とんこつQ&A

著者 :
  • 講談社
3.71
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本棚登録 : 3331
感想 : 367
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065283967

作品紹介・あらすじ

真っ直ぐだから怖い、純粋だから切ない。あの人のこと、笑えますか。
“普通”の可笑しみから、私たちの真の姿と世界の深淵が顔を出す。

大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまでは――(「とんこつQ&A」)

姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが……(「嘘の道」)

人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録、待望の最新作品集!

感想・レビュー・書評

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  • 『むらさきのスカートの女』以来の今村夏子作品
    ٩꒰。•◡•。꒱۶’
    短編集のどの話も「ん?ここで終わるの?」っていう所で終わる
    この先の解釈はご自由に♡って感じで

    この作品に出て来る人って、初めは変な人!だと思うけれど、よく考えるとその辺に居てもおかしくない人達だったり、また初めは違和感なかった人が途中からあらぬ方向に言動がエスカレートしたりする

    この方の作品は、そういうあるかもしれない日常生活に敢えて着目して題材にしているから、妙だと感じてもついつい惹き込まれてしまう


    とんこつQ&A
    コミニュケーションが苦手な今川さんが、中華料理屋「とんこつ」でアルバイトを始める
    初めは彼女が気になったが、そのうち店の者達の言動がエスカレートしていき、店の者と従業員が妙な関係になっていく

    嘘の道
    天邪鬼の与田正は、いじめられっ子
    彼を指して父親が何気なく言った言葉「そのうち消える」の意味が、身近に降りかかる
    こういう事ってあり得る話かと

    良夫婦
    偽善者ぶる行動がエスカレート
    自己満の責任の取れない行動をする妻
    優しさを履き違えている旦那
    二人だけの世界なら『良夫婦』なのかもね

    冷たい大根の煮物
    若さゆえなのか性格なのかはわからないけれど、利用されているのに気づかない
    だからなのか、温かい空気が漂っている

    どれも「人の思わぬ素顔」(๑ᵕ⌓ᵕ̤)!に焦点を当てた作品でした

  • 「とんこつQ&A」その他三編の、短編集。

    「嘘の道」「良夫婦」について
    実際にありそうな事を淡々と綴られていて怖い。
    このどちらも…なぜだか、もはや、どこにも可笑みは感じられない感じの内容……。
    人間の心の弱さや、闇のような部分を感じる作品。

    「冷たい大根の煮物」について
    周りから忠告を受けていたことを気にしていたわたしが、結果的にどうなったか…という。
    これは実際にもありそうな感じもして、可笑しかった。

    「とんこつ Q &A」これが一番良かった。
    あらすじ。
    社会不適合タイプの主人公今川さん。ふ
    とんこつラーメンのない、とんこつという名の中華店のバイトをする。彼女は「いらっしゃいませ」すら、自分から言えない程の人だった。でも自分でマニュアルを(Q &A)作り、それを読むことなら出来ることに気がつき仕事をする。それは初めはメモに始まりやがてノートにして使っていく。そんな今川さんを店の大将や、その息子(坊っちゃん)は、温かく見守る。なぜか自分の言葉で話せないようなわたしをむしろ歓迎している位なのだ。
    そんな中、また一人、新たなバイトの女性を雇う。
    三十代半ばの女性。今川さん以上に「主体性」を持たないわたしに似たような、自分から何も言葉を言えないような人。また、この人も店の大将や坊っちゃんは、歓迎しているよう。一人増えたことで、皆の関係性は、どうなっていくのか…?という事を読み進めるお話。

    私は、以前読んだ「むらさきのスカートの女」や、「あひる」に通じるような部分を感じた。
    人が人を無意識のようにコントロールしていく怖さ。それから「身代わり」という関係性、その感覚の怖さが感じた部分。そして、ちょっと普通でない人たちの不気味感…
    この作品は仕事上からそれ以上の関係までエスカレートしていく突き抜けた展開の内容を描いていた。
    一気読みできる読みやすさはあるが、引っ掛かりざらつく気分が終始否めない。そして、淡々とした描写のなかに少しの可笑しみもちょこちょこと覗かせる。
    全体的には、ほのぼのしている描写だからこそかえって怖さを増す世界。

