汝、星のごとく

著者 :
  • 講談社
4.48
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本棚登録 : 32325
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065281499

作品紹介・あらすじ

その愛は、あまりにも切ない。

正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。
本屋大賞受賞作『流浪の月』著者の、心の奥深くに響く最高傑作。


ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。

風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。

ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。

感想・レビュー・書評

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  • 青埜櫂と井上暁海の距離と関係をどきどきしながら読み進めた。だからなのだろうか、17歳から32歳までの年月が、あっという間に流れた感じがした。そのくらい、揺れ動く2人の心境と背景を想像し、引き寄せられていく話であった。「汝、星のごとく」のタイトルの意味にも興味を寄せながら、読み進めた。

    瀬戸内の島という限定された狭い人間関係の環境や、親の離婚やその人間関係に振り回されながら、多感な高校生時代の話から始まる。一番身近な大人である親に振り回される環境にも、自分の道を探そうともがく高校生の2人だからこそ、分かり合えること、惹かれ合うことは自然な流れであると感じた。その一方で、不安定な生活とそれによる心の不安定さからくるどうすることもできないやるせなさを感じた。それぞれの夢があり、一緒にいたいと願う思いもあり、親から離れられない状況もあり、複雑に絡まっていく糸のように、解きほごすのは難しいなと感じた。このような中で、高校卒業後、櫂は夢であった漫画作家としての東京での生活が決まり、順調に時が流れていく。櫂と暁海のすれ違いが生じるには、条件や状況が揃い過ぎていた。さらに親との問題も重なっていく暁海。暁海は自分の夢より親との生活を優先させていく。暁海の心の中で、親とは離れられない思いと櫂とは離れたくない思いが天秤にかけられる。バランスをとるこは難しい。大切なものやことのどちらかを選ぶときの理由は何なのだろう。好きな気持ちに素直になれれば楽なのだろうけれど。そうもいかないのは親との関係だからなのかな。実際の距離が離れてしまっても繋がっていたい、そんな純粋な2人の気持ちが真っ直ぐに伝わってきて心地よい。でも、こうしたことが実際に起こったら、とても耐えられそうにない日々だとも想像する。距離が遠くても心の中にはいる、それは心底では温かいものにはなると思うけれど、やるせなくもあるのではないだろうか。その後、2人のそれぞれの生活や仕事が順調に積み重なると同時に、自然と心の距離が遠くなっていく。互いに気になる存在ではありながらも、すれ違っていく。会えない時間と距離がもどかしいが、仕方ないとも思う。そこから連絡さえもしなくなり、長い年月を経て、ついに暁海が自ら行動し再会をする2人。対面した2人が交わす言葉にぐっときて涙が出た。離れていた時を感じさせず、あっという間に分かり合う2人、そこに元々の思い合う気持ちの強さを感じた。

    ラストは悲しく切ないが、「汝、星のごとく」に込められた意味に胸が熱くなる。これから、またの機会に凪良ゆうさんの作品を読むことが楽しみになる作品となった。

    • アールグレイさん
      おはようございますm(._.)m
      アールグレイと申します!

      幾度かいいねを頂いていたようですね(*^_^*)
      ありがとう!失礼ながら本棚を...
      おはようございますm(._.)m
      アールグレイと申します!

      幾度かいいねを頂いていたようですね(*^_^*)
      ありがとう!失礼ながら本棚を拝見しました。私の好みの本棚で、これはフォローしようと思いました。
      もうひとつ、レビューをよく書いていることにも感激です。私はレビューUP→読了と考えています。以前に読んだ本は、内容を忘れたけれど本棚に置きたい!そのような本は★だけです。
      ヤンジュさんの本棚を参考にさせて頂きたいと思います!
      どうぞよろしくお願いします!
      (^O^)*:。~
      2023/08/13
    • ヤンジュさん
      アールグレイさん、おはようございます( ◠‿◠ )
      フォローありがとうございます!

      レビューを読ませていただき、その作品の魅力を想像するこ...
      アールグレイさん、おはようございます( ◠‿◠ )
      フォローありがとうございます!

      レビューを読ませていただき、その作品の魅力を想像することも楽しみにしています!

      その作品を読みたいなという思いが膨らみ
      読みたい作品が増えて
      嬉しい悩みとなっています。゚(゚^ω^゚)゚。
      よろしくお願いしますヽ(*´∀`*)ノ
      2023/08/13
  • あなたの今の人生は、あなた自身が選んだものでしょうか?

    どの服を着るか?どの店で昼食を摂るか?そして、次はどの本を読むか?私たちはおびただしい選択の繰り返しの中に毎日を生きています。コンビニでおにぎりの具を梅干しにするかこんぶにするか、そんな選択まで入れると、私たちは一体一日にどれだけの選択をしているのだろう、改めて考えると怖くなってもきます。そんな選択の結果は当然に、その先に続く未来の姿を変えていくものでもあります。おにぎりの具程度であれば、全く異なる未来が待っていたということも起こり得ないと思いますが、思った以上に些細な選択の結果が未来を変えていくものです。

    そして、そんな選択によって私たちは未来は大きく変化していきます。進学するか、就職するか、このレビューを読んでくださっているあなたが過去に辿ってきた、そんな選択の先には、一方であなたが辿らなかった未来もあったはずです。だからこそ、そんな選択の場において人は不安に苛まれます。それは、その選択の結果がもたらす未来を恐れる感情があるからです。また、そんな選択には、あなた以外の誰かの事情に配慮した選択を求められる場合もあったかもしれません。

