満鉄全史 「国策会社」の全貌 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065162729

作品紹介・あらすじ

明治40年(1907)、「10万の生霊と20億の戦費」といわれる犠牲を払って獲得した南満洲の地に誕生した一鉄道会社は、「陽に鉄道経営の仮面を装い、陰に百般の施設を実行する」実質的な国家機関として大陸政策を牽引した。しかし必然的に政官軍の縄張り争いと対中・対ソ事情の変化、そして場当たり的な政策の影響が直撃する位置に置かれた組織は、図らずも近代日本を体現する存在として日本の支配政策のお粗末さを象徴する存在として現代に伝えられている。
日露戦争から敗戦まで「日本の生命線」の表舞台に立ち続けた組織の足取りを正確にたどり、「国策」という言葉が包含する曖昧さと無責任さを炙り出す。年表、首脳陣人事一覧、会社組織一覧付き。(原本:選書メチエ、2006年刊)

プロローグ――「国策会社」満鉄とは何だったのか
第一章 国策会社満鉄の誕生
第二章 「国策」をめぐる相克
第三章 使命の終わりと新たな「国策」
終 章 国策会社満鉄と戦後日本
エピローグ――現代日本にとっての満鉄

年表
歴代満鉄首脳陣人事一覧
南満洲鉄道株式会社組織一覧

感想・レビュー・書評

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  • 植民地経営の主力となる民間の会社、という意味では、オランダ、イギリスにおける東インド会社に当たるような位置付けの満鉄のお話。

    有名どころでは、満鉄OBとして、後藤新平、松岡洋右、十河信二(初代国鉄総裁にして新幹線の生みの親)、岸信介、宮崎正義(石原莞爾の”先生”)、などが登場。

    外務省、陸軍省、陸軍参謀本部、関東軍、拓務省に翻弄されながらも、大陸最高のシンクタンクとして奮闘した満鉄調査部の活躍は良い。

  • 満州と聞くとワクワクしてつい本を手に取ってしまう。
    もし20世紀前半に生まれていたら、絶対満州に行っていたと思う。そして新しい国家計画や大連のエキゾチックな街並みに浮かれていたと思う。

    そんな満州帝国の基幹企業であった、満鉄の誕生から終結までを辿った本。

    日本人のご都合主義な帝国主義の妄想が花開いた、というか徒花と散った、壮大な40年。

    もちろん現地に対する多大な侵犯行為で迷惑を掛けたに違いないが、それでも日本人が満鉄で何万キロもの線路を敷設し、石炭や製鉄、化学、物流、図書館や新聞社まで、100近い企業を興して産業を発展させ、現地民も何万人も雇用した。
    戦後の中国東北部に大きな財産を残したことは間違いない。

    当初から、満鉄は国内政治、外務省、軍の思惑に挟まれて押し引きされ矛盾を孕んだ存在だった。それだけではなく、ロシア、中国国民党、ドイツ、アメリカなど国際情勢の変化にも翻弄され続ける。

    壮大な矛盾と妄想と。そのいかがわしさに惹かれずにいられない。

    戦後満州に残された日本人は150万人に上ったという。
    「流れる星は生きている」は私の中で衝撃的な読書体験だった。

    今度は朝鮮、台湾統治についても読んでみたい。

  • ぱっと見、難しい本に思えたが、以外と読みやすい本だった。

  • 硬派な満鉄社史

  • プロローグ―「国策会社」満鉄とは何だったのか
    第1章 国策会社満鉄の誕生
    第2章 「国策」をめぐる相克
    第3章 使命の終わりと新たな「国策」
    終章 国策会社満鉄と戦後日本
    エピローグ―現代日本にとっての満鉄

    著者:加藤聖文(1966-、愛知県、日本史)

  • 「満鉄」

    この言葉から受けるイメージは、中国東北部を支配した機関というものがあるが、この本を読んでみると、そう言う通りいっぺんの事柄では語れないほど複雑な組織であったことがよくわかる。

    そして、満鉄と言えば“アジア号”であるが、その高速列車と中国東北部を支配したと言うイメージが、どうも一致しなかったが、ま「いろいろあったんだな」と言う事がよくわかった。

    驚いたのが、戦後、東海道新幹線を実限させた十河信二が、満鉄の理事経験者であったと言う事。不勉強でした。十河に限らず、あの当時の政財界の重鎮達は、多かれ少なかれ、どこかで交わっているんですね。

  • 本書は2006年に登場し、2019年に文庫本になっている。その辺は“あとがき”にも少し詳しく触れられている。本書は、より手にし易い文庫本となって、より広く読まれる価値は高いと思う。
    「満鉄」というので、昭和の初め頃の<あじあ号>のような話しが詳述されているのかとも思ったが、本書はそういうようなことに力点が置かれているのでもない。日露戦争後に鉄道の権益を得たことから会社が興され、それ以降の会社が辿った経過、大陸での様々な展開との関係、満鉄の内部や周辺で活動した色々な人達の事績や言行、それらが「戦後処理」というような段階に至るまで、読み易い範囲を逸脱しない程度に、かなり詳細に語られている。正しく「全史」なのだ。
    本文をゆっくりと読んで読了したが、本書にはかの後藤新平や松岡洋右というような少し有名な名前を含む歴代経営陣の名簿、かなり細かい“満鉄社史”的な年表や、本格的研究をする人にも有益であろう参考文献等、充実した資料も収められている。
    或いは本書は、「満鉄の記憶」というモノが喪われてしまう直前の時期に貴重な証言や史料を掘り起こす事も伴いながらの、価値在る研究を纏めた一冊かもしれない。色々な意味で広く薦めたい。

  • 日露戦争の戦果として期せずして得た鉄道が、その後の40年を通して国策の名の下に発展し翻弄され役割を終えていったかが示される。国策という言葉と、それが持つ曖昧さや無責任さを、批判的視点に徹して取り上げている。満鉄、外務省、関東軍の相克に、本国の政争が相まったというのはあるが、時代が進むにつれて個人のカリスマだけで突っ走れない社会構造が出来上がったのは確かな指摘だと感じる。
    地図はやや見づらいところがあるが、やはり見比べながら本文を読み進めていく面白みはあった。

  • 満鉄ってアジア号か満鉄調査部、しかも名前くらいしか知らなかったんやけど、松岡洋右とか十河信二とか出て来てびっくり。いや、松岡洋右は時代的に納得やけど、十河信二って新幹線の人としか知らんかったから。

  • 講談社選書メチエ版で既読。

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著者プロフィール

1966年愛知県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、証券会社勤務を経て、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。専門は日本近現代史、歴史記録(アーカイブズ)学。人間文化研究機構国文学研究資料館准教授。主な著書に『「大日本帝国」崩壊―東アジアの1945年 』(中公新書) 、『満蒙開拓団――虚妄の「日満一体」』 (岩波現代全書) 、『国民国家と戦争 挫折の日本近代史 』(角川選書)、『近代日本と満鉄』『枢密院の研究』(ともに共著、吉川弘文館)など。

「2019年 『満鉄全史 「国策会社」の全貌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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