    そう、それから この「Q&A 」のところ。
    最後に改めてよくよくよ―く見てみて気がついたw
    そうだ、これ、これも今村夏子さんワールド…






    • かなさん
      チーニャさん、そう、図書館はホントいいですよね!
      これだけの本、すべて買うとかなったら
      お金いくらあっても足りないし、
      本の置き場所だ...
      チーニャさん、そう、図書館はホントいいですよね!
      これだけの本、すべて買うとかなったら
      お金いくらあっても足りないし、
      本の置き場所だって困るしぃ(汗)
      うちから一番近い図書館は、そんなに利用する人がいないけど…
      それなりに読みたい本はそろえてくれているので
      週末は図書館に通ってます!

      予約して待ちが多かったとしても10人くらいかな…
      でも2~3人待ちくらいが通常かな、
      でも娘の近くの図書館では200人待ちなんて作品もあるみたい!
      信じられません(>_<)
      2022/12/10
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      かなさん、おはようございます(^^)
      寝てしまいスミマセン!
      200人待ちですか、凄いですね-!
      それだと借りられるのがいつになるか…忘れた...
      かなさん、おはようございます(^^)
      寝てしまいスミマセン!
      200人待ちですか、凄いですね-!
      それだと借りられるのがいつになるか…忘れた頃になるでしょうね(笑)

      夕べ、かなさんの本棚の方でオススメ下さった今村夏子さんの本。
      もう少ししてから読みますね~
      ごめんなさいね。すでに何冊か借りてしまってあるのがあるので、また、しばらくお待ちくだされば幸いです。ありがとうございます。
      では、また、また~(^^)
      2022/12/11
    • かなさん
      チーニャさん、おはようございます!
      そうなんです…200人待ちなんて聞くと
      お金もないのに、買った方がいいってなっちゃうと、
      娘も嘆い...
      チーニャさん、おはようございます!
      そうなんです…200人待ちなんて聞くと
      お金もないのに、買った方がいいってなっちゃうと、
      娘も嘆いています(汗)

      私がおすすめした本はいつでも、ホント急がずに…
      チーニャさんの読みたい本、
      今借りられている本を優先してくださいね!
      楽しんで読書しましょう(^^)
      2022/12/11
  • 今村ワールド全開笑
    中でも小説タイトルにもなっている、とんこつQAは設定も登場人物も狂いすぎていて、今村さん好きとしてはニヤニヤが止まらなかった笑
    読み終えたとき、かわいい装丁が、妙に毒々しく見える。

  • 4作品の短編からなる作品。
    やっぱり今村夏子さんの作品はもれなく面白かった。なんなんだいったい。表紙も可愛いすぎ。

    とんこつQ&A

     「とんこつ」という名前の中華料理店で働きだしたわたしと、その店主の大将と大将の息子、後に入ってくるバイトの『丘崎たま美』の4人からなる、とんこつでの日常を描く。誰がずれてる人なのか是非味わってみて下さい。そんなことある?どんだけ?(笑)ってツッコミどころ満載。

    嘘の道

     主にオオカミ少年ばりに「嘘つき」とみなされるようになった与田正と、同じクラスだった姉、弟の僕からなる昔の思い出。思い出なんて書いたら甘酸っぱそうだが、もちろんそんなはずもなくヒヤッとさせられる。

    良夫婦

     タムと呼ぶ小学生の少年と、タムが通う小学校から徒歩25分のところに住む土橋友加里とその夫からなるお話。良かれと思ってやったことがどんどん歪な形になって崩れていく。タムの自由奔放さに、図々しさに子供ってあるよね、こんなとこ。とあるあるを思いながら読んだ。良夫婦とのタイトルですが実際は…?