    『人は群れで暮らす動物です。だからなにかに属さないと生きていけない』。

    私たちは私たちが人間であるが故に課される制限もあります。しかし、

    『誰かに遠慮して大事なことを諦めたら、あとで後悔するかもしれないわよ。そのとき、その誰かのせいにしてしまうかもしれない』。

    私たちは自分で選択することに怖れを感じ、だからこそ、その選択を誰かのせいにする、そんな感情もあるように思います。しかし、

    『誰もあなたの人生の責任を取ってくれない』。

    あなたの人生はあなたのものです。その責任を他の人に求めるのは間違っているのだと思います。それは、あなたの身近な人、親であっても同じことです。なかなかに選択の先の人生を生きていくのも大変なことだと思います。

    さて、ここに『自ら選んだ時点で、人はなんらかの責を負う』という先の人生を生きていく主人公の姿を描いた作品があります。『瀬戸内の小さな島』に暮らす高校生二人が主人公を務めるこの作品。片や『俺は東京へ行く。プロの漫画家になる。こんな暮らしと縁を切る』という選択をした一方で、片や家族を慮り『島に残る』という選択をした二人の主人公が描かれるこの作品。そしてそれは、そんな二人がそれぞれ歩むその先の未来に、『幸せになれなくてもいいのだ。ああ、ちがう。これがわたしの選んだ幸せなのだ』と語る主人公の姿を見る物語です。
    
    『魚が安いから漁港まできて』というスマホに表示されたメッセージに『めんどくさいからいやだ』と返すも『既読がつかず』諦めて港へと来たのは主人公の青埜櫂(あおの かい)、十七歳。『父親は俺が生まれてすぐ胃がんで死んだ』という『母子家庭』に育った櫂。そんな櫂の母親は『この島で唯一のスナックをやってい』ます。そんな店で出す食材として魚を調達する母親のことを『一時たりとも男なしでは生きられない女』だと思う櫂は、『物心ついてから常に男出入りが激しかった』今までを思い出します。そして、『今回も京都で知り合った男を追って、瀬戸内の小さな島へと』母子で移り住むことになりました。『早くここから解放されたい』と思う櫂。家に帰ってしばらくすると、ほどなくして『ほのかちゃんにあいたかった』と一人の男が入ってきました。『あーくん』と、息子から『一瞬で恋人へ』意識が向かった母親を見て、『今度こそ、長続きしてくれよ』と思いながら、櫂は自室へと入ってPCを開き『尚人から届いたメール』を開きます。『二年前、漫画や小説を投稿するサイトで知り合った』という久住尚人(くずみ なおと)とは、『原作と作画でコンビを組んで』漫画を作る間柄です。出版社へ投稿したことがきっかけで、編集者の植木と知り合い、アドバイスをもらいながら『青年誌の優秀賞を獲った』ことで、『連載枠の獲得を目指してい』る三人。『物語は夢ではなく、俺を現実から連れ去ってくれる必須の手段』と思う櫂。
    場面は変わり、『今夜もお父さんは帰ってこない』と恋人の元へと通う父親のことが島中に知れ渡った二年前。そしてついに『お父さんは家を出て行った』という中にメンタルクリニックへ通い出した母親のことを思うのは、もう一人の主人公である井上暁海(いのうえ あきみ)、十七歳。そんな暁海は、母親から『お父さんの様子、見てきて』と言われ、『今治で刺繍教室』をやっている女の住所のメモを渡されてしまいます。父親のことをさまざまに噂される日々の中に『島を愛する気持ちと、島から出ていきたい気持ち』が交錯もする暁海。そんな中、漁港で同じクラスの櫂と出会った暁海は、立ち話をする中に成り行きで櫂を『漁港前のバス停へと』連れて行き、一緒に今治行きのバスに乗りました。事情を説明すると『愛人んちに、ひとりで乗り込むのは根性いるわな』、『つきあってやるよ』という展開になった二人。そして、赴いた先で、愛人に見つかってしまい家にまで上げられてしまった二人。『あなたには申し訳ないと思ってる』と語る愛人の林瞳子(はやし とうこ)に、何も言えずじまいで家を後にした帰り道、櫂は『あれはあかん。手強すぎる』とつぶやきました。そんな櫂に『今日はありがとう』とお礼する暁海に、『この島には正しい家族しかおらんと思とった』と語る櫂。そして、いろんなことを語り合った二人。そして、家に帰りベッドに倒れ込んだ暁海は、『また、しゃべろうや』と語った櫂の姿を思い出します。『はよ脱獄したいわ』と島から出ることを願う櫂と、『島で生まれ育った』からこそ、愛着と『出ていきたい』気持ちの間で揺れ動く暁海という二人の主人公のその後の十五年の日々が描かれていきます。

