本書は2006年に登場し、2019年に文庫本になっている。その辺は“あとがき”にも少し詳しく触れられている。本書は、より手にし易い文庫本となって、より広く読まれる価値は高いと思う。
「満鉄」というので、昭和の初め頃の<あじあ号>のような話しが詳述されているのかとも思ったが、本書はそういうようなことに力点が置かれているのでもない。日露戦争後に鉄道の権益を得たことから会社が興され、それ以降の会社が辿った経過、大陸での様々な展開との関係、満鉄の内部や周辺で活動した色々な人達の事績や言行、それらが「戦後処理」というような段階に至るまで、読み易い範囲を逸脱しない程度に、かなり詳細に語られている。正しく「全史」なのだ。
本文をゆっくりと読んで読了したが、本書にはかの後藤新平や松岡洋右というような少し有名な名前を含む歴代経営陣の名簿、かなり細かい“満鉄社史”的な年表や、本格的研究をする人にも有益であろう参考文献等、充実した資料も収められている。
或いは本書は、「満鉄の記憶」というモノが喪われてしまう直前の時期に貴重な証言や史料を掘り起こす事も伴いながらの、価値在る研究を纏めた一冊かもしれない。色々な意味で広く薦めたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文庫(国内)
- 感想投稿日 : 2019年9月20日
- 読了日 : 2019年9月20日
- 本棚登録日 : 2019年9月20日
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