    冷たい大根の煮物

     主にプラスチック部品工場で働く木野と、同じ工場だが違う部署で働く芝山さんからなるお話。芝山さんは果たして良い人なのか、悪意ある人なのか。色んな捉え方で楽しめる物語。私は、木野を利用するだけ利用してポイ捨てした女と感じたけど(笑)ラストを読むとそうとばかりも言えない余韻があって、好きだった。

     余談ですが、私の大好きな「こちらあみ子」が田舎すぎて(?)上映されてなくて悲しすぎる…
    面白いですか?ですよね、きっと。観たいよー。


     

    • たけさん
      おはようございまーす。

      「とんこつQ&A」ってタイトルから、一筋縄でいかなさがそこはかとなく漂っていて気になりますね。
      チョコチョコさんの...
      おはようございまーす。

      「とんこつQ&A」ってタイトルから、一筋縄でいかなさがそこはかとなく漂っていて気になりますね。
      チョコチョコさんのレビュー拝見してますます気になる本になりました。

      「こちらあみ子」観られるといいですね。
      原作まだ読んでいないんですが、こちらも気になっています。
      2022/08/08
    • チョコチョコさん
      たけさんへ

      おはようございます♪

      今村夏子さんは、本当にちょっとズレてる人を描くのが上手で、ヒヤッとさせられて、クスッともさせてくれて、...
      たけさんへ

      おはようございます♪

      今村夏子さんは、本当にちょっとズレてる人を描くのが上手で、ヒヤッとさせられて、クスッともさせてくれて、何より読後色んな捉え方ができる書かれ方をするので、読むのがいつも楽しみな作家さんの1人です。そして読まれた方のレビューまで楽しめます。色んな感想で溢れるから。

      そして、これを投稿して、どっか上映しないかなぁ〜と調べたら、ちょっと遠い映画館でしたが一つだけ上映してるということで、観に行ってきましたー。
      あみ子を演じられた女の子が、もう思い描いていた通りのあみ子でした。良かったー。

      とんこつQ&Aもおすすめですが、デビュー作でこちらあみ子を書いたっていうのがもう震えます。ぜひ読んでみてください。
      2022/08/08
  • 4つの短篇集。

    「とんこつQ&A」
    大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店で働き始めたわたし。
    何も出来ず、声も出せず、突っ立ったままなのに辞めさせることなく、労りのことばをくれる大将とぼっちゃん。
    メモを読むことで声を出せるとわかってから問答集を作り、やっと仕事ができるようになるのだが、別の女を雇ってから2人の関心が彼女に向くようになり…

    こんなことが、現実的ではない、あるはずないと思ってしまうのにこういうこともあるのか…と不思議な気持ちになる。
    では、世間でいう“普通”とは何を基準にしてるのかってことになるわけで。
    すべてを否定できない、ということだなと納得してしまう。
    何ともなぁ…という感じである。
    つまりは、これが今村夏子ワールドなのだろう。

    他「嘘の道」「良夫婦」「冷たい大根の煮物」
    どれも取り返しのつかない刹那を淡々と描いている。

  • ラーメン好きにはそそられるタイトルですね。

    意外にも、こってりではなくあっさりいただけました。でもちょっとスパイスが効いてましたね。

    想像、思い込み、決めつけ。
    良い方に裏切られるのは悪くないのだけど、ほどほどにしないと後悔になることもしばしば。
    人を傷つける武器にならぬよう気を付けるべし。

    4つの短編作品、なんとなくそんなことが感じ取れました。

  • 初出は、「群像」2020年7月号~2021年12月号で、そのまま発表順に掲載された、四つの中短篇は、これまでの不穏さも含ませつつ、更に、人間の見えざる悪意に踏み込んでいるような、問題提起をさり気なくしている感じが、逆に恐怖感を覚えるという・・特に、真ん中の二篇は、最早笑えない領域に達したのかもしれないが、それは、今村夏子さんが本気で訴えたい思いの裏返しとも、感じられました。


    それぞれの物語で気になったことを、少し…

    「とんこつQ&A」
    『むらさきのスカートの女』を彷彿とさせるような、他人の中に自分自身を見出した女性の、その好きな想いと嫉妬心は紙一重であるとともに、実は、相似性があるのではないかと思えた事に、奇妙な爽やかさを感じられたが、終盤の、現実の世界を離れた展開は、いつも通りの安定感で怖すぎる。

    「嘘の道」
    実際に、こういう、いじめ対策しかしていないのに、やるべき事はやったとか、学校側が平気で弁解しそうな、そんなリアル感に、現在のいじめ問題の一つの縮図を見た思いがしたが、ここでの問題は、また別のところにあり、幻想に対して現実感を作り上げようとする、その人間の悪意の無感覚さが、客観的視点で見ている私からしたら、とても怖く、そしてやるせない。