    『わたしは愛する男のために人生を誤りたい』という内容紹介に取り上げられた本文中の強い言葉が印象的なこの作品。2020年10月刊行の「滅びの前のシャングリラ」以来の凪良ゆうさんの長編小説になります。元々BL小説を数多く手掛けられてこられた凪良さんのBL小説以外の作品は前作までで5作品。私はその内の三冊を既に読んでいましたが、極めて読みやすい文体の中に紡がれる”生”を感じる人の心理描写の鋭さに心を囚われてきました。残りの二作品も是非読みたいと思うものの、三冊ワンセットでしか読むことのできない私の読書パターンのせいもあって、新作の登場を心待ちにしてきました。もちろん、BL作品を読む選択もあったわけですが、BLっぽい作品は三浦しをんさん「月魚」しか読んだことがなく、レビューに自信がなかったこともあり、この作品の刊行を知って発売早々に入手しました。そんな経緯もあって発売日を心待ちにする気持ちの昂ぶりを久々に味わわせてくれたこの作品ですが、読み終えた今、まず言えるのは、この先余程の作品に巡り会えない限り、”2022年私のベスト本”が確定したということです。私のレビューを読んでくださっている方の中には、私がレビューの途中にこのようなことを書いたことは一度もないことはご存知かと思います。はい、この作品は、通常のレビューパターンを超えてまで私に傑作断定したくなる欲求を掻き立ててくれた作品になりました。

    では、そんなこの作品を三つの視点から見ていきたいと思います。まず一つ目は、舞台となった『瀬戸内の小さな島』の美しい描写の数々です。そんな島の『海岸線を自転車で走』る主人公の暁海が描かれるシーンです。

    『なににも遮られず島に届いた海風に髪が逆巻いて、額や頰を軽く叩かれる。一年を通して穏やかで明るいエメラルド色の海。ほのかに温かな日差しとまだ少し冷たい潮風。このままどこまでも走っていきたくなる』。

    文字を読んでいるはずなのに、海岸線を走る自転車、それに乗る主人公の姿が見事に浮かび上がるだけでなく、そこに風を感じ、光を感じ、そして潮風の匂いまで感じられる絶妙な描写に心が沸き立ちます。そんな描写の後、『島が嫌いなわけじゃない』という思いの中に、『生まれ育った島を愛する気持ちと、島から出ていきたい気持ち』という正反対の感情が『わたしの中で渦を巻いている』と書く凪良さん。風景の描写が暁海の心の描写に強い説得力を与えていきます。もう一箇所見てみましょう。西日が差す海岸に座って海を見る櫂と暁海という場面です。

    『太陽はもう水平線近くまで落下していた。海が静かに姿を変えてゆく。猛々しいほど煌めいていた海面は暗く沈み、まったりとしたうねりを見せはじめ、その下にとんでもない深さがあることをわたしたちに気づかせる』。

    そんな海を見て思わず『引きずり込まれそうや』、『怖いね』と会話する二人。海を見慣れているはずの暁海は、『島で生まれ育ったからこそ、海が怖い』と知っていると語ります。そして、そんな自然を人の世に例え、『世界に平穏はない。人生に嵐は避けられない』とまとめるこの場面。この先に、その時点では読者には予想もできない波瀾万丈の主人公たちの人生が描かれていくことを巧みに予言しています。

    ”今治の、舞台となったその島の、瀬戸内の海の美しさと素晴らしさを描き切ることができたという思いはあります”とおっしゃる凪良ゆうさん。これから読まれる方には、そんな凪良さんの絶品の自然描写の数々にも是非ご期待ください。

    次に二つ目は長年にわたってBL作品を執筆されてきた凪良さんがBL作品以外で触れられる『多様性が謳われる今でもゲイの恋愛は難しい』という先に見る彼と彼の物語です。誤解いただきたくないのは、あくまで一般文芸として書かれたこの作品では、いわゆるBL作品的なノリの延長線上の描写がなされるわけではありません。そんな彼と彼の物語を極めて冷静に描く凪良さんは、そんな関係性のあり方を主人公の心の声を通じてこんな風に語られます。

    『好きな相手と堂々と結ばれることが許されない国なんて出ていけばいい。国は俺たちのためにあるのであって、俺たちが国のためにあるわけじゃない』。

    この国では、まだ議論も進んでいない領域と思われる彼と彼の物語がどんな風に触れられていくのか、それも一つの注目点だと思いました。

    そして、三つ目は『オートクチュール刺繍』です。私が全く知らなかった領域の話題ですが、主人公の暁海がその世界に魅せられ、自身で手がけていく姿が描かれていきます。『漆黒の夜空を思わせる布に煌めくスワロフスキーを刺して模様を浮かび上がらせていく』という表現に既に魅了されますが、その作業工程をこんな風に描写する凪良さん。

    『繊細に、早く、正確に針を動かしているうちに自分という存在が薄れていく。少しずつ姿を現す美しいものに一体化していくようで、気づくと数時間が経っている』。

    刺繍に興味のない私にもそれがどんなもなのか是非手にしてみたいと思わせる繰り返しの描写が、刺繍というものへの興味をさらに掻き立てるこの表現。瀬戸内の雄大な自然描写と対になるかのように描かれる、机上の人の手による繊細な作品世界。この刺繍の描写もこの作品にはなくてはならないものだと思いました。

