メルカトル悪人狩り (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065240564

作品紹介・あらすじ

「誰かに命を狙われている」という有名作家の調査依頼から、夏の避暑地に招待された別荘で起きる殺人事件まで……。一気読み必至&裏切りたっぷりな意外な結末が待ち受ける傑作短編集! 麻耶ワールド全開の問題作!!

感想・レビュー・書評

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  • 銘探偵メルカトルシリーズ短編集。シリーズ読むのが久しぶりだったのでメタ展開で解決する流れに最初は戸惑ったが、慣れてくると次はどの手で呆気に取らされるのかとにやにやしながら読み進めてしまった。銘探偵の存在が事件の幕を引く“装置”として機能しているのが条件になる「メルカトル式操作法」が一番好きだ。「メルカトル·ナイト」「囁くもの」もメルの悪辣さが良い。美袋君が相変わらずボロクソに言われてるけどなんか前よりメルカトルとの関係が普通の友人寄りになってないか?記憶違い?あとコロナ禍ネタがあるけど「翼ある闇」は何時になるんだ?

  • どんな事件も即解決。「長編には向かない探偵」メルカトル鮎の短編集。己こそが唯一無二の「探偵」というブランドであるという自負から、自ら銘探偵と称するのは彼だけである。

    ミステリにおける名探偵とは、神である作者と、その作者が作り上げた物語との間を行き来するトリックスターである。人より優れた推理力を持っているから、高い観察力があるから探偵になるわけではない。自由に境界を越えられるからこそ、探偵なのである。

    それはつまり、探偵が謎の答えを見つけ出すのではなく、探偵が語ったからそれが答えになるということでもある。重なる偶然、図ったようなタイミング、天文学的な殺人事件との遭遇率……ミステリの世界はすべて、神たる作者が探偵に答えを出させるために作ったものだ。銘探偵メルカトル鮎は、システムとしての探偵の極北にいる。メルはそのことを、自分が探偵という「存在」であることを自覚している。彼の奇抜なスタイルは、自分が一般人とは違うということの宣言なのだ。

    本書では特に「囁くもの」「メルカトル式探偵術」は、他の凡百の探偵では成立しない、メルならではの短編で味わい深かった。やはりいつかもう一度、シリーズ全体を読み直そう。

  • 久々、メルカトル!!
    のっけから犬を殺した理由がブラックすぎて、いかにもこのシリーズという感じ。
    美袋くんは散々メルに馬鹿にされつつ、今までと比べて、そこまで酷い目にあってないかなという印象。
    またそのうちメルカトルに作品で会えると嬉しい。
    あぶない叔父さんシリーズも好きだから、続編出ないかなあ。

  • '23年6月29日、Amazon audibleで、聴き終えました。『メルカトル鮎』シリーズは、これで三作目。

    何度も中断して、非常にダラダラと不真面目な聴き方をしたので…正直、よく覚えていない点も多いですが…「かく語りき」と比べると、わりとまっとうだったかな…それぞれひねりもあって、楽しめました。相変わらずの、探偵として、強烈なキャラでした!

    「夏と冬の〜」の強烈な失敗、後悔もあるのですが…当たりの時のカイカンも強くて…やはり他のメルカトル作品も、チャレンジします!

  • 摩耶雄嵩さんの代名詞的存在。銘探偵メルカトル鮎の短編集。ファンサービス的な話なのでしょうかね。ショートショートのようなあまり読み応えのない話もあり、やや拍子抜けな気も。
    後半は、事件への関与が必然というか、マッチポンプ的というか、独特なメルカトル節が出てきてよいです。
    美袋がスマホ持ってるのはどういうこと?パラレルワールドの話なのか?とは思わなくもない。

  • 初めてのメルカトルシリーズ。短編集で読みやすく、メルカトル入門者にはピッタリだった。探偵は誰でもひと癖あるけれど、この人もすごいなー。次はメルカトルの長編挑んでみよう。どんなふうに事件を解決するのか楽しみ。

  • 【収録作品】愛護精神/水曜日と金曜日が嫌い/不要不急/名探偵の自筆調書/囁くもの/メルカトル・ナイト/天女五衰/メルカトル式捜査法
     メルにしてはおとなしめな印象。「メルカトル・ナイト」は皮肉が効いていて好み。「囁くもの」と「メルカトル式捜査法」は、論理の構築法がいかにもメルというか、メル以外でこれをやったら本を投げられそう。
     「不要不急」は、コロナ禍を取り上げた『Day to Day』の一篇だが… 時系列が… 

