免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か (ブルーバックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065144343

作品紹介・あらすじ

病原体などの異物が体内に侵入すると免疫反応が発動されて、組織が赤くなり、腫れて熱を持ち、痛むようになる。いわゆる「炎症」反応だ。

通常、炎症は、からだの中で起きている異常状態に対する正常な応答=防御反応で一過的なものだが、例外的にダラダラとくすぶるように続くことがある。これを「慢性炎症」と呼ぶが、最新の免疫学の研究で、慢性炎症が「万病の素」になっていることがわかってきた。慢性炎症が深く関わっている疾患としては、「がん」「肥満、糖尿病」「脂質異常症」「心筋梗塞」「脳梗塞」「肝炎・肝硬変」「アトピー性皮膚炎」「喘息」「関節リウマチ」「老化、認知症、アルツハイマー病」「うつ病」「潰瘍性大腸炎」などがあり、現代人を悩ませる病気ほぼすべてに関与しているとといっていい。

慢性炎症は「サイレントキラー」と呼ばれ、はっきりとした自覚症状のないまま進行し、本人が異常を自覚したときには身体に回復不能なダメージが及んでいることが多い。それゆえ、慢性炎症は「死に至る病」と言われる、実に怖い病気なのだ。日本の免疫研究の指導者として知られる著者が、平易な文章と明快な図解を用いて、一般にはほとんど認知されていない「慢性炎症」のメカニズムと、その対処法をわかりやすく解説する。話題の免疫チェックポイント阻害薬を用いたがん免疫療法や頑固なアトピー性皮膚炎に対する新しい治療法なども取り上げており、こうした病気に悩まされている患者や家族にとっても有用な情報が盛り込まれている。

目次

第1章 慢性炎症は万病のもと
第2章 炎症を起こす役者たち
第3章 慢性炎症はなぜ起こる?
第4章 慢性炎症が引き起こすさまざまな病気
第5章 最新免疫研究が教える効果的な治療法
第6章 慢性炎症は予防できるのか?

感想・レビュー・書評

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  • 万病のもと、シークレット・キラーとも呼ばれる慢性炎症のメカニズムと治療法について、最新の研究成果を解説した書。

    慢性炎症は、動脈硬化、血栓、梗塞、糖尿病、肝硬変、アトピー性皮膚炎、喘息、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、アルツハイマー病、多発性硬化症、などの病気の発症や進展に関わっているとのこと。

    慢性炎症のメカニズムの解説の部分は、専門的すぎてほとんど分からなかったが(という訳で星三つ)、「「糖分やカロリーのとりすぎ」、「脂肪分のとりすぎ」、「塩分のとりすぎ」、「アルコールの飲みすぎ」、「働きすぎ」などは、そのときは良くても、しばらくすると必ずその余波が来てからだが辛くなってきます。こういうときにはからだの中で目に見えない炎症が始まっているのです。何事も「ほどほど」を過ぎると、血管の壁だったり、肝臓、すい臓、腸管だったり、時には脳や脊髄などの神経系だったり、悪いものが溜まる場所で炎症がじわじわと始まり、次第にからだの調子がおかしくなってくるのです。」ということは理解できた。

    慢性炎症を予防するための、中庸を旨とする生活習慣、なんとか身に付けたいものだ。

    第6章では、巷に喧伝されている健康食品の効果に警鐘を鳴らしている。「グルコサミンもコンドロイチンも、アメリカの大規模臨床研究の結果、膝の痛みには効かないことがわかってい」ることや、DHAやEPAなどの「オメガ3脂肪酸サプリメントあるいは偽薬(プラセボ)を1年間以上摂取した場合の死亡率を比べたところ、両者の間に有意な差がなかった」ことや(オメガ3脂肪酸自体の効果が否定されたわけではないが、サプリメントとして摂取しても効果がない)、「テレビなどでいわれているような「生きた乳酸菌が腸に到達して効果を発揮する」ということはない」(「死んだ菌を投与しても生きた菌と同じだけの効果がある」)ことなどが示されている。なんだかメーカーやマスコミに騙された気分だなあ。

