ネット右翼になった父 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 769
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065308899

作品紹介・あらすじ

ヘイトスラングを口にする父
テレビの報道番組に毒づき続ける父
右傾したYouTubeチャンネルを垂れ流す父

老いて右傾化した父と、子どもたちの分断
「現代の家族病」に融和の道はあるか?

ルポライターの長男が挑んだ、家族再生の道程!

<本書の内容>
社会的弱者に自己責任論をかざし、
嫌韓嫌中ワードを使うようになった父。
息子は言葉を失い、心を閉ざしてしまう。

父はいつから、なぜ、ネット右翼になってしまったのか? 
父は本当にネット右翼だったのか?
そもそもネトウヨの定義とは何か? 保守とは何か?

対話の回復を拒んだまま、
末期がんの父を看取ってしまった息子は、苦悩し、煩悶する。
父と家族の間にできた分断は不可避だったのか? 
解消は不可能なのか?

コミュニケーション不全に陥った親子に贈る、
失望と落胆、のち愛と希望の家族論!

感想・レビュー・書評

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  • おとん、本当にごめんなさい。そして本当におとん、ありがとうね。

    本書の最後の一文である

    ということはつまり本気のでこピンを食らったとしても、一言も漏らすことなく耐えねばならんほどのネタバレということである

    「父がネット右翼になった」と感じてから、この最後の一文に辿り着く過程が本書の中身ということになるわけだが、素晴らしかった、面白かった、そして非常に考えさせられた

    『ネット右翼』なので、完全に政治信条の本だと思ったら、家族の本だった
    家族の分断を回避するための本だった
    そして家族という最小単位の分断を回避することで社会の分断を回避するための本だった

    「当たり」の本だった


    ところで12月は珍しくノンフィクションを読んだ月だった
    控えているノンフィクションが数冊あるので年が明けての1月も引き続きノンフィクションを読むことになりそう

    何しろ1冊読むとブクログAIが、ノンフィクションばかり勧めてきやがるわけだ
    しかも過去にその本を面白いと思った「人」が面白いと思った本を抽出して勧めてきやがるわけだから、めっちゃストライクなわけだ
    好みが似てる「人」なわけだからな
    で、それをほいほい読む
    するとまたそこからストライクなやーつを勧めてくる
    で、また読む
    で、またいいところをついてくる

    Σ(゚Д゚)

    私はこれを「ブクログAIスパイラル」と名付けました

    そして今まさに「ブクログAIスパイラル」中でございます

    相変わらず共感しかないレビューやな

    • 土瓶さん
      みんみんさん…………。

      ドン( ゚д゚)マイ
      みんみんさん…………。

      ドン( ゚д゚)マイ
      2023/12/25
    • 1Q84O1さん
      普通の小説しか勧められてない…
      なんか悔しい…
      皆さんみたいに謎の本を勧めてこいやブクログAI!(# ゚Д゚)
      普通の小説しか勧められてない…
      なんか悔しい…
      皆さんみたいに謎の本を勧めてこいやブクログAI!(# ゚Д゚)
      2023/12/26
    • ひまわりめろんさん
      さすが、みんみんや…(^o^;)
      さすが、みんみんや…(^o^;)
      2023/12/26
  • 普段あまり触れてこなかったジャンルなので、自分自身には価値ある読書時間となった。ずっと好きになれなかった父、でも
    自分にとって間違いなく、大事な人であった父。父の亡き後、晩年、ネット右翼化した父の墓を暴き、言わばブラックボックスに踏み込む息子である著者の葛藤の記録。
    村上春樹の猫を棄てるを読んだ時にも感じた、父へのバイアスが解ける時、その邂逅。

  • 正直、どう評価すればいいのか分からない本。

    著者が無自覚に保守差別をしているので(パヨクやナマポは蔑称と過敏に反応する一方で、ネトウヨやなどのヘイトスラングは平気で本文中に使用する、など)、読みながら「ネトウヨ批判をするおまえも逆ベクトルの同じ穴のムジナやで」とツッコまざるを得なかった。
    おそらく、ご本人は、自称するリベラル寄り中道ではなく、かなりエッジのきいたリベラルだと思われる。
    ミソジニーへの反発、生活保護受給者など弱者への無理解を嘆くくだりなども頻繁にあるし。

    その著者が、亡くなった父親が晩年「月刊Hanada」や「will」を読み、中韓批判の動画を見、ネットスラングを口にしていたことへの嫌悪を書き綴ることから、本書は始まる。

    で、父親は本当に右翼的思想を持っていたのか?と検証が始まる。
    ここは、かなり読みごたえがあった。
    自分の母や姉、父の友人や元同僚などとの対話、そして過去の思い出から、長い長い葛藤と思考のすえ、父親は右翼ではなかった、むしろ弱者や女性に理解があったのだと結論づけている。
    ただ、右翼ではなかったと信じたい、という願望のフィルターがかかっていることは明らかで、やや強引な解釈だなぁとは思った。

    後半は、父の生前にこうした検証が自分の中でされていれば、共通点を通してもっと分かり合えたのではないか?という反省が描かれる。
    興味のあるもの、知的好奇心、日々の生活に対する姿勢など、親子として似通った部分があったことに、著者はこのとき気づいている。
    また、母に冷たいと思っていた父の態度が母本人からしたらそうではなかったこと、父への過大評価やおそれが自己の中にあって、子供の頃から心を開けなかったことなどにも触れている。

