国商 最後のフィクサー葛西敬之

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065241271

感想・レビュー・書評

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  • 政治の本を読んだことなかったので新鮮だった。
    国鉄、jrと政治官邸の繋がりの強さがここまでとは知らなかったので驚いた。
    最近のJR東海の変わり様といい、今後リニアも含めて大きく変わっていきそうだと思った。

  • JR東海の社長、会長として、名前は知っていたが、まさかここまで政治に絡んでいたとは。。

    政財界のフィクサー、国士、国商というキーワードが一番似合う、最後の大物だったのかも知れない。

    菅さんから安倍さんへの弔辞は、安倍さんから葛西さんへの弔辞だったというのは、合点がいった。

  • JR東海の葛西敬之。安倍晋三首相とも懇意で、陰に陽に政権を支えていた。国士、政商ではなく国商、最後のフィクサーの生涯を追う。

    国鉄改革から労組問題、NHK改革など政治の裏面を動かす人々。警察官僚とJRのつながり、労働運動等大変興味深い内容。

  • 289.1A/Ka72m//K:東2法経図・6F開架

  • 政・官・財で、どういう風に人脈が形成され、互いに同利用しあっているかについて、著者および取材チームは、かなり多くの当事者に会って取材をしているように見える。
    安倍・菅政権下での、凄まじいまでのNHK攻撃・介入のあたりは、圧力を受けたNHK内部の人たちからの情報提供が豊富にあったようで、臨場感にあふれている。
    国鉄末期から民営化に至るところで、官公労働法をめぐる司法への猛烈な圧力に全く触れていないところは物足りない。
    全方向からの官公労働組合潰しに、本来独立した存在であるはずの最高裁まで引きずり込んでリベラル派を次々と追い出したのを書かなかったのは残念。
    終盤に当時の運輸省の動きを次官であった黒野匡彦氏から多くを引き出している。
    若い頃から次官を約束された大物官僚で、多分嘘は言っていないが、知るところをすねて話しているとも思えない。
    何もかもが、ここで描かれたように葛西敬之の影響下で進んだとは思わないが、安倍・菅という方向を間違えて国士を装った政治家にすり寄って立身出世を果たしていく愚かな官僚物語でもある。

  • 葛西敬之という元JR東海会長の話。
    "国士""国商"と称された男。
    国益を第一にかんがえる愛国者。

    そのビジョンに基づき、戦後復興に寄与した国鉄の官僚として歩みを進めてきた。

    その後、国労、鉄労などといった労働組合が権力振い危機感を感じた葛西ら3人(分社化された後のJR東、西、東海の代表)が中心となり分割民営化を推しはかった。
    じつは労組問題はいまでもあるのだ。

    2005.4に起きたJR西日本福知山脱線事故もそれが絡んでいる。その日は革マル派労組の運転手と会社寄り添い同盟系労組の車掌といった不幸な組み合わせであった。
    運転士が駅の停車ミスを犯し、車掌に無線交信で嘘の報告をして欲しいと頼んだ。が、断られて本人が運転中にパニックになり、制限速度70キロのカーブを116キロのスピードで突入してあの事故が起きたわけである。国鉄改革の皮肉であり、運転士が組合に守られていた国鉄時代なら絶対に起こらなかった、民営化後の組合間の諍いがうんだ事故であるとの見方もある。いまでは葛西の判断がただしかったのか再検証されている。

    葛西は国益を考え、資源にとぼしい日本の戦略として『日本の技術を輸出する』夢をかかげ事業運営に勤しんだ。

    その過程で、警察官僚や政界の恩師である瀬島龍三らの伝手で自民党保守派安倍晋三と親交を深めていく。
    葛西の葬儀の弔辞は、安倍元首相が読んだのである。
    その数すぐ2022.7.8に安倍首相は凶弾にたおれた。
    話は逸れるが、奇しくも私個人的にも娘の2歳の誕生日、友人の美容室オープン日とかさなり、速報に耳を疑ったことをいまでも鮮明に覚えている。

