カナダ金貨の謎 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
3.63
  • (25)
  • (68)
  • (82)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 659
感想 : 72
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065166871

作品紹介・あらすじ

民家で発見された男性の絞殺体――殺害現場から持ち去られていたのは、一枚の「金貨」だった。“完全犯罪”を計画していた犯人を、臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖がロジックで追い詰めていく!表題作「カナダ金貨の謎」ほか、切れ味鋭い中短編「船長が死んだ夜」「エア・キャット」「あるトリックの蹉跌」「トロッコの行方」を収録。待望の〈国名シリーズ〉第10弾!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 既読のものが2話あったがいつものように切れ味鋭い短編が味わえて満足。表題作『カナダ金貨の謎』や『トロッコの行方』もよかったが、番外編的な『あるトリックの蹉跌』は火村&有栖ファンにはたまらないお話でした!

  • 火村&アリスシリーズの中の、国名シリーズ第10作。

    短編が2本、中編が3本。軽快に読める。
    前編通して、様々な「何故?」が展開される。

    短編の一つ、「エア・キャット」。
    事件解決の鍵である夏目漱石の『三四郎』。火村は何故その『三四郎』を予言するかのようなメモを事前に書けたのか。
    火村の猫好きが分かる作品。

    もう一つの「あるトリックの蹉跌」は、火村とアリスの出会いのエピソードが描かれる。
    この頃から火村の洞察力の鋭さは発揮され、アリスの小心者振りも発揮される。

    その他の中編。
    「船長が死んだ夜」
    犯人は何故、被害者の部屋に貼られていたポスターを剥がしたのか。
    様々な「Why?」と同時に、様々な「if」も駆け巡る。

    「カナダ金貨の謎」
    犯人は何故、被害者が身に付けていたメープルリーフ金貨だけを奪ったのか。
    長年このシリーズを追っている私としては、それは罠だよと思わず言いたくなるが、犯人にとっては初めて会う人間。ましてや相方のアリスのキャラクターもあって、火村の隠した爪は見えないのだろうな。

    「トロッコの行方」
    五人を救うために一人を犠牲に出来るのかという『トロッコ問題』をミステリーに組み込んだ作品らしいが、読み終えた感想としては、取らぬ狸の皮算用では?
    他人が何を考えているか、いくら生活を共にしていても、いくら長年付き合っていても、分からない。その恐ろしさにゾッとする。
    火村とアリスだって、長年付き合っていてそれなりの絆も感じるが、互いの心の奥底は分からない。


    改めて思うが、二人ともスモーカーなんだなと。これほど愛煙家が敬遠される世の中になってもさして困ることなくタバコを吸っている。だが今後はさらに吸える場所が少なくなって困るシーンも描かれるようになるのだろうか。

    ところで表題作が「スイス時計の謎」と僅かながらリンクしていることが分かった。当該作は読んでしばらく経つのですっかり忘れている。そのうちに国名シリーズも読み返していこうかとも思う。
    以下、自分用に国名シリーズのリストを挙げておく。

    「ロシア紅茶の謎」  (1994)
    「スウェーデン館の謎」(1995)
    「ブラジル蝶の謎」  (1996)
    「英国庭園の謎」   (1997)
    「ペルシャ猫の謎」  (1999)
    「マレー鉄道の謎」  (2002)
    「スイス時計の謎」  (2003)
    「モロッコ水晶の謎」 (2005)
    「インド倶楽部の謎」 (2018)