  • 短編8作、「愛護精神」誰の何に対する愛護精神だろう。メルカトルの行動規範が薄ら見える。
    「水曜日と金曜日が嫌い」私は金曜日は好きだ。土日が休みなのでわくわくする。麻耶雄嵩の作品で型があるとしたら、美袋が美女に依頼されメルカトルが解明するパターンだろう。裏読みするとある意味怖い作品だ。「不要不急」水曜日と・・・の後日談。「名探偵の自筆調書」完全犯罪の講義を美袋にする。今後の伏線だろうか?
    「囁くもの」これまでのメルカトルとは少し様子が異なる。それは何を意味するのかを考えさせられる。そもそもが麻耶雄嵩の作品が読者に考えさせる作風でもあると感じる。それを素直に表した作品のようにも感じた。
    「メルカトルナイト」題名は騎士なのか夜なのか?メルカトルの悪人狩りの悪人は何をもって悪人なのだろう。トランプによるカウントダウンは脅迫なのか、軽快にメルカトルが論理を展開するのは面白い。
    「天女五衰」美袋が天女に惚れる。やはりこのパターンから始まる。美袋がある事件に巻き込まれそうになるが助かったのは偶然なのだろうか。
    「メルカトル式捜査法」乗鞍高原の別荘が舞台。題名でもある捜査法は予想以上であった。無双、夢想、無想が感想である。
    面白さがわかってきたのでもう一冊読んでみることにした。

  • またぞろ将棋の早指しの如くほぼノータイムで事件を解決していく銘探偵。
    特に後半の「囁くもの」以降はただ無謬というだけじゃない銘探偵の装置的レゾンデートルがこれまで以上の影響力で描かれてて恐ろしげですらある。
    悪人を狩るために理外から遣わされた存在...。

    恒例の紆余曲折カット放送の短編達なので淡々とした印象を受けるけども、ロジックが歪だったりでやっぱり他では味わえないこのクセっぷり。
    久しぶりのメル短編集だったけどこれはすごい。後半ほんと好き。推理のピースすらも自給自足。
    最後の「メルカトル式捜査法」がミステリ的にも白眉という感じがあって一番だなあ、素晴らしいなあと思うけど、「囁くもの」もテイストはっきり打ち出してて好き。

  •  誰か一緒にメルカトルを殴りに行こうぜ(挨拶)

     前作の「かく語りき」が十年前。十年ぶりですよ、って思ったけど、あれだね、「7人の名探偵」に入ってた話があったな。それもこの本に入ってて、冒頭見てそういえば読んだなって思い出した。
     いやそれでも、本としては十年ぶりなわけで。メルカトルは相変わらずメルカトルで、メルカトルだからメルカトルでした。満足。
     もうね、タイトルがブーメランだと思うんだよ。お前が狩られろよっていう。いや、狩られてんだけどすでに。
     入ってる話数多いなって思ったら、超短編が二つ挟まってました。
    「愛護精神」
     美袋くん、引っ越しなよ。
    「水曜日と金曜日が嫌い」
     名探偵本に入ってた短編。今思ったけどこれタイトル、どういう意味? 結局犯人の動機は分からないままだったんだっけね。
     あと美袋くん、強制的に引っ越しする羽目になったね。
    「不要不急」
     一番新しい話。超短編。コロナ関係を盛り込んでる。
    「名探偵の自筆調書」
     超短編。いやでもこれ、すっごい好き。そりゃまあメルだもん。殺意を抱いている人間が美袋くんひとりのはずないわ。
    「囁くもの」
     お前は一体どこの電波を受信してんだ。
     最初からそうだったけど、メルはミステリというか、探偵小説に対して喧嘩売ってる探偵だよね。
     社長さんがほんと気の毒。
    「メルカトル・ナイト」
     これも好き。いいオチ。その足場板、まさかお前が持ち込んだとか言わないよな?
    「天女五衰」
     公庄くんが好きですね。
     美袋くんさ、メルがそばにいるからなんか、普通のいいひとっぽい感じになってるけど、思考回路は結構失礼だよね。わざとだろうけど、めっちゃ俗物。
    「メルカトル式捜査法」
     メルにしかできねぇよ、そんな推理。
     最後に、犯人お前かーい、って声に出してツッコミを入れる系。
     久しぶりにメルカトルと美袋くんの話を読めて満足です。面白かった。
     抜粋。「愛護精神」より。


     レアチーズケーキをおかずに天津丼を食べたような、ますます気が進まない胸中で私は促した。


     そりゃ気は進まないわ。
     麻耶くんのたとえって独特だよなぁ。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。京都大学工学部卒業。大学では推理小説研究会に所属。在学中の91年に『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューを果たす。2011年『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。15年『さよなら神様』で第15回本格ミステリ大賞を受賞。

「2023年 『化石少女と七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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