    そんな数々の描写が作品の魅力をより深くしていくこの作品ですが、一番の魅力は、やはり、凪良さんの心理描写の妙を感じる物語です。この作品で描かれる主人公の二人はそれぞれに家庭に問題を抱えていました。京都から島に越してきた櫂は、母子家庭で育ちましたが、その家庭を支えていくべき『母親は一時たりとも男なしでは生きられない女』であり、櫂がもの心ついてからも『常に男出入りが激しかった』と示されます。『父親がおらんのやから、ひとりで支えるなんて無理やん』とまるで他人事のように櫂のことも見るこの母親が見せる無責任な言動、行動の数々。一方で『お父さんに恋人がいる』という状況に当初は『鷹揚に笑って』いたものの、『今はもう一度も帰ってこない』という中に『メンタルクリニック』へと通うようになってしまった暁海の母親。『この島では些細なことすら秘密にはできない』という閉塞感のある島の生活の中で一人苦しむ母親は、櫂の母親とは全く異なる形で暁海の人生に影を落としていきます。『このままでは自分が娘の一生を食い潰してしまう、けれどどうしても出口が見えな』いと、娘のことを思いやる気持ちはあるものの、娘を慮るようには行動していけない母親の苦悩。物語は、櫂と暁海という二人の主人公それぞれが抱える母親の存在によって、子どもの人生が大きな影響を受けていく中に描かれていきます。親子という極めてプライベートな関係性は外からはなかなかに伺い知ることはできません。この作品では、全く異なる母親像を見せる中に、それぞれが違う苦悩を背負う子どもたち。そう、主人公たちが健気にそれぞれの母親を支えていく姿が描かれていきます。また、二人の関係の始まりがそれぞれの家庭が置かれた状況を垣間見ることから始まったこともあって、それぞれの苦悩を自分のものとしていく二人の姿も描かれます。お互いが近づけば近づくほどに、そんな親の苦悩を共有せざるを得ない現実の中に、それでも二人の関係性を深めていく二人は、そんな苦悩を共有する覚悟ができているとも言えます。そんな中に、

    『俺たちは親につかまれた手を離せない。振り払ってしまえれば楽なのに、それがわかっているのに、俺たちは、どうしようもなく、愛を欲している』。

    親と子の間のさまざまな関係性、そして、それぞれの想い。このレビューを読んでくださっているみなさんもそれぞれにそれぞれの家庭の事情を抱えて生きていると思います。『子供が親を養わなければいけない義務はありません』という『正論』を前に、親と子がどうあるべきなのか、この作品はなかなかに重い課題を投げかけているように感じました。

    そんな作者の凪良さんは”作品全体を通じて、私が一番重きをおいたのは、「人は生きたいように生きればいい」ということ”だとおっしゃいます。『正しさ』は大切だとしても、”本当に何かをしたいと考えたときに、他人が敷いたレールをかなぐり捨ててでも好きなことをやるべきで、それをみんなができるようになればいい”と続けられる凪良さん。そんなこの物語には、『俺は東京へ行く。プロの漫画家になる。こんな暮らしと縁を切る』という強い決意の元に、それを果たしていく櫂。その一方で、『お金は大事、仕事も大事、櫂も大事』と思うものの、いくら足掻いても『なににも手が届かない』、『わたしが誇れるものはなにもない』と、『島に残って』もがき苦しむ暁海の姿が描かれていきます。この見事なまでの対表現が描かれていく物語前半を見ると単純な明と暗がそこに描かれているように感じます。しかし、そこは凪良さんの抜群の構成力が物語をどんどん奥深くしていきます。それが、「流浪の月」でも見られた二人の主人公の視点の巧みな切り替えです。一点取り上げたいと思います。『瞳子さん経由で刺繡の仕事』をもらったことを暁海が櫂に話すという場面です。まず描かれるのは暁海視点です。そこでは、『刺繡で大きい注文をもらった』と説明する暁海は、『十点で八千円』という金額を告げると『材料費と手間考えたら利益出んやろ』と櫂に言われます。『プロじゃないし、利益より大事なものがあると思って』と言うも『金もらったらプロや』と言い切る櫂。しかし、次の瞬間『まあ、でも、せやな。趣味の延長で楽しんだらええか』と緊張を解く櫂はタブレットに目をやります。『好きなことでプロになって成功している櫂の前で、自分の甘さを浮き彫りにされたように感じた』という暁海は、一方でたいせつな話なのにタブレットに気を取られがちな櫂に失望もします。一方で、同じ場面が今度は櫂視点で語られます。『材料費と手間賃で報酬が飛んでいて、それはどうかと思った』という櫂の内心。『家計を支え』る暁海の状況を見て『会社を辞めること』ができないなら『趣味として楽しんだほうがいいと思ったが、暁海はプロになりたい』と言ったことを『甘い』と感じた櫂。プロになった櫂だからこそわかる『本気で目指すなら、捨てなくてはいけないものもある』という感情の一方で、『恋人の俺は暁海を応援したい』、その思いからタブレットを介して『右から左に暁海の話を通過させた』という櫂の本来の意図がわかります。登場人物に視点を交代させながら展開する物語は数多あります。この作品でも、基本は視点の交代により物語が進んでいくものですが、この場面のようにわざと同じシーンをダブらせることでそれぞれがその場面でお互いのことをどのように思っているかを見事に明らかにしていく、この凪良さんの手法は二人の感情の双方を読者が知ることができる分、二人がすれ違っていくことに何もできないもどかしさを読者の中に掻き立てます。その重ね方の絶妙さが凪良さんの作品の何よりもの魅力だと改めて思いました。