  • じ、つ、は。
    先日、おとなり京都で開催された作家先生方のトーク&サイン会なるものに初めて参加いたしました!
    いらっしゃった先生方は、なんと有栖川有栖先生、北村薫先生、綾辻行人先生のお三方です。どや!すごいやろ!(私がドヤッてどうすんの、すみません……)ミステリ好きな読者ならぜひ行ってみたいと思うでしょ?先生方はとても仲が良くて、お話はとても楽しかったです。一時間のトークショーがあっという間でした。
    サイン会では、私は有栖川先生の作品「カナダ金貨の謎」にサインをしていただきました。名前も書いて頂き感無量ですよ。なかには先生方と楽しくお話をされてるファンの方々、ファンレターかな?渡しておられる方、そして握手をされてる方もおられます。私はといえば、初参加、おまけにまだ浅いファン歴に緊張してしまい「(デビュー)30周年おめでとうございます……」とぼそぼそ呟くのが精一杯でした。とはいえ、根は関西のおばちゃんですからね、やっぱり。ちゃっかり握手はお願いしちゃいました。快く先生は握手をしてくださりました。数々の作品を紡いできた温かく美しい手、長い指に感動です。先生、これからも応援してます。

    と、作品「カナダ金貨の謎」とは関係ないことを長々と書いてしまいました。つい、嬉しくて……。失礼しました。

    「カナダ金貨の謎」には、中編と短編が交互に全部で5つの作品が収録されています。

    「船長が死んだ夜」
    あの時こうだっ「たら」、もしもあの時点でこうしなかっ「たら」……。いくつもの「たら」の分岐点が犯人にも、被害者にもありました。運命とか未来って、数えきれない分岐点の先にあるもの。その先に待っているのが破滅だとしたら。日常に溢れる些細な分岐点で何気なく一方を選んできていることに、少し怖くなってしまいました。
    アリスが最後に気づいた「たら」は、犯人は知らない方がまだ救われるのかもしれません。だって人生はやり直しはできるけど、過去には戻ることが出来ないのだから。

    「カナダ金貨の謎」
    犯人の視点から描かれたミステリ。アリスたちを余裕を持って上から目線で眺めていた犯人が、いつの間にか火村の手の内で踊らせれ、最後には二人に対して自分がなぜ罪を犯したのか、真意を汲み取ってくれるだろうか?理解してくれるのか?と思うに至るまで。犯人から視るアリスや火村への感情の変化に興味を持ちました。

    「トロッコの行方」
    暴走するトロッコを止めるために、犯人はどうしたのか。何かを手にいれるためなら、何かを捨てなければならない。その方法が究極の選択の先にしかないとしたら。
    「船長が死んだ夜」と重なった部分が私にはあって、結局人生ってミステリなんだなぁってことを思ったんです。うん?何言ってんの、あなた……って、自分でも笑えるんですけどね。
    人生の途中で右往左往している私には、運命や未来なんてまだまだ隠された謎のようで、はっきりと捉えることが出来ません。ただ、数えきれないほどの分岐点で自分の進むべき道を選んで一歩一歩進んでいくだけです。そしてその分岐点には、もしかしたら運命の謎を解くためのヒントや鍵が隠されているかもしれません。でも、もしそこに誤った方向へ誘導するミスリードが隠されていたとしたら。途中で気づいたら引き返せばいい。でも、そのまま誤った方向へ進み続けるしかなかったら。究極の選択はどう進んでも無傷でいられない。でも暴走するトロッコを止める方法を自らの手で選びとらなければいけないとしたら。その先にある私が迎える人生の結末は……

    「エア・キャット」
    猫好きの火村先生が可愛らしいです。

    「あるトリックの蹉跌」
    楽しく面白く読めて、いちばん気にいったお話です。学生時代のアリスと火村のやり取りが初々しい。そして、なにより物語出だしの原稿を仕上げた作家アリスの心中が、トークショーで話された有栖川先生の心中と重なる部分が見えたようで、ひそかに笑ってしまいました。

  • 短編集。

    やはり短編集は物足りない。
    が、そのなかで一編ちょっと風変わりな「あるトリックの蹉鉄」が新鮮だった。
    若かりしころの火村と有栖のお話。超短編なのにちょっとした大どんでん返し。思わずニヤニヤしてしまう。

  • 久々の国名シリーズ。
    アリスが大学時代に書いた小説のトリックは意外性があって面白かった。
    トロッコの〜はどこが犯人の決め手となったのかいまいちわからなかった。犯罪の動機はとても身勝手と感じた。

  • 幸運の金貨はどこに消えた?

