呉越春秋 湖底の城 九 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065204146

作品紹介・あらすじ

9年の歳月をかけて紡がれた至高の一大叙事詩、ここに完結!

越王・句践が呉の王宮に身を移されてから二年余。
呉が陳へ攻め入った報を受け、越の大夫・范蠡と諸稽郢は、使者として呉へ向かう。
そこで呉王・夫差は、句践の帰国を許すかわりに、二人に呉都にとどまるよう命じるのだった。

伍子胥と范蠡、二人の英傑の運命を雄大に描く中国歴史ロマンの傑作、ついに完結!

感想・レビュー・書評

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  • 長い歴史の一幕が終わった。
    伍子胥も夫差も勾践も消え、范蠡と西施が遠く陶にて静かに向かい合い歩いて来た道程を思い出す。
    良いラストだった。
    疲れ果てた夫差が無気力になるのは、バイタリティ溢れる人によくみられる燃え尽き症候群のためか。
    ここから中国は戦国時代へと突入していく。

  • 呉越春秋は呉の伍子胥から越の范蠡に主人公がうつっていきました。范蠡篇。
    呉から見ていたものを越側の視線に変えるとまた見え方が変わってきて、王が変わると国も変わってきて、興味深かったです。

    上に立つ者の資質によって国のあり方は変わってしまうし、努力や忠誠は報われるわけではないのか‥
    人を見抜く目や先を見越してどう振る舞えばよいかを見極める大切さ‥
    いろいろと考えさせられました。

    「人は、環境と地位のちがいによって、変わるものである。他人への好悪の方向、角度、濃淡さえ変わる。」

    確かな歴史的記述が極めて少ない時代を宮城谷さんの力で生き生きとした世界に作り上げてくださり、春秋時代に色がついて見えるようになりました。
    臥薪嘗胆もよくわかりました。

    そして、最後までずっとなぜ「湖底の城」という題名なんだろう?と思っていたのが、最後にわかってじーんときました。

  • 呉越がついに決戦の時を迎える。伍子胥と范蠡の運命は。中国歴史ロマンの傑作、完結!

  • 人は言葉を必要とする。きちんと言葉を掛けられていない子供は大人になって異常性が露呈する場合がある。犯罪者の遠因としてネグレクト(育児放棄)が指摘されることは珍しくない。英語の意味は「意図的な無視」である。コミュニケーションの遮断と言い換えてもよかろう。
    https://sessendo.blogspot.com/2022/03/blog-post_18.html

  • 全9巻

  • 宮城谷作品には欠点がある。それは主人公の前半生の描写に多くを費やしてしまい、後半生の描写が希薄だということだ。よって世に出て、歴史上に名を現した時期の描写が駆け足になり、それが私にとりもの足りなさを感じさせていた。『奇貨居くべし』『風は山河より』がその例だ。
    本作も全9巻のうち、第6巻でようやく有名な伍子胥の「死屍に鞭打つ」エピソードである。しかもライバルと言える范蠡はこの巻でもまだ本格的に登場していない。
    先行きが心配だったが、うまくまとめられていて安堵した。

    人にとって大切なものの一つは洞察力、卑近な言い方をすれば空気を読むということだ。范蠡の見事な退き際を見るに、彼は非常に優れた洞察力の人だった。
    では、伍子胥は范蠡に劣るのかというと、私はそうは思わない。子胥の想念は全く別のところにあったということだろう。

    「━━学ぶということは、生涯学ぶということだ。」『外交の妙』より。
    「あるところまで学んで、これでよし、これでわかった、とすることは、おのれでおのれの発展を止めることであり、おのれの深奥をみきわめることなく、軽量の個を真の自身と勘ちがいをして生きることになる。」『外交の妙』より。
    「旱にはすなわち船を資し、水にはすなわち車を資するは、物の理なり」『外交の妙』より。
    「わからないことをむりにわかろうとすると判断をあやまる。わからないことを、わからないままにしておくことも、ひとつの賢明さなのである。」『外交の妙』より。
    「━━功が多い臣は、君主にうるさがられることになる。」『外交の妙』より。
    「非凡な思想は、しいたげられた環境から生まれる。」『人質の交替』より。
    「たやすくあらわれる意望など、たかがしれている。」『人質の交替』より。
    「財を失うより、時を失うほうが、損害は大きいのではありませんか」『謎の商人』より。
    「財は、おのれが築き上げてこそ、まことの財となり、不動となるのです」『謎の商人』より。
    「苦難のうけとりかたをまちがえると、人は卑屈に堕ちてしまう。」『西施の命運』より。
    「尊大さは、愚かさの現れであるともいえる。」『仙女の飛翔』より。
    「もともと策は常識からはみだした創意をいうが……」『属鏤の剣』より。
    「━━人の和の堅さは、すべてを凌ぐ。」『出撃の時』より。
    「人は、けっきょく、人を喜ばせた者が勝ちだな」『呉越の決戦』より。
    「策は、おのれを弱、と自覚した者の発想だ。」『呉越の決戦』より。
    「人は、環境と地位のちがいによって、変わるものである。他人への好悪の方向、角度、濃淡さえ変わる。」『湖上の影』より。

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著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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