    そんな櫂と暁海の人生が対になるように描かれていく物語は、後半に入って劇的な様相を見せていきます。

    『いつになったら、あなたは自分の人生を生きるの?』

    そんな問いかけに答えを見せていく暁海。それは、凪良さんが大切にされた”人は生きたいように生きればいい”という問いへの答えを見せていくものでもありました。そこには、「流浪の月」で凪良さんが提示された『一度失敗した人間が挽回しづらい国ではあるよね』という視点も見せていきます。櫂と暁海のそれぞれがそれぞれの人生を見せていく物語。そこに十五年先の二人の姿を見せる結末が描かれていきます。

    『たくさんの人に出会い、傷つけ、傷つけられ、助け、助けられ、ようやく準備を整えた。自分が捨てていくものの価値をわかった上で、それでも自由に、自らの意志で、心のままに…』。

    そんな清々しい行動の先に展開していく物語の結末。生きることの自由さと不自由さの中に、それでも自らの幸せを自らの選択によって掴んでいく主人公たちの姿を見るこの作品。そこには、”人は生きたいように生きればいい”とおっしゃる凪良さんの凪良さんなりの答えが描かれていました。

    この作品には四つの章を挟むように〈プロローグ〉と〈エピローグ〉が置かれています。そんな〈エピローグ〉に読み進んだ読者は、そこに”えっ?えっ?”というまさかの驚きの感情を見ると思います。〈エピローグ〉のことなので、ネタバレを考えるとはっきり書くことは避けたいと思いますが、そこには”デ・ジャブ感”を感じる記述の中に、全く違う思いが読者自身の中に去来するという、まさかの物語が記されていました。そして、そんな読者は〈プロローグ〉を必ず読み返すことになると思います。全く同じものを見ているのにも関わらず、その背景を知ることで、人の心は正反対に揺れ動くということを読者に体感させる鮮やかな結末。これには、凄い!という言葉以外浮かびませんでした。そう、最初から最後まで、なんて良く考えられた作品なんだろう!、なんて良く構成された作品なんだろう!、そして、なんて素晴らしい作家さんなんだろう!”本屋大賞受賞作「流浪の月」著者の、心の奥深くに響く最高傑作”という宣伝文句が伊達ではない、と感じる深い、深い満足感の中に本を閉じました。

    『わたしはこれからどんな選択を繰り返していくのだろう』と『夕星』を見る暁海の姿が強く印象に残るこの作品。そんな物語は、『瀬戸内の小さな島』で17歳の青春を共に生きた主人公の櫂と暁海が、さまざまな苦悩の中にそれぞれの人生を生きていく姿が十五年にわたって描かれていました。瀬戸内の美しい自然を鮮やかに文字に写し取っていく凪良さんの見事な描写の数々にすっかり魅了されるこの作品。巧みな視点の切り替えと、同じシーンを重ねる構成によって、主人公二人の心の機微を余すことなく読者に伝えてくれるこの作品。そして、細やかな伏線の数々に凪良さんの確かな構成力を感じるこの作品。

    凪良さんらしく、極めて読みやすい物語の中に、佐藤春夫さんの「夕づつを見て」という詩からとったという「汝、星のごとく」という書名に込められた凪良さんの思いを味わい深く感じる絶品だと思いました。



    凪良ゆうさん、この作品、心に沁みました。凪良さんは、”登場人物になりきって書くタイプ”だとお聞きしました。物語を読み終えて、凪良さんのこの作品にかけられた熱い想いの中に囚われているのを感じます。こんなにも、こんなにも素晴らしい物語をありがとうございました!

    • ぱんちゃんさん
      さてさてさん
      返信ありがとうございます。
      こちらこそよろしくお願い致します。
      連続で読んでます。どれもいい作品過ぎて迷っちゃいますね
      さてさてさん
      返信ありがとうございます。
      こちらこそよろしくお願い致します。
      連続で読んでます。どれもいい作品過ぎて迷っちゃいますね
      2023/02/16
    • まことさん
      さてさてさん、こんにちは♪

      凪良ゆうさん、二度目の本屋大賞、よかったですね!
      さてさてさんの予想通りでしたね!
      おめでとうございます!
      発...
      さてさてさん、こんにちは♪

      凪良ゆうさん、二度目の本屋大賞、よかったですね!
      さてさてさんの予想通りでしたね!
      おめでとうございます!
      発売日初日に読まれて、予想通りの本屋大賞、さぞかし感激されていらっしゃるのではないかと、思っています。
      それにしても、さてさてさんの、いいね!得票数が凄いですね!
      こんな数字初めて見ました。
      また、受賞で、数が増えそうですね。
      それにしても、本当におめでとうございます!
      2023/04/12
    • さてさてさん
      まことさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      はい、凪良さん二度目の本屋大賞ですね。発売日に一気読みして長文レビューを書...
      まことさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      はい、凪良さん二度目の本屋大賞ですね。発売日に一気読みして長文レビューを書きましたので思い入れの深い作品です。年間に150冊くらい女性作家さんの小説ばかり読んでいる私ですが、この作品は読んでいる時から心の引っ張られようが違いました。あまりに密度の濃い内容に作者の凪良さんの鬼気迫る意気込みがひしひしと伝わってきました。小説は、そこで取り上げられる内容にもちろん引っ張られます。この作品が取り上げた内容について、あらすじだけからこういうの興味ないんで…という方もいるかもしれません。しかし、この作品は読むところが違うと思います。上記した通り、この作品の読み味は凪良さんの読者との真剣勝負、その鬼気迫るような筆致を読んで、そこに読書の醍醐味を感じる、これがこの作品の何よりもの魅力だと思います。すみません。なんだかレビューだけでなくて、コメントにまで気合いが入ってしまいましたが、この作品は本屋大賞を取るべくしてとった作品だと思います。
      ブクログに集う皆様に是非ともおすすめしたい傑作だと思います。

