R.I.P. 安らかに眠れ

著者 :
  • 講談社
3.57
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本棚登録 : 384
感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065261378

作品紹介・あらすじ

優しかった兄が、三人もの自殺志願者を殺めた――。世間から極悪人と糾弾される村瀬真也。連続凶悪事件を犯した兄が語り始める不可解な動機を解き明かそうと、妹の薫子は奔走するが、一線を越えてしまった真也の「知らなかった一面」に衝撃を受ける。自殺志願者を次々殺めた男の告白から見えてきた真実とは――。行きすぎた正義と、無関心な親切は、どちらが正しいのだろうか。誰もが目を逸らしたくなる問題に、著者自身も懸命に向き合い書き下ろした長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 医師作家による「人間の尊厳」を問い続ける内容であり、とても重く答えが出せなかった。

    薫子の次兄が、自殺志願者を3人も殺害するという凶悪事件が起きたことから物語は始まる。

    検察官のあざとい法廷戦略にも臆するとこなく、自分の意思を告げる次兄。

    優しい次兄が、世間から極悪人と糾弾されるのが納得出来ず、以前通っていた心療内科医に相談したりと奔走する。

    兄のことを善良なサイコパスだと言っていた心療内科医師こそが…。

    すんなり納得できる結末ではなかったものの、テーマ事態が、自殺を容認できるか…につきると思ったので、自分にとっても重い課題を背負ったようだ。

    昨今、特にコロナ禍になってからも感じるのだが自殺者が多くなっている。
    有名人ですら、そうだ。

    いじめ、病気、リストラ、借金、さまざまな要因で死を望むのだろう…。

    生きることがいいと判断する根拠も無いが、
    やはり完全に否定できるか…と問われると
    自分が、難病になり苦しみ、周りに迷惑をかけるのなら、考えるかもしれない…と。

  • 優しかった兄が、三人もの自殺志願者を殺めた――。世間から極悪人と糾弾される村瀬真也。連続凶悪事件を犯した兄が語り始める不可解な動機を解き明かそうと、妹の薫子は奔走するが、一線を越えてしまった真也の「知らなかった一面」に衝撃を受ける。自殺志願者を次々殺めた男の告白から見えてきた真実とは――。行きすぎた正義と、無関心な親切は、どちらが正しいのだろうか。誰もが目を逸らしたくなる問題に、著者自身も懸命に向き合い書き下ろした長編小説。



    ☆3つにしてるけど 3.5にしたい!
    村瀬真也の考え方に共感してしまう部分もあり 自分がちょっと怖くなる
    本人の意思を尊重するのはとても大事だと思うけど 嘱託殺人って本人の意思がどれだけ本気なのかってどのようにしてはかる?わかる?のか難しいところだと思うし それを他人が決めれることなんだろうか?とも思ってしまう
    海外では安楽死が認められている国もあるけど それを仕事としてやっている人達の心は大丈夫なんだろうか?
    苦しんでいる人のためにしていることだと 割り切れるものなんだろうか?
    依頼する人は 自分が依頼されたら出来ることなんだろうか?
    だけど 本人にしたらとても苦しく苦しくてしょうがないことなのだろうな…とも思う
    答えの出せない難しさがあって いろいろ考えさせられる内容なんだけど…ラストがなんだかちょっとアレ??って感じだったな

  • 「善良なサイコパス」か「邪悪な健常者」か各人が安楽死を真剣に考えるときが来ているのかもしれない。

  • 後味の悪さとか評価はいろいろわかれるが、私はやはり、面白かった。ただし、わかりにくいところも随所に見られたが。

  • 図書館で見つけた本。中身を確認せず、新刊のようだったので借りてみた。読み始めたら、意外と内容が重くて、途中、しんどく感じた。なので、
    だらだら読むのも嫌になって一気に読んだ。

    「死」って状態なんだな、と読みながら思った。
    「自死」という言葉はあるけど、「他死」という言葉はない。「他」からその状態になるように働きかけられることはほとんどありえないと考えられているからなのか。
    最近、よく目にした「自殺幇助」ということばはどう考えればいいんだろう。「殺」は「自殺」も「他殺」もある。

    自分が死を選ぶとき、とは、生を選ばないとき、かな。例えば、治る見込みのない病気になったとき、言い換えれば、積極的な治療を求めず、穏やかに自分の最期を迎えることを選ぶとき。
    日本では「安楽死」は法的に認められていないけれども、ヨーロッパでは「死ぬ権利」を合法化している国がいくつかある。

    この物語にでてくる家族の形がいびつなのか、あ、いや、いびつというといびつでない、という前提があっての言い方で、差異化しているだけか。
    家族だからお互いに分かり合えるとか分かり合えないとか思っていることを共有する場が乏しかっただけなのか…最後まで考えさせられた。

    真也の人生はこれでよかったのかな。

    それにしても、R.I.P という題名には驚いた。

  • うむ〜最近ニュースでも話題となる自殺幇助に関する内容で多岐の事情は異なるが精神的に生きる事への執着が薄れるのも病と考えるので有れば、医師による安楽死(尊厳死)とも関係も少なからず有ると思う。。
    ダイバシティ化が叫ばれる世の中に有り、虐め、SNSによる誹謗中傷も酷い世の中にあっては全否定出来ない難しい内容。
    読むにつれて3人の自殺希望者を殺害した村瀬真也の言い分は一貫性も有り理解も出来るのは筆者の力なのだろう。