  • 前半のメカニズムは、ちょっとついていけない部分もあったけれども、慢性炎症が様々な病気を引き起こすと言うこと、そして具体的にどんな病気があるのか、がわかりやすく書かれていた。

    あくまで補足的な話だったのかもしれないけれども、私が興味を持ったのは、常在細菌叢が炎症反応にも影響を及ぼしていると言うこと。以前に読んだ、「あなたの体は9割が細菌」とも整合が取れて、ストンと来た。
    衛生仮説も、単にその環境に菌が多いか少ないか、と言うのではなく、腸管の常在細菌叢の多様性があるのかどうか問題。非常に腹落ちがした。
    そして、過食による肥満が、慢性炎症を引き起こしている、と思うと、健康的な食事はすごく重要。そして、予防策は、貝原益軒の養生訓。なるほど。

  • 免疫30パー、慢性炎症70パーという感じかな。
    文章が丁寧で主語や目的語や修飾範囲を見失うような文章がほとんどないのが素晴らしい。情報量も膨大。覚えられるか!という感じ。
    サイトカインやインフラマソームという部分の基本的な仕組みがわかったのは良かった。
    でも免疫グロブリンとかはほぼほぼ一切出てこない。ADEも書いてなかったかなぁ。慢性炎症にテーマを絞るとそうなっちゃうのかな?

  • 炎症について詳しく知りたくて読んだ。
    入門書では簡単すぎるし、医学専門書は難しいと思っていたので、少し難しいけど、読みたかった内容。

    炎症のお薬も飲み始めてから、心身ともすごく調子が良い。炎症からくる疲労で心も疲れてしまう説は、確かに納得(´-ω-)自分の体のことなので、しっかり知っておきたいのだ。

  • 「第1章 慢性炎症は万病のもと」は概説として読みやすかったが、2,3章は用語が頻出で難しい.4~6章は具体的な話で面白かった.体の中で起こっていることはまだまだ分からないことが沢山あることに驚いた.6-3 サプリメントや健康食品はほんとうに効くのか? は、これらの商品の胡散臭さを常日頃から感じている小生としては、最高の記事だ.その中で論文の見方を解説しているが、重要な視点だと思う.

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  • 潰瘍性大腸炎に罹らなければ慢性炎症について学ぶこともなかったかも知れない。

    けれど、多くの人のおかげで治療法が見つかると言う希望を持てるからありがたく思う。

    慢性ストレスには気をつける。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=24002

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB27412542


  • 体の慢性炎症ががんや肥満を引き起こす?
    興味深いテーマです。

    体で怒る炎症を治められず、だらだらと炎症が続いていくと、炎症の刺激により炎症性サイトカインが炎症組織で作られて全身に広がっていく。
    炎症性サイトカインが必要以上に作られると、周囲の細胞まで炎症が広がってしまう。

    免疫反応によって、炎症をどう治まるのか、逆になぜ治らないのかも説明されていました。
    ちょっと難しくて十分理解できていないのですが、、、とにかく人間の免疫はある一面だけでは分からない複雑な世界だなと感じました。


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著者プロフィール

宮坂 昌之(みやさか まさゆき)
大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授。一九四七年長野県生まれ。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。金沢医科大学血液免疫内科、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所を経て、大阪大学医学部教授、同・医学研究科教授を歴任。医学博士・PhD。著書に『分子生物学・免疫学キーワード辞典』(医学書院、共著)、『標準免疫学』(医学書院、共著)、『免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何『免疫力を強くする 最新科学が語る免疫とワクチンのしくみ』『新型コロナ 7つの謎』(いずれも講談社ブルーバックス)『新型コロナワクチン 本当の「真実」』など。

「2022年 『新型コロナの不安に答える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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