      なお、先週に↓で書いたブックリスト、本屋大賞の予想ですが、お陰様で第二位も当たりました。第三位まで全て当たったら本屋大賞評論家に転職しようと思っていましたが(笑)、そうは甘くなかったので、大人しく会社勤めを続けます(汗)
      https://booklog.jp/booklists/52311

      凪良ゆうさん、改めて本屋大賞受賞おめでとうございます!素晴らしい感動の時間をどうもありがとうございました!!
      2023/04/12
  • 流浪の月は個が抱える悩みを背負った男女の話だったが、本作は環境が生み出す悩みを背負った男女の話で、周りに翻弄される二人のすれ違いがとてももどかしく感じた。
    人生とはだれのためにあるのか。悩める読者の背中を押してくれる作品でもある。

  • もっと違う生き方があったんじゃないんだろうか。読み進めるほどにその思いが強くなった。

    もっと気持ちに素直になれば、そんなに悲しい選択をする必要なんてないのに。

    相棒と打ち解けた後の櫂の衝撃が絶望過ぎて打ちのめされた。

    • raindropsさん
      アールグレイさん、こんにちわ。
      何度かコメント頂いていましたので私も存じ上げておりました。
      「赤い月の香り」、調香師さんのお話なんですね。面...
      アールグレイさん、こんにちわ。
      何度かコメント頂いていましたので私も存じ上げておりました。
      「赤い月の香り」、調香師さんのお話なんですね。面白そうなので読みたいリストに入れさせてもらいます。
      また、面白い本があれば教えてください。
      2023/08/06
    • アールグレイさん
      raindropsさん♪
      返信ありがとうございます
      赤い月の香り、この本は続編なのでお読みになるのでしたら、透明な夜の香り、を先に読むことを...
      raindropsさん♪
      返信ありがとうございます
      赤い月の香り、この本は続編なのでお読みになるのでしたら、透明な夜の香り、を先に読むことをお薦めします。
      しっかり繋がっています。
      ぜひぜひ(^_^)/
      2023/08/06
    • raindropsさん
      そうなんてすね、ありがとうございます。透明な夜の香りから読んでみます。楽しみ。
      そうなんてすね、ありがとうございます。透明な夜の香りから読んでみます。楽しみ。
      2023/08/06
  • 途中から涙が溢れて止まらなくなってしまった。
    最後の最後まで、ボロボロと涙がとめどなく頬を伝って落ちていった。

    胸がいっぱいになり、苦しくて切なくて、でも同時に温かい気持ちになり、自分の中で辻褄の合わない複雑な感情が生まれた。


    恋愛小説はあまり読まない私。
    フォロワーの皆様の評価が半端なく高く、以前読んだ著者の作品も良かったことから新品で購入した。

    瀬戸内海に浮かぶ島。
    そこでは小さなニュースも娯楽とされてしまう。
    そんな中、親に問題のある2人が出会う。
    似たような苦しみを背負う彼等は次第に惹かれ合う。


    今治からしまなみ海道をドライブしたことがあった為、美しい島々の情景が浮かんできた。

    島ならではの苦しみ、仕事の成功や、成功に嫉妬する感情。
    彼等に起こるあらゆることが病んでいる私の胸を突き刺していく。
    女性視点の物語は、主人公が自分であるかのように感情移入してしまうほどのリアルな心理描写。

    とにかくすごい熱量の本だった。
    暫く胸が熱いままのような気がする。。。

    素晴らしい良書だ。。。。

    • aoi-soraさん
      bmakiさん
      熱いレビュー最高です
      ものすごく伝わってきます!
      しばらく抜け出せないですよね…
      bmakiさん
      熱いレビュー最高です
      ものすごく伝わってきます!
      しばらく抜け出せないですよね…
      2023/03/13
    • bmakiさん
      aoi-soraさん

      めちゃくちゃいい本でした。
      みなさん、良い本と書かれていて、かなり期待して読みましたが、全く期待は裏切られませ...
      aoi-soraさん

      めちゃくちゃいい本でした。
      みなさん、良い本と書かれていて、かなり期待して読みましたが、全く期待は裏切られませんでした。
      本当に素晴らしい。

      aoi-soraさんが感想に書かれていたように、単純な恋愛小説ではなくて、さまざまなな問題を取り上げている作品で、常に物語に動きがあって、全く飽きさせなかったです。

      凄い作家さんだなぁと思いました。
      暫く抜け出せないの、凄くわかります。
      物語にもっとずーーーーっと浸っていたくなりますね(^-^)
      2023/03/13
  • すごいなあ…とため息が出た。
    星5つでは足りない!!
    凪良ゆうさん、やっぱりすごい。流浪の月で、ファンになった作家さん。改めて凄さを思い知る。

    凪良ゆうさんの紡ぎ出す文章が、大好き過ぎて。
    主人公である暁海(あきみ)、櫂(かい)の、心理描写はするすると心に染み込むように、また、チクッと刺さったり、あるいはズシンと響いたりと、どんどん引き込まれてさすがだと感じた。
    情景描写は、細やかに私の五感を総動員して実際に目に映って広がってみえるのにも感動し続ける。
    凪良さん。どうしてこんな風に書けるのでしょう…!!

