論点別 昭和史 戦争への道 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065178621

作品紹介・あらすじ

昭和の戦争と社会を理解するための10の謎に迫る!

天皇――なぜ立憲君主が「聖断」を下したのか?
女性――戦争に反対したのか協力したのか?
メディア――新聞・ラジオに戦争責任はなかったのか?
経済――先進国か後進国か?
格差――誰が「贅沢は敵だ」を支持したのか?
政党――なぜ政党内閣は短命に終わったのか?
官僚――なぜ官僚が権力の中枢を占めるようになったのか?
外交――なぜ協調外交が戦争を招いたのか?
日米開戦――なぜ回避できなかったのか?
アジア――侵略か解放か?

この一冊で昭和史研究の最前線がわかる!
女性差別、SNSと言論、格差社会、官僚主導、対アジア外交……、
今日の日本が直面している諸問題の歴史的な起源は戦前昭和にあった! 
日本近現代史研究の第一人者が昭和史の実像に迫る一冊。

感想・レビュー・書評

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  •  文体は平易で、所々にエピソードも入っており読みやすい。戦時下での女性の社会進出・格差是正・社会の下方平準化、日中戦争下の日本は割と明るかったこと、戦前と戦後の連続性重視、などは著者のこれまでの著作と共通する。
     本書を通じて感じるのが、歴史を単純化していないことだ。立憲君主と天皇親政(「聖断」)の間で揺れる天皇の存在。女性の一定の戦争協力と地位向上。メディアは権力に対し一方的な被害者でも追従する加害者でもないこと。外務省善玉論も海軍善玉論も批判する。外務省の対中外交は軍部の横槍の前に既に立ち往生していたことや、それまで軍拡を続けていた海軍も組織防衛のため対米開戦を決意したことを指摘している。また、アジアの侵略か解放か、という敏感な問いにはどちらも強調せず、外地参政権の見直しや大東亜共同宣言の中で日本とアジア諸国の対等な関係に触れられたことで日本も変わらざるを得なかった、と指摘している。
     また本書の中では、広田弘毅・外務省善玉論は城山三郎の、海軍善玉論は阿川弘之の小説で広まったことを述べている。エンターテイメントとしてはともかく、やはり単純化ではなく歴史の複雑さの理解が重要だと考える。

  • 「新書」を「新しい本」と誤解するのが昨今の大学生の語彙力らしい。学習院ってそんなにレベルが低いのか?と驚くのだが、「新書の難易度は大学生の語彙力レベル」との著者の判断から、学習院の学生でも読めるレベルに難易度を下げたらしい。こうやって新書のレベルがドンドン下がっていくことに懸念を感じる。
    で、肝心の中身だが、10のテーマ別に昭和史を概観するというよくばりな構成。ただし、新書のボリュームだと各20ページ程度なので流石に内容的には薄いのだが、これが中堅大学のレベルに合わせているというのなら、それはそれで仕方ないのかもしれない。手っ取り早く教養を身につけたい社会人がざっと読むには悪くはないとは思うが、これで終わりにせずもう少し深堀した方がいいように思う。

  • 昭和史に関するサーベイ論文のような印象だった。著書も気を付けたと書いているけれど、正確に書こうとしつつ、わりと読みやすい。これまで近現代をほとんど咀嚼しないままだった自分が、最初に読むのにちょうど良かったように思う。
    200819

  • サブタイトルが示すようにここで取り上げる昭和史は1926年〜1945年の間。なぜ戦争に向かったのかを10のテーマごとに論じていく。なかで「メディア」「女性」「外交」には、はっとさせられた。ずっと協調外交を展開していたのに戦争に突入した不思議は残念としか言いようがない。「現代が昭和の戦争前の状況に似てる」との著者の主張には賛成できないけど、政治が国民と乖離していくと悲惨な結末に向かうってのは確かでしょうね。

  • 10のテーマごとに戦前昭和、大戦を振り返っている。特にメディアと官僚、経済、外交あたりがおもしろい。どうしてもさらっとした内容になってしまうので、これまでの井上氏の本と比べると薄いように思われるが、この本を入り口にしてまた別の専門書に取り掛かりたい。

    つくづく思うのは、戦前と戦後の、そして戦前と現代の連続性である。8月15日革命説には肯けない。東京の特別区や、政令指定都市のもとになる五大市が昭和18年の法改正でできたことや、交付税の源流となる地方分与税の存在など、戦中期に作られた制度が連綿と引き継がれている。

    メディアが、政党や軍人を過度に攻撃してしまったことが一つの戦争の遠因と書かれている。現在、我々はメディアに踊らされていないと断言できるだろうか。自分自身が容易に発信者となれることで、なにかを煽っていないだろうか。不偏不党は難しいが、一つのメディア、一つの主張に依ることなく幅広く多面的に物事を見てゆく必要があるということを再認識した。

  • 1930年代の日本は苦しみながら戦争への道を歩んでしまった。5・15事件以降、憲政の常道といわれる政党政治は崩壊してしまった。イギリス型政党政治の理想を有していた元老・西園寺公望は政党内閣の復活を最終的に諦めざるおえなかった。その後のいわゆる軍国主義といわれる体制は官僚が政治の中枢を占める体制だった。今に至るまで立法府=政党と行政府=官僚の相互補完関係はどうすればいいのかが日本の課題だ。本書のような昭和史の入門書を手がかりに不戦の誓いから現代政治はどうあるべきか考えるまで、昭和史というのは令和を生きる我々とっても示唆に富む。

  • 1926年から1945年までの歴史を10の論点で分析する。
    いかにして戦争に向かったのか?回避はできなかったのか。戦争がもたらした効果は何か。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  天皇~なぜ立憲君主が「聖断」を下したのか?
    第2章  女性~戦争に反対したのか賛成したのか?
    第3章  メディア~新聞・ラジオに戦争責任はなかったのか?
    第4章  経済~先進国か後進国か?
    第5章  格差~誰が「贅沢は敵だ」を支持したのか?
    第6章  政党~なぜ政党内閣は短命に終わったのか?
    第7章  官僚~なぜ官僚が権力の中枢を占めるようになったのか?
    第8章  外交~なぜ協調外交が戦争を招いたのか?
    第9章  日米開戦~なぜ回避できなかったのか?
    第10章  アジア~侵略か解放か?
    おわりに

    <内容>
    昭和史(戦前)を10の切り口から解き解いていくもの。新書なので深い分析はないが、高校生くらいが考えるにはちょうど良い分量と内容。巻末に詳しく読み解くためのブックガイドをついていて、これから研究するのによい。

  • 有り S210/イ/19 棚:13

  • 勉強になった。

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著者プロフィール

井上寿一
1956年(昭和31)東京都生まれ。86年一橋大学大学院法学研究科博士課程単位取得。法学博士。同助手を経て、89年より学習院大学法学部助教授。93年より学習院大学法学部政治学科教授。2014~20年学習院大学学長。専攻・日本政治外交史、歴史政策論。
著書に『危機のなかの協調外交』(山川出版社、1994年。第25回吉田茂賞受賞)、『戦前日本の「グローバリズム」』(新潮選書、2011年)、『戦前昭和の国家構想』(講談社選書メチエ、2012年)、『政友会と民政党』(中公新書、2012年)、『戦争調査会』(講談社現代新書、2017年)、『機密費外交』(講談社現代新書、2018年)、『日中戦争』(『日中戦争下の日本』改訂版、講談社学術文庫、2018年)、『広田弘毅』(ミネルヴァ書房、2021年)他多数

「2022年 『矢部貞治 知識人と政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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