どの口が愛を語るんだ

著者 :
  • 講談社
3.25
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065223871

作品紹介・あらすじ

のたうちまわって超えていけ、愛。

『流』の直木賞作家・東山彰良が新たに挑む、自由でボーダレスな短編集!

九州の温泉街、小さな街の団地、ニューヨーク、台北、東京ーー。
残酷さとやさしさが隣り合わせるパッとしない世界
それでも生きていくむきだしの人間たち。

「猿を焼く」
さえない温泉街に引っ越してきた中三のぼく。無軌道な不良とよそ者の少年は、なぜ猿に火をつけたのか?

「イッツ・プリティ・ニューヨーク」
クレイジーな同級生カメと、そのアバズレな姉。欲求に翻弄されるぼくと彼らの団地の日常。

「恋は鳩のように」
同性婚が合法化された日、歓声に沸く群衆の中、アンディは詩人の恋人・地下室に電話をかける。

「無垢と無情」
人間じゃなくなった「やつら」から身を潜めるように、おれは画面の中のミーティングルームを訪れた。

感想・レビュー・書評

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  • 4編どれも尖っている。文学だーとなぜか実感する。

    「恋は鳩のように」
    最初は違和感ありが、なかなか素敵な恋愛小説に変貌していく。

    「イッツ・プリティ・ニューヨーク」
    破天荒な姉と弟のこんな人生、プリティ!

  • 短編4作から成る作品。中でも一番衝撃的だったのが最初の「猿を焼く」で、文字通り炎上しそうなラストだ。思春期男子の不安定な心と体が突き刺さってくる一方で、感覚的に移住を決め終わらせた両親の様子は能天気に映る。両極にいたはずの俊満と主人公は爆発する怒りを共有。その結果としての共同作業がコレというのは実に切ない。

    「イッツ・プリティ・ニューヨーク」では、主人公が、見下していた同級生の成功を目の当たりにしたとき、自分の自己肯定観の低さに気づくというもの。自分なら成功といえないのに世間に認められてしまう、その矛盾。そんなふうに考えてしまうこと自体卑屈じゃないか?と思う。

    「恋は鳩のように」の舞台は台湾で、様々な愛の形が語られる。『地下室』と呼ばれる詩人を中心に、彼の恋人アンディや、アンディの恋人カイ、『地下室』を想う女性チイルンの心のひだが、詩のように展開する。正直のところ詩の意味がよく理解できないが、ラストは視覚的にとても面白く、小道具(くつ)の使い方はあっぱれ!だ。

    「無垢と無常」は近未来の光景としておぞましく、読むのが辛かった。人間も極限状態になると倫理も何もなくなってしまうことの証明ではないか、と恐ろしくなった。

    読了した時、誰一人として堂々と「愛」なんて語れないではないか、と言われた気分になった。人間のドロドロした部分を描き切る筆力はさすが!でも読後感がよくないのでこの★数で。

  • なんだこれは。
    なんとも言えない気持ち悪さ。
    まさにタイトル通り。
    サクッと読める頁数なのに
    めちゃくちゃ疲れた

  • 「猿を焼く」
    “久闊を叙した”が出てきたら『山月記』を思い出した。
    “人間はひとりぼっちで誰にも顧みられないより、誰かといっしょに腐乱していくほうがうんと安らぐ”

    「イッツ・プリティ・ニューヨーク」
    “偽善こそはこの世界を回している重要な歯車のひとつなのだ。だって、それは協調性のもうひとつの呼び名なのだから。”

    これらは純文学なのか??きっとこれは純文学なんだ、、、と思いつつ読了。半世紀後、もしくはそれ以降に著作権がきれて万人に読まれるようになるころ、今この時代を顕す時代背景を持っていると想った。なんて芥川龍之介みたいなことを考えた。


    「恋は鳩のように」
    3人の人物の視点も心の内もタイムラグなしにラフに切り替わる神の視点での語り口。
    (ラフに、雑なという意味ではなく垣根がないというニュアンスで使いました)
    これ1番好きです。物語の広がりと深みの可能性をどしどし感じる。これはなんだ?なんの分類の小品だ??おそらくこれはなんども読み返すべく傑作。



    「無垢と無情」

  • 「猿を焼く」
    猿への暴力がエスカレートしていく場面、「流」の定規で膝を刺すシーンを思い出した。

    「イッツ・プリティ・ニューヨーク」
    亀山家メンバーのイカれ具合。笑

    「恋は鳩のように」
    台湾では同性婚が合法だって初めて知った。
    地下室はなんでこんなにモテるんだろう。

    「無垢と無情」
    愛とななにかとかどーでもいい。

  • 全くだ…(タイトル)
    本当は誰一人、語るべきではないのかもしれない…

  • 3.5 愛に関する短編集。この作者の描く躍動感が好き。大胆だけど、繊細。絶望を描きながら希望を残す。明日も頑張らなくてもいいから生きようと思う。

  • 『ブラックライダー』『罪の終わり』という大傑作をものした東山彰良の愛をめぐる四つの純文学短篇集。それぞれ面白い。そして何より文章がすばらしい。東山作品は「ぼく」という一人称で少年時代を回想したものが、好きな作家だが、ゾンビ小説の「無垢と無常」の語り口も良かった。

  • やっぱり東山さんの作品は最高だ。日本文学で、こんなテイストかけるのはなかなかいないと思う。ここ最近、女性作家さんの作品ばかり読んでいたこともあって、より強くそう思うのかもしれないけれど笑 

    個人的には、「猿を焼く」が一番好き。(この作品に限らずの話だが)思いのほか作品自体のスコアが低いが、アクが強いのと、面白くないは違うと思う。

  • 短編集。

    淡い恋心を抱いていた少女が、水商売をしていると聞き、現場を見に行った主人公。その後、少女は殺されてしまう。加害者は少女の母親(やはり水商売)の客だった。(『猿を焼く』)
    これは恐ろしかった。客の飼っている猿でしょ?猿に対しては何の恨みもないのに、互いに試し合うかのように猿を焼く主人公とその友人。
    でも、目には目を~的な理論で行くと理に適ってる。客は、直接的には恨みのない(はずの)女子を殺したんだから。
    少年たちの行き場のない怒りみたいなものを感じてゾッとした。

    『イッツ・プリティ・ニューヨーク』は同級生の姉に転がされている思春期の性欲の塊である少年が可愛らしかった。同級生の姉をアバズレと蔑みながらも、性的にどうしても惹かれてしまう素直な気持ちが新鮮。
    自分を平凡な大人になったと思いたくないが、非凡な才能に触れるとそう思わざるを得なくなる日がやってくる。だからと言って、急にシフトチェンジして才能を表すことは難しい。人生、一度きりなんだなと深く実感。

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著者プロフィール

1968年台湾台北市生まれ。9歳の時に家族で福岡県に移住。 2003年第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞受賞の長編を改題した『逃亡作法TURD ON THE RUN』で、作家としてデビュー。 09年『路傍』で第11回大藪春彦賞を、15年『流』で第153回直木賞を、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。 17年から18年にかけて『僕が殺した人と僕を殺した人』で第34回織田作之助賞、第69回読売文学賞、第3回渡辺淳一文学賞を受賞する。『Turn! Turn! Turn!』『夜汐』『越境』『小さな場所』『どの口が愛を語るんだ』『怪物』など著書多数。訳書に、『ブラック・デトロイト』(ドナルド・ゴインズ著)がある。

「2023年 『わたしはわたしで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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