人物の視点で次々と描かれていく。吉家からの視点は少ないが、愚昧なほどの忠誠心を見せる吉家から見るより、他人から吉家を見たほうがその姿がわかりやすい。逆に周りから愚昧と見られている義景は、自分視点からの独白の方がその暗愚ぶりがわかるし、それらの積み重ねの結果、そうならざるを得なかった事情も最後には、なるほどと理解できる。この構成力は、とても舞台的で臨場感がある。読んで得する気分になれるはず。

  • 加賀の名門、朝倉家の朝倉宗滴の宗滴五将の筆頭、朝倉第一の仁将との呼び声高い山崎吉家の生涯を描く。何故そこまで、傾きつつある朝倉家を支え続けたのか。
    朝倉宗滴亡き後の朝倉家は、裏切りあり、寝返りが続出し、山崎吉家が無ければ、滅亡も早かったに相違ない。

  • 宗滴五将なるものが史実的にあったかは分かりませんが歴史エンターテイメント小説として非常に読みごたえがある作品です。映画化やドラマ化されてもいいように感じました。

    暗愚に描かれる朝倉義景はその政治力のなさや謀略により没落していきます。
    そんな朝倉家を酔象こと山崎行家が愚直に背負っていく様は心打たれます。

    将棋の駒に例えていく人物像も分かりやすく、きっちりまとまった作品に感じます。

  • 戦国時代の朝倉家を舞台とした、「愛」の小説であった。
    自らが仕える国主や国。妻や夫や子。そして、自分自身。それぞれがそれぞれのものを愛している。自分が何を愛しているのか気づいている者もいるし、途中で気付く者もいるし、最後まで気付かない者もいる。

    越前に石仏を見に行きたい。

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著者プロフィール

1972年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。私立大学教授、法学博士、弁護士。2017年、「義と愛と」(『大友二階崩れ』に改題)で第9回日経小説大賞を受賞し作家デビュー。同作品は「新人離れしたデビュー作」として大いに話題となった。他の著書に『大友の聖将(ヘラクレス)』『大友落月記』『神遊(しんゆう)の城』『戦神』『妙麟』『計策師 甲駿相三国同盟異聞』『空貝(うつせがい) 村上水軍の神姫』『北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参』『立花三将伝』『太陽の門』などがある。

「2022年 『立花三将伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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