    ストーリーも、引き込まれる。
    主人公ふたりの母親が、それぞれ、いわゆる毒親。
    瀬戸内の綺麗な小さな島の中で、閉塞感ある生活を、苦しみもがきながら、送る二人の純愛の物語。
    そして単純な恋愛小説ではなくて、いろんな展開をみせながら、いろんなテーマが盛り込まれている。
    愛とは何か?
    家族の形とは何か?
    仕事を、持つ意味とは?
    自立とは?
    正しさとは?
    自由と、不自由については?
    ヤングケアラーとは?
    等々

    この物語の登場人物たちの言葉で、
    作者の伝えたい信念や、思いが、端々から刻み込まれているように感じさせられた。

    [わたしは愛する男のために人生を誤りたい]
    という本の帯の文章があった。
    読む前に謎だったこと。
    人生を誤りたいとはどういう事だろう??人生を誤ってしまった!というのならわかる。でも、自ら誤りたいって…。

    この謎を、探りながらストーリーをおった。
    子供の頃から
    正しくあることを、普通に考えながら生きてきた私は色々と驚きの展開が待っていた。
    そうか、そうきたかと、目からうろこだった。

    正しさとは誰が決めるのか。周囲の人にとっての正しさを自分にも、当てはめなければダメなのか。自分の人生を自分で選択し、選びとる事。そのために必要なこと。
    普通じゃ考えられないような選択や、生き方を、せざるおえなくなったとき、それでも良いよと、肯定できるか、どうか。

    色々と考えさせられた。

    主人公ふたりの周りに北原先生や、結ちゃん。瞳子さん。尚人くん。植木さん。絵理さんなどの登場人物も、良い人で良かった。
    そして居てくれて良かったな…と、思った。
    それは、主人公の二人は、彼らから教えられたり、支えられたり、助けられたりして救われたと思うから。
    そして、ひとつではない、愛の形というものが、それぞれの登場人物のなかにもあるなあと…とも、感じられて、よかった。
    ほんとうに読んで良かった!!

    装丁も、美しいスワロフスキーの写真の表紙。
    外すと、夕星(ゆうづつ)も見えて素敵。
    二人が愛した夕星。
    切なくも、美しい物語。

    たくさんのひとに読んで欲しいと思った本。


    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      ゆっきーさん、こんばんは!!
      コメントしていただきとても嬉しいです。是非とも、読んでみて下さいね-
      ゆっきーさん、こんばんは!!
      コメントしていただきとても嬉しいです。是非とも、読んでみて下さいね-
      2022/08/22
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      ゆっきーさんの、感想や、本棚を参考にして、私もこれからの読書をしていきたいと思っています。よろしくお願いします!!
      ゆっきーさんの、感想や、本棚を参考にして、私もこれからの読書をしていきたいと思っています。よろしくお願いします!!
      2022/08/22
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      和風よちゆきさん、こんばんは!!
      コメントありがとうございます。私も、よちゆきさんのレビューをみて、わたしの美しい庭、読みましたよ~。とても...
      和風よちゆきさん、こんばんは!!
      コメントありがとうございます。私も、よちゆきさんのレビューをみて、わたしの美しい庭、読みましたよ~。とても素敵な本でしたよね。ありがとうございました!
      2022/08/22
  • 2023年本屋大賞受賞作
    2022王様のブランチBOOK大賞
    キノベス!2023 第1位

    その愛は、あまりにも切ない。
    正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。

    な〜んてコピーで宣伝されてますね。
    読んでみましたがこのコピー通りの少し切ない物語でした。

    著者の凪良ゆうさんは『流浪の月』で2020年にも本屋大賞を受賞されています。今回で2回目の大賞受賞ですから快挙ですよね。もう大人気作家の地位を確たるものにされました。
    本屋大賞は他のどの文学賞よりも影響力が半端ないと感じますね。それはもうこのブクログの登録者数を見れば一目瞭然です。ちなみにブク友の皆さん、本屋大賞を2度受賞されてるのは今回の凪良さん以外にいるのかどうかご存知ですか?

    実はいるんですよ〜。

    そう。恩田さんです。恩田陸さんが2005年に『夜のピクニック』で、2017年に『蜜蜂と遠雷』にそれぞれ大賞を受賞されています。
    恩田さんでさえ2回目の受賞まで足かけ12年かかっていますが、凪良さんは3年ですからその凄さがわかります。

    私は普段、恋愛小説なんてほとんど読まないのですが、本屋大賞作品は今の小説のトレンドなんかを知るためにも読むことにしているんですよ。普段読まないジャンルなのでとても新鮮に感じました。アラフィフのおじさんが読んでも十分に堪能できる作品に仕上がってますよ。ジャンル的に読まず嫌いしている方にもオススメです。

    作中の舞台が風光明媚な瀬戸内の島なんですが私もルーツが瀬戸内海の小島なのでなんだか懐かしい感じがしました。

    ネタバレしてしまいそうなのであらすじは省きますが、紆余曲折を経て二人が再開するところは年甲斐もなく完全に入りこんでしまいました。

    3度目の本屋大賞受賞はあるのでしょうか。
    これからも凪良さんの作品に注目してみようと思います。
    では、また。

  • ストーリーは書かずに、感想のみ書きます。

    一部、軽くネタバレしているので、これから読まれる方はお気をつけください。






    最初は暁海が自分の母親の弱さゆえに、ヤングケアラーとして生きるしかなく、高校時代からの恋人で、どんどん有名になって成功していく櫂とすれ違うようになっていくところは、暗く可哀想な話でしかありませんでした。