    国名シリーズ第10弾。もっとあるような気がしていた。表題作のほかに、火村先生と猫のエピソードが効いてる「エア・キャット」や、アリスと火村先生の出会いの詳細が明かされた「あるトリックの蹉跌」など中編と短編が含まれる。相変わらず締め切りに追われるアリスと、相変わらず白ジャケットにゆるめたネクタイの火村先生が健在で、目まぐるしく変わる日常から離れてほっとできる(人は死ぬけど)推理小説。土地勘のあるところがたくさん出てくるのも楽しい。

    「船長が死んだ夜」うっかり免停になった火村先生にアッシーにされるアリスという衝撃的展開から始まる。悲しき聞き間違いから火がついた殺意。椅子に乗れない高所恐怖症ってかなり大変では。

    「カナダ金貨の謎」一種の倒錯もの。アリスが想像する犯人の動機は、人の弱さを指摘していて、開けてはいけない門を開けさせるのは、自分も気付かないうちに長年積み重なったコンプレックスなのかな、と思わせる。カナダ金貨の価値については、知らなかったので、へぇ、と思った。それから、女性が見た中折れ帽の男は憔悴していたから見たと思い込んだファンタジーと捉えていいんですよね?

    「エア・キャット」まだ飼っていない猫の名前考えている火村先生かわいすぎるでしょ。それにつきる。

    「あるトリックの蹉跌」例の出会いの詳細。よく考えたら人が書いている原稿を横で読み出すとか、アリスに不信感抱かれて心の扉閉ざされて終わりでは。火村先生だから許されるんやで、と思った。法学部が詰め込まれる階段教室の最上段に乾杯。二人がタバコ吸っている描写に、それぞれが出ていて好きです。

    「トロッコの行方」トロッコ問題の回答で、マイケル・サンデル教授を線路上に追いやるなんてのは初めて聞いたけど、いわゆる「出題者に反省を求めたい」ってことで。それぞれの登場人物がトロッコ問題にどう答えるか、も興味深い。学生の前では多数派の答えを示してみたけど、実はレバーを切り替えられない火村先生。ポイントのところでレバーを操作してトロッコを脱線させるというコマチさんの反則も、コマチさんらしくていいな。犯人のあまりに自己勝手な犯行理由に驚き。

  • 作家アリスの国名シリーズ第十弾。短編集。「エア・キャット」と「あるトリックの蹉跌」は火村とアリスのコンビが大好きな人間にはたまらない作品。特に「あるトリックの蹉跌」の若い頃の二人のやり取りは可愛い。表題作でもある「カナダ金貨の謎」は倒叙ものでもあるのだけれどあそこまで犯人の思考を読める火村先生はさすがである。

  • 火村シリーズ短編集。
    下記2つが特に印象深くおもしろかった!

    あるトリックの蹉跌→有栖と火村の出会い、コネタ的な話でファンには興味深い話


    トロッコの行方→トロッコ問題と絡めた話し、着眼点がよくて切れ味がよかった。

  • 短編集ながら、長さや視点、読んだ後の後味がそれぞれ違って面白い。わざわざ前書きにある通り、最初から順を追って読むように計算されている。
    論理ロジックもピタリと決まって読みやすい。
    火村と有栖の学生時代の出会いの話があったのはびっくりした!詩人探偵、ちょっと稚拙で面白そう。

  • 国名シリーズ第10弾の短編集。
    「船長が死んだ夜」はアンロソジーで既読。
    表題作は一部倒叙形式だが、犯人が何をしようとしていたのかは読者にも伏せられており、犯人側と探偵側の両方が楽しめる作品だった。
    「あるトリックの蹉跌」はネット配信のドラマで見た二人の出会いのシーンが描かれており、ファンには嬉しい。
    やはり相変わらず安心して読めるシリーズである。

全72件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

有栖川有栖の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×