    真也が3人(若い芸術家の男性、失恋に悩む女性、不治の病の男性)の自殺希望者とSNSで「希使天使」の名で知り合い希望に添い殺人と遺棄を行った裁判を通して話が進む。真也は兄一也、妹薫子の3人兄妹で母を自殺で無くした優しい性格を見て育った薫子が、裁判を通し真也を解ろうとするが殺人を犯すと言う一線が解らない。事件前から真也の主治医精神科医の白鳥に真也は「善良なサイコパス」である助言で少し救われるも理解出来ずに真也は死刑を求刑される。
    然し。。。この殺人の裏には「邪悪なサイコパス」で仮面を被った白鳥が自殺希望者と真也を結び付け糸を引いていた、その事実が判明した時は薫子は行方不明に真也は死刑執行で白鳥は海外に高跳びした状況で終える。
    この最後の裏のサスペンス的なストーリーは無くても確りとしたストーリーで成り立っておりちょっと残念な終え方だった。

  • 小説としてはあまり好みではないが、ノンフィクション風味として読むと大変興味深い本だった

    私自身、死は救済だと思っているところがあるので、始終薫子の意見には疑問を抱きつつ読み進めた

    亡くなった方の気持ちに寄り添うとしたら、今世から解放されてよかったねと思うけど
    亡くなった人が親しい人だった場合、諸手を挙げてよかったねとは思えない、それこそ薫子のように相談してくれたらよかったのにと思ってしまう気がする
    希死念慮と長年同居している私でさえそう思うのだから、通常の死を恐れる人たちにとっては自殺した人に寄り添うことなんてとてもじゃないができないのではないかと思った

    生きる自由があるのだから死ぬ自由もあればいいのに

    身体の自由が効かなくなる恐怖と戦えというのは生き残る側のエゴだなと
    いじめを苦にして亡くなる人に対して頑張って生きろというのは残酷以外の何物でもない
    私は優しくないので真也氏のように自殺願望者の方を今世から解き放ってあげることはできないけど
    考え方は真也氏に同調してしまった

    死ぬなというだけなら簡単だもんね、そもそも死にたいという感情を解決することは難しいし
    死にたいなら死なせてあげればいいと思う
    早く安楽死制度が充実すればいいのになと改めて思った

    薫子は何の問題を抱えていたんだろうか?サイコパスという言葉はあまり好きではないが(誰でもサイコパスの要素もっていると思うので)
    客観的に立てないというのも要素の一つなのではと思ったりした

    モヤモヤしながら終わってしまった…

  • 評価が難しい。一気に読ませる、とても思い内容、考えなければならない、哲学的要素、安楽死とは、且つ終盤に急にミステリー要素を入れてきてフィクション感溢れされる…医師だから書ける内容なんだろう。

    R. I. P.
    Rest in pease タイトル通り。

    次兄が3名の自殺願望者を殺し、裁判に。
    妹が調べて手記にしている、という体で話が進む。
    最後はあっけなく収束。

    あっけなさ過ぎて星1つ減な感じはあるが、1冊読みながら、自分ならどうする?と答えは決まっているもののなんとなくうじうじ考えてしまう、かなり引きづってしまう作品力に星5つ

    「それはもちろんいいでしょう。本人が望んでいるのだから」
    「本当の思いやりについて、もう少し真剣に考えてみてください」

    冒頭の2行が全てを体現しているかと。


    理屈ではそうだが、まるで人間味が感じられない。まるでAIの判断じゃないか。 82

    フロイトは死の欲動(タナトス)の存在を主張。
    生の欲動(エロス)と両方ある。 202

    それは二者択一ではなくてグラデーションなの。203

    ほんとうに相手のことを思いやるのいうのは、自分の想いを殺すことなんですね。 212

    自殺者の遺族は自分の悲しみと怒りばかり大きくて、亡くなった本人を更迭してあげる気持ちはもちえないのか。かわいそうに、辛かったんだねと、思いやってあげることはできないのか。 220

  • 久坂部氏の一貫した人間の尊厳を問う作品群は、どれも一読に値するものだが、これも終盤までは家族やDVの問題、行き過ぎた正義と傍観する偽善等を絡めて、深く読ませる内容で感じ入ったが、この終わり方のモヤモヤは本作を台無しにしている。別に答えのある問題ではないので明確なハッピーエンドもバッドエンドも期待するものではないが、それにしてもこのミステリータッチの終わり方は無いだろう。で評価3。

  • 帯にあるように、「これぞ久坂部羊の集大成」と言った言葉がぴったり。私自身、身近な人の自死を経験したことがあるが、自死を止めるのが人道的には正しいとされているけれど、果たしてそれはその人の気持ちに寄り添っているのか、それとも自分の理想や生きていてほしい、というエゴを突きつけているだけなのか、ということについて改めて考えさせられた。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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