時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065202104

作品紹介・あらすじ

物質には反物質があり、力には作用と反作用があるように、この世のすべてのものは、ほんのわずかな破れはあったとしても、対称性を持っています。ところが時間の進み方だけは対称ではなく、宇宙ができたときから現在まで、一方向だけに進んでいると考えられています。このことを「気持ち悪い」と感じている物理学者は少なからずいるようです。筆者もその一人です。
本当に時間は一方向だけなのか。宇宙は逆戻りしないのか。じつは時間も宇宙も、反復し、逆戻りしているのではないのか。一見、荒唐無稽なこの疑問を大真面目に検討してみることで、宇宙や時間についての新しい見方を呈示しようという狙いです。
量子重力理論研究の期待の新鋭にして、日本人としては最後の「ホーキングの弟子」ともいわれる著者が、量子論的な視点を突破口にして、「反復する時間」の可能性をわかりやすい言葉で探っていきます。

感想・レビュー・書評

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  • 時間が未来への一方通行という認識が本当に正しいのか、当たり前と考えられていることに一石を投じる一冊。
    とんでも科学や似非科学が蔓延る中、正真正銘の物理学における時間の概念を検証していきます。
    読了してまず感じたのは理系にとっても小難しいという印象で、多少の基礎知識が必要であると思います。
    とはいえ、量子世界では既に時間が過去へ戻る現象を観測したことや、時間が未来へ流れる膨張と時間が過去へ流れる収縮を繰り返すサイクリック宇宙といった劇的なシナリオが紹介されたり…、文理問わず楽しめる内容です。
    サイクリック宇宙が正しかった場合、この宇宙は50回目位の宇宙で私は50人目位の私であるようなので、確定した未来へのレールを歩んでいることになるのでしょうか。
    人生観が変わってしまうほど、色々と考えさせられます…。
    過去へのタイムトラベルが可能であれば夢はありますが、同時にそれが閉鎖した時間を何度もループすることを意味するならば虚しくも感じますね。
    遠い未来の人類が時間と空間の秘密を解き明かして限界を突破していることを、食事をしてエントロピーを減少させ排泄をしてエントロピーを増大させながら期待します。

  • 映画『TENET』を見て興味を持ち読了。時間に関する近代以降の科学的歴史から相対性理論、量子力学までのトピックの概観をざっくりと学べた。極めてミクロな世界と極めてマクロな世界の中では時間は逆行しうるというのは体感的にりかいしがたいが、とても興味深いと感じた。文章もロヴェッリを支持しているように、フランクな感じで読み易い。

  • 時間を切り口に、量子物理学を中心とした最新の宇宙論を紹介する本。
    超弦理論、ループ量子重力理論、ブレーンとサイクリック宇宙…理解できたとはとても言えないけど、読んでてわくわくする!
    文章もやわらかくわかりやすいので、「よくわからないけど何かすごくて面白いな!」っていうのが伝わってくる。もっと知りたく読みたくなる。入門書としてとてもいいのではないかと思う。
    著者と同じ学舎だったホーキング博士のエピソードにもほっこり。

  • 最新の最新を追うならまたいくらかの進展が見られるものかとも思うが
    いくらか触れてきた時間論や宇宙の存在論でも見知らぬままだった新たな概念に触れる機会となった。

    時間を概念として捉える学究は思弁的なものに過ぎなくなりそうなものだが、より鳥瞰的に捉えるとそれは存在やそれが依拠する宇宙というフィールドへの探索も兼ねる壮大なものとなるのだろう。

    本著においては難解な数式を扱うでもなく、適宜図解もされていて、古代から連綿と続けられてきた時間と存在への探求は現代科学のもとではこのような段階に至っているのだと端緒としては手に取りやすいものとなっている。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1355799

  • 引っ張っておいて終わり間際の妄想パートな萎え

  • とってもわかりやすい

  • 主に宇宙の話。とにかく内容が盛りだくさん。宇宙の捉え方には様々な説があって、それらの最新事情が分かる、そんな本。

  • 時間に関する最近の研究を短くまとめてあり、勉強になった。
    数学的には理論化される多次元・虚数の世界の一端が実世界の観測によって見えてきている。この世とは数学世界の一部分にすぎないのかもしれない。
    ・生物の遺伝子進化プログラムを量子コンピュータで計算したら、エントロピー増大の法則とは反対に、ある瞬間から一定の秩序が生まれた(Sientific Reports)。乱雑さの扉を開閉するマクスウェルの悪魔が生まれた?ついに時間が反転する現象が見つかったのか?
    ・量子重力理論は超弦理論とは別にループ量子重力理論がある。後者は時間にも最小単位があり10マイナス44乗である。時間と空間には区別が無く、誰かが観測したときに決まる。
    ・ホーキングは宇宙の始まりに虚時間を導入することで 時間の始まり=特異点の発生を回避した。虚時間を導入することで exp(-i) で表される振動が数式に入り、無境界宇宙が理論化できた。

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著者プロフィール

高水 裕一(たかみず・ゆういち):1980年東京生まれ。早稲田大学理工学部物理学科卒業。東京大学大学院、京都大学大学院を経て、英国ケンブリッジ大学理論宇宙センターに所属し、スティーブン・ホーキング博士に師事。現在、筑波大学計算科学研究センター研究員を務める。専門は宇宙論。主な著書に『時間は逆戻りするのか』『宇宙人と出会う前に読む本』(講談社ブルーバックス)『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』(講談社)、『物理学者、SF映画にハマる』(光文社新書)、『宇宙の秘密を解き明かす24のスゴい数式』(幻冬舎新書)、『面白くて眠れなくなる宇宙』(PHP研究所)などがある。

「2023年 『宇宙最強物質決定戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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