    話を戻す。
    葛西は国益を人一倍考えていた。
    終盤はリニア計画をすすめていたが、その実現のため元安倍首相のバックにつき官邸人事にも影響を及ぼしていた。ビジョンに対する熱意を感じずにはいられない。
    しかし、過去の国鉄時代の経験から国に融資を受けてリニア計画を進めることには反対していた。
    とはいえ、自分の死期を感じ3兆円の財政投融資を受ける決断をした。

    この本をとおして、その判断がただしいかどうかより、決断してものごとを前に進めていくことの重要性を感じた。どの時間軸でその事象をとらえるかによって、またどの視点からみるかによって正解、不正解は変わってくるし、その答えも主観でしかないのではと私は思った。

    ただし、それを変わらない、動かないための理由にするのではなく、ビジョンをもって挑戦し続けていくことが最重要。そんなメンタリティを戦前生まれの葛西氏のような人物たちに感じる。(最近バブルの王様、森下安道-葛西の8つ歳上-について書を読んだ際も同様に感じた)

    最後に著者である森功氏のテーマ選定、調査力には脱帽である。余談ではあるがおなじ福岡県民として誇りである。
    日本で起こった事象も、合理的判断のみに基づいて起こったものではなく、さまざまな変数が絡んで起こったことであると、史実の文脈を感じることができた1冊だった。

    さて、私もこれからの日本について真剣に向き合って生きていきたい。
    この本では、権力、天下りといったことも出ていたが、今現状ではそれらが、実質賃金低下、物価高騰といったスタグフレーションが起こしている要因ではなかろうか。

    そこにメスをいれ、既得権益を守るだけの規制を緩和し、生産性をあげ、あらたな産業をうみだし新陳代謝を活性化させていく。

    そうしないと、かつての葛西氏が考えた『国益』を享受できないだろう。未来のニッポン。子孫のためによい方向に軌道修正していきたい。

  • JR東海の葛西氏の入社から政治介入までの歴史
    直接インタビューしていないのでどこまで事実かわからないがズブズブ

  • 国鉄改革三人組で、JR東海の元社長、葛西氏に関して記述された本。
    鉄道会社の経営者としてよりも、政治家との接点についてスポットを当てた記載になっています。
    個人的には、政治家との繋がりを意識するあまり、いささかこじ付けの様に感じる部分もありましたが、面白く読めました。
    菅元首相の弔辞のくだりは面白かったです。

  • 国鉄3人組といっても、葛西氏の立ち位置は他の2人とは異なっており、その葛西氏が分割民営化を経て日本の行く先にどのような影響を与えてきたか、様々な関係者への取材から導き出される姿が興味深かった。

  • 旧国鉄改革の3人組の1人である葛西氏が社長退任後にいつまでもJR東海の経営権を握っていることに疑問を感じていた。また安倍・菅政権に強い影響力を持つと聞いたことがあるが、それが何なのか自分ではよくわからなかった。さらに氏が主導したリニアはJR東海の屋台骨を揺らすことになるのでは、と獏とした不安を感じていた。
    本書は葛西氏の国鉄改革、JR東海の経営、時の政権・官僚の人脈を追ったもの。読み物としては面白さ満載だが、これも一面であって、まだ追えていない部分があるのでは、そんな印象が残った。著者自身が「国商葛西の評価はいまだ定まっていない」と書いたとおりなのだろう。
    それでも、「おわりに」で故安倍総理の国葬で菅元総理が引いた山形有朋の歌には驚いた。そうだ、この歌の相手は葛西氏だったのだ。このエピソードだけで本書は圧倒的なインパクトが残った。

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著者プロフィール

森 功(もり・いさお) 
1961年、福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、伊勢新聞社、「週刊新潮」編集部などを経て、2003年に独立。2008年、2009年に2年連続で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。2018年には『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝――ヤフーを作った男』『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』など著書多数。


「2022年 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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