    暁海が父の浮気相手で、事実婚している瞳子には「ーいつになったら、あなたは自分の人生を生きるの?」と言われます。

    狭い島の中でずっと二人のことを見ていた北原先生に暁海が「僕と結婚しませんか」と言われる場面では、ああ、これでこの作品に本当のハッピーエンドはなくなるのかと思いました。

    「子は子、親は親です。
    附属物のように考えると悲劇が起きます」
    by北原先生

    そして、まさかの場面展開。
    「過去は変えられないと言うけれど、
    未来によって上書きすることはできるようだ」
    by暁海

    櫂と暁海が3回目に見ようとした、花火の音が書いていないけれど「ヒュルルルルー、ポンッ」と打ち上げられて夜空に全開するのが見えた気がしました。

    確かに泣かされましたが、最後の場面はずるい、禁じ手だよ。こんな残酷できれいなラストはないよと思いました。

  • 哀しい物語でした。 
    胸が締め付けられます。
    二人の愛し合う魂が哀しくて哀しくて。
    私は恋愛小説はあまり好まないのですが、この物語はそういった類いの恋愛小説とは違う気がします。あくまでも個人の感想ですが。
    10代の頃に出会い、親に苦しめられているという共通点から強く引き寄せあった二人。共通点があるからこそ引き寄せあい求め合った二人だけれど、その共通点が二人の間を引き裂く。
    でもどうしても引き寄せあってしまう。どうしてもこの二人じゃなきゃダメなんだ。他の誰かではダメなんだ。魂がお互いを求め合っているんだ。哀しいほどにあなたじゃなきゃダメなんだ。
    読者はプロローグを読んでいるので、本編を読みながらなんとなくこの先の流れが見えているのです。複雑な気持ちで読み進めます。
    そして、エピローグになります。
    プロローグを読んだ時とまるで違う気持ちの自分がいます。でも哀しい気持ちは変わりません。
    胸が痛いです。

  • 『人に答えを求めるから苦しいのだ。
    自分がどうありたいかの選択権は、いつでも自分の手の中に在る。』

    生きていれば必ず訪れるいくつかの"岐路での選択"が、"人生を築く"ことを気づかせてくれる作品でした。

    "夢"と"現実"、高校卒業時に別々の選択をした男女のラブストーリー。
    プロローグで物語に強く引き込まれて、エピローグでは涙が止まりませんでした。
    ミュージカル映画"ラ・ラ・ランド"のような美しくも切ない世界観に圧倒されました。

    8月時点の"2022年マイベスト"の小説。
    凪良ゆうさんの小説は初読みでしたが、本作で大ファンになりました。
    さっそく、著者の代表作である"流浪の月"を購入したので、早く読みたいです!

    • なべさん
      こんばんは、アールグレイさん(^^)
      いいね!とコメントありがとうございます。

      "汝、星のごとく"は、衝撃的におもしろかったです!
      オスス...
      こんばんは、アールグレイさん(^^)
      いいね!とコメントありがとうございます。

      "汝、星のごとく"は、衝撃的におもしろかったです!
      オススメなので、ぜひ読んでみてください。
      おやすみなさい♪
      2022/08/22
    • 傍らに珈琲を。さん
      なべさん、こんにちはー!
      凪良さんの作品、涙が出ますよね
      愛おしい作品が増えていきます。

      とは言え、私の凪良ゆうさんデビューは遅くて、つい...
      なべさん、こんにちはー!
      凪良さんの作品、涙が出ますよね
      愛おしい作品が増えていきます。

      とは言え、私の凪良ゆうさんデビューは遅くて、つい最近「流浪の月」を読んだところでした。
      かなりグッときてしまい、「わたしの美しい庭」を続けて読んだのですが、これまた良かったー!

      当初「汝、星のごとく」は文庫になってから…なんて思っていたのですが我慢できず買ってきてしまいました(笑)
      積読本が多くてゆっくりになりますが、なべさんの感想を拝見して読むのが益々楽しみになりました!
      2022/10/14
    • なべさん
      傍らに珈琲を。さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      "汝、星のごとく"読むの楽しみですね。
      傍らに珈琲を。さんの感想を見るの...
      傍らに珈琲を。さん、こんにちは!
      コメントありがとうございます。

      "汝、星のごとく"読むの楽しみですね。
      傍らに珈琲を。さんの感想を見るの楽しみにしています。

      私も"わたしの美しい庭"を購入して、積読しているので読むのが楽しみです。

      これからもよろしくお願いします。
      2022/10/14
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著者プロフィール

1973年生まれ、京都市在住。2007年、BLジャンルの初著書が刊行され、デビュー。17年『神さまのビオトープ』を刊行し、高い支持を得る。19年『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で「本屋大賞」を受賞する。同作は、22年に実写映画化された。20年『滅びの前のシャングリラ』で、2年連続「本屋大賞」ノミネート。22年『汝、星のごとく』で、第168回「直木賞」候補、「2022王様のブランチBOOK大賞」「キノベス!2023」第1位に選ばれ、話題を呼ぶ。翌年、同作の続編にあたる『星を編む』を刊行した。

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