    「良夫婦」
    最も笑えなかった作品がこれで、『罪の意識』という言葉が、この人の頭の中の辞書には載っていないのかと、思わず、心配してしまうが、当の本人達が全く意に介さずにいるところは、恐怖というものを通り越して、哀れであり、タイトルの言葉を実感しているのは、おそらく本人達だけなんだろうな。
    私としては、是非、学校の道徳の教材に採用して欲しいと、強く願いたい。

    「冷たい大根の煮物」
    人間とは、善人でもあり、悪人でもあるし、そのどちらでもない、不可思議な存在ではあるが、その結果が、決して悪くなるとは限らないといった、お話で、不穏な世界においても、未来は変えられるのかもしれない、そんな希望を私に見せてくれた。

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      たださん、こんばんは!
      こちらこそ、ありがとうございます\(^-^)/
      そうなんですね。たださんにも
      そういう事、あるんですね…。
      私は結構...
      たださん、こんばんは!
      こちらこそ、ありがとうございます\(^-^)/
      そうなんですね。たださんにも
      そういう事、あるんですね…。
      私は結構、いつまでもモヤモヤしてしまい、次の本になかなか、いけなくなったりしがちなので―(汗)
      今回はたださんに、助けてもらいました(>.<)y-~
      なるほど…わかりました。
      ありがとうございます!

      それから村田さんの「信仰」ですね。読みました~。難しく感じるところもありましたが、読み終わってみると面白いなぁと感じました。「コンビニ人間」も好きだったのですが、「信仰」も良かったです♪
      これから村田さん読んでいきたいと思うので今度、図書館行くときには「生命式」ですね~。
      おすすめありがとうございます。
      楽しみです(*´▽`*)
      2023/01/16
    • たださん
      チーニャ、ピーナッツが好きさん、こんばんは。

      「信仰」、読み終わったのですね。好印象のようで良かったです(^^)
      チーニャ、ピーナッツが好きさん、こんばんは。

      「信仰」、読み終わったのですね。好印象のようで良かったです(^^)
      2023/01/17
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      たださん、こんばんは!!
      ⭐五つにしようかな?と、
      とても迷うくらいとても好きな本だと思いました―
      ありがとうございました(*´▽`*)
      たださん、こんばんは!!
      ⭐五つにしようかな?と、
      とても迷うくらいとても好きな本だと思いました―
      ありがとうございました(*´▽`*)
      2023/01/17
  • 今村夏子ワールド全開!
    少し不思議でおかしな人たちの日常が描かれる短編集。
    どの話もごく普通の語り口から淡々と物語は始まるが、少しずつ話がズレていき、予想を遥かに超える展開に。

    特に表題作『とんこつQ&A』が印象に残った。
    大将とぼっちゃんの中料理店で働き始めた主人公。
    挨拶の言葉が書かれた紙を見ないと挨拶もできない主人公とそれを温かく見守る大将とぼっちゃん。
    そこに新たな従業員が加わり物語は思わぬ展開へ…。
    初めは主人公が変わっているのかと思ったがそうじゃなかった。
    大将もぼっちゃんも、新たな従業員も、…いや私たちもみんな変わっているのかもしれない。

    普通のようでいてズレている。
    このズレている感覚がゾワゾワさせる。
    見方によって"普通"が変わってくるのが面白い。

    こういうお話を書く今村夏子さんって、一体どんな人物なんだろう。
    とても気になった。
    他の作品も読んでいきたい。

    • 松子さん
      ひろ、こちらにコメントごめんね!
      どろんこハリー読んだよっ
      すっごく可愛くて笑っちゃって
      こんな絵本もあるんだなぁってとっても感動したの!素...
      ひろ、こちらにコメントごめんね!
      どろんこハリー読んだよっ
      すっごく可愛くて笑っちゃって
      こんな絵本もあるんだなぁってとっても感動したの!素敵な思い出の絵本教えてくれて、本当にありがとう♡新しい世界が広がった(≧∀≦)
      2023/03/12
    • ひろさん
      早速読んでくれたの?!嬉しいっ✩.*˚
      そうそう!可愛くって癒されるの( *ˊᵕˋ)♡
      大人になって読む絵本もいいよね♪
      英語版を読んだのか...
      早速読んでくれたの?!嬉しいっ✩.*˚
      そうそう!可愛くって癒されるの( *ˊᵕˋ)♡
      大人になって読む絵本もいいよね♪
      英語版を読んだのかな?原文をそのまま読めるって素敵だなぁっ♬.*゚
      こちらこそありがとね~(*´˘`*)
      2023/03/12
  • 大好きな今村夏子さんの新作、本屋で見つけてソッコーで購入、読了。
    帯を読んで、前作からもう2年経ったのか…とか感慨深く思ったり…

