- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065166871
作品紹介・あらすじ
民家で発見された男性の絞殺体――殺害現場から持ち去られていたのは、一枚の「金貨」だった。“完全犯罪”を計画していた犯人を、臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖がロジックで追い詰めていく!表題作「カナダ金貨の謎」ほか、切れ味鋭い中短編「船長が死んだ夜」「エア・キャット」「あるトリックの蹉跌」「トロッコの行方」を収録。待望の〈国名シリーズ〉第10弾!
感想・レビュー・書評
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既読のものが2話あったがいつものように切れ味鋭い短編が味わえて満足。表題作『カナダ金貨の謎』や『トロッコの行方』もよかったが、番外編的な『あるトリックの蹉跌』は火村&有栖ファンにはたまらないお話でした!
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火村&アリスシリーズの中の、国名シリーズ第10作。
短編が2本、中編が3本。軽快に読める。
前編通して、様々な「何故?」が展開される。
短編の一つ、「エア・キャット」。
事件解決の鍵である夏目漱石の『三四郎』。火村は何故その『三四郎』を予言するかのようなメモを事前に書けたのか。
火村の猫好きが分かる作品。
もう一つの「あるトリックの蹉跌」は、火村とアリスの出会いのエピソードが描かれる。
この頃から火村の洞察力の鋭さは発揮され、アリスの小心者振りも発揮される。
その他の中編。
「船長が死んだ夜」
犯人は何故、被害者の部屋に貼られていたポスターを剥がしたのか。
様々な「Why?」と同時に、様々な「if」も駆け巡る。
「カナダ金貨の謎」
犯人は何故、被害者が身に付けていたメープルリーフ金貨だけを奪ったのか。
長年このシリーズを追っている私としては、それは罠だよと思わず言いたくなるが、犯人にとっては初めて会う人間。ましてや相方のアリスのキャラクターもあって、火村の隠した爪は見えないのだろうな。
「トロッコの行方」
五人を救うために一人を犠牲に出来るのかという『トロッコ問題』をミステリーに組み込んだ作品らしいが、読み終えた感想としては、取らぬ狸の皮算用では?
他人が何を考えているか、いくら生活を共にしていても、いくら長年付き合っていても、分からない。その恐ろしさにゾッとする。
火村とアリスだって、長年付き合っていてそれなりの絆も感じるが、互いの心の奥底は分からない。
改めて思うが、二人ともスモーカーなんだなと。これほど愛煙家が敬遠される世の中になってもさして困ることなくタバコを吸っている。だが今後はさらに吸える場所が少なくなって困るシーンも描かれるようになるのだろうか。
ところで表題作が「スイス時計の謎」と僅かながらリンクしていることが分かった。当該作は読んでしばらく経つのですっかり忘れている。そのうちに国名シリーズも読み返していこうかとも思う。
以下、自分用に国名シリーズのリストを挙げておく。
「ロシア紅茶の謎」 (1994)
「スウェーデン館の謎」(1995)
「ブラジル蝶の謎」 (1996)
「英国庭園の謎」 (1997)
「ペルシャ猫の謎」 (1999)
「マレー鉄道の謎」 (2002)
「スイス時計の謎」 (2003)
「モロッコ水晶の謎」 (2005)
「インド倶楽部の謎」 (2018) -
短編集。
やはり短編集は物足りない。
が、そのなかで一編ちょっと風変わりな「あるトリックの蹉鉄」が新鮮だった。
若かりしころの火村と有栖のお話。超短編なのにちょっとした大どんでん返し。思わずニヤニヤしてしまう。 -
久々の国名シリーズ。
アリスが大学時代に書いた小説のトリックは意外性があって面白かった。
トロッコの〜はどこが犯人の決め手となったのかいまいちわからなかった。犯罪の動機はとても身勝手と感じた。 -
作家アリスの国名シリーズ第十弾。短編集。「エア・キャット」と「あるトリックの蹉跌」は火村とアリスのコンビが大好きな人間にはたまらない作品。特に「あるトリックの蹉跌」の若い頃の二人のやり取りは可愛い。表題作でもある「カナダ金貨の謎」は倒叙ものでもあるのだけれどあそこまで犯人の思考を読める火村先生はさすがである。
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火村シリーズ短編集。
下記2つが特に印象深くおもしろかった!
あるトリックの蹉跌→有栖と火村の出会い、コネタ的な話でファンには興味深い話
トロッコの行方→トロッコ問題と絡めた話し、着眼点がよくて切れ味がよかった。 -
短編集ながら、長さや視点、読んだ後の後味がそれぞれ違って面白い。わざわざ前書きにある通り、最初から順を追って読むように計算されている。
論理ロジックもピタリと決まって読みやすい。
火村と有栖の学生時代の出会いの話があったのはびっくりした!詩人探偵、ちょっと稚拙で面白そう。 -
国名シリーズ第10弾の短編集。
「船長が死んだ夜」はアンロソジーで既読。
表題作は一部倒叙形式だが、犯人が何をしようとしていたのかは読者にも伏せられており、犯人側と探偵側の両方が楽しめる作品だった。
「あるトリックの蹉跌」はネット配信のドラマで見た二人の出会いのシーンが描かれており、ファンには嬉しい。
やはり相変わらず安心して読めるシリーズである。