    ふおーーー、こいつは面白いいいぃぃぃぃぃぃーーー( ̄∇ ̄)

    個人的には、今村夏子さん作品の中で歴代No. 1かなーと思うぐらい素晴らしかったです。
    すでに何作品も出して芥川賞も獲っているのに、未だ過去作を上回る作品を出し続けるって、すげぇなぁと…

    圧倒的に衝撃だったのは3作目の「良夫婦」ですね。
    コレはもう…展開がそれはそれはヤバい…( ´∀`)

    「良夫婦」っていうタイトルからすでに醸し出される不穏さ…そして、最初はそう見えた夫婦の少しずつ見えてくる綻び…道徳的に明らかに誤ったことをしてしまうにも関わらず、でも最終的に外から見たら未だ「良夫婦」に見えているという事実…これからもずっと省みることなく人を傷つけながら生きて行くんだろうな…という、この恐怖感…

    途中で様々な過程程があるのにも関わらず、入口+出口が「理想的な良夫婦」という印象に統一されて描かれているところ(つまりこれからも変わらず続いていくよ)が、もうめちゃくちゃ秀逸だなぁと。

    そしてそこだけに留まらずに、「こういったことって実は大なり小なり普通の家庭でもあるんじゃないの?」というのをうっすらと読者に対して暗示してくる感じが、合わせてエグいなと(笑)
    他人を陥れていながらも自分達の罪には甘くて、まるでそれが無かったかのように無邪気に生きていく…それってあなたにも思い当たる節あるんじゃないの?と、他人事じゃないんじゃないの?と、そんなことを問いただされているような気持ちになりました。

    それにしても、今村夏子さんは本当に天才ですね…
    The文学だなぁ…(´∀`=)

    <印象に残った言葉>
    ・というわけで、わたしはこれからもずっと「とんこつ」にいる。(P78)

    ・予想もしなかったその答えに、友加里は一瞬目を丸くしらその後声を上げて笑いだした。「そうなのー?」「そうだよ」「ほんとにー?」(P179)

    ・明日一緒に隙間風防止テープを買いに行こう。(P188)

    <内容(「Amazon」より)>
    真っ直ぐだから怖い、純粋だから切ない。あの人のこと、笑えますか。
“普通”の可笑しみから、私たちの真の姿と世界の深淵が顔を出す。

大将とぼっちゃんが切り盛りする中華料理店とんこつで働き始めた「わたし」。「いらっしゃいませ」を言えるようになり、居場所を見つけたはずだった。あの女が新たに雇われるまでは――(「とんこつQ&A」)

姉の同級生には、とんでもない嘘つき少年がいた。父いわく、そういう奴はそのうち消えていなくなってしまうらしいが……(「嘘の道」)

人間の取り返しのつかない刹那を描いた4篇を収録、待望の最新作品集!

  • 怖面白いよ今村さんの最新短編集!
    ほんとは敦煌と言う名の大衆中華食堂に雇い拾われた喋り苦手で不器用すぎる女性の話「とんこつQ&A」 
    子ども時代に嘘つきとみんなから揶揄されていた男児を同調して噂していた姉弟の話「嘘の道」
    見知らぬ子どもへの思い入れが強い女性と旦那の話「良夫婦」 
    職場で好ましからざる噂のある同僚パートさんに半信半疑ながら付き合ううちに信じそうになる女性の話「冷たい大根の煮物」
    の四つですが、いずれもいいお話やなぁ!と思えば実はすごくシリアスなブラックユーモアなお話のてんこ盛りなのでした笑
    私的には四番目の「冷たい大根の煮物」がとても良かったです。
    裏の怖さをぜひ味わってみてくださいね 推し です♪

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

今村夏子の作品

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