    結論として、決定的に合わないと思っている親子でも分かりあえるはずだ、との旨を述べている。
    ただ、これは彼の父親が亡くなっているから言える机上の空論であることは否めない。
    それを、いま分断を感じているであろう読者に「溝は埋められる」と言うのはどうだろう?と思った。
    死人相手の一方的な納得感と、相手があっての対話は全然ちがうものなのだから。

    ってことで、すごく興味深かったけど、ツッコミどころ満載の本でした。
    だけど、思想による家族の分断に悩む人の助けにはなるかもしれない。あくまでも「かも」だけど。
    読んでいて面白かったのは確か。

  • 読み始めから面白い!と確信。
    …確信したのだが、最後に近くなると、そこまでこちら側が「降りて」行かねばならないのかな、と思ってしまった。
    作者より「ネトウヨ」嫌いでミサンドリーなんだろう、私は。

    家族だから、理解しあえる糸口はあるはず。たしかに。それを怠って分断したまま家族が死んでしまうのは痛恨の極みだ。そこは重々わかる。
    だが、「ネトウヨ」的発言をする父親を理解するのに、ここまで自分の至らなさを反省しなくてはいけないんだろうか?父親の「罪」と自分の「罪」は同等なのだろうか?そんなにこちらが頑張っていい人にならなければならないのかな。

    最後の「相手の等身大の姿」を見失わないこと、というくだりは全面賛成。そこは肝に銘じようと思う。それが分断を乗り越える唯一の方法だと思う。

  • 私は2016年秋に鈴木大介さんの『脳が壊れた』に
    第一回凪紗賞を授与しています。
    たくさんの人に読んでほしいと思ってもうけましたが
    ただここに書いただけで、
    大介さんに何かをしたわけではありません。
    (そしてその後2-3回賞を続けた気がするのですが
    面倒になって自然消滅)

    そのくらいその本が良かったということでしょう。
    鈴木大介さんの闘病記でした。
    ご自身が脳梗塞にならなければ書けない本でした。

    そして今回は実のお父様がネット右翼になったと
    これまた事実をもとにして書いた本です。

    私は、ネット右翼には本やネットでまれに出会いますが
    直接関わることはありません。
    だから興味を持って読み始めました。

    結果としては、お父さんにはこういうった背景があった、
    大介さん側にも(あれこれ思う)原因があった
    大介さんはどうすればよかったか
    同じような立場の人へのアドバイス
    といったところでしょうか。

    私個人としては、もう父はいませんし
    ずいぶん呑んで語り合ったから(内容はほとんど忘れているが)悔いはありません。
    親孝行な私。

    もしお父さんとの分断を感じて
    何とかしたいと思っているかたがいたら
    読んでみたら良いかと思います。

  • 父の葬儀に出た筆者は何故か無に近い心境であった。教養ある父だったはずが晩年はヘイトスラングを繰り返していたからだ。なぜ右傾化したのか?家族親戚友人から聞いた父の姿とは?実像に迫る事は出来るのか? 家族再生の物語でありとても刺さる内容です。おすすめ本。

  • 私の父はネット右翼ではないと思いますし、右翼ですらないと思いますが、
    父と私の関係は近いものを感じます。
    分断を解消したほうがよいのはその通りだとは思うんですけどね、
    死んでるからそう言えるのであろうと思いますよ。
    生きていると難しいです。
    相手が生きているとあちらの思い込みも存在しているわけで、私には上手に意思疎通ができるとは思えませんね。
    ただ、心には留めておきます。チャンスがあったら挑戦してみようかな。
    チャンスはないかもしれませんが。

  • 実家から帰る新幹線で読む本を電車の待ち時間に探していたら、先日Voicyで紹介されていたこちらを発見したので手に取った。
    と、いうことで、買いたてホヤホヤのこの本を
    新幹線待ちのホーム、
    わりと軽い気持ちで読み始めた、ら…、

    あかん、
    コレ、泣いてしまうやつや…。

    著者のお父さまが亡くなる病床のシーンから始まるんだけど、ちょうどね、著者の方とわたしは世代が近いのよ。
    で、状況的には、ついさっき駅まで送ってくれた父を、なんだかんだで思い出しちゃうのよ。

    外で読むのは完全に失敗でした。
    と、いうか絶対今この状況で読んだらダメなヤツだった。

    でもやっぱり気になるので、
    続きは少し落ち着いてから車内で。

    女性や子供の貧困などをテーマにルポを書いているという著者の立場で読み進めると、お父さまの変節、このケースなら確かに「ああ、おとん、右傾化しちゃったな」「この人ちょっと無理だな」って感じてしまうのも頷ける。
    ただ、どちらかと言えばちょっと右ぎみなわたしからすると、「え、ここでこんな風に書いちゃう?」「むしろあなたのバイアスが酷くない?」て思うところもあって、4章ぐらいまでは、釈然としない箇所が多々あった。
    特に、ご自身でも書いていらっしゃるが、お父さまがお亡くなりになった直後に実際にwebメディアに寄稿した文章は、怒りと悲しみとやるせなさに任せたかなり一方的な内容になっているように感じて、率直に読むのがしんどかった。

    さて、一端は右傾化してしまった父の死にあたって結構しんどい決めつけで父との分断、その原因を論じたものの、そのままの結論ではどうにも納得のいかなかった著者は、家族や親族、父の友人を巻き込みながらこの問題をときほぐしていく。

    父をネット右翼にしたのははたして何だったのか?誰だったのか?

    世界は複雑で、それを構成する人間も当たり前だけど複雑で、ごくごく近い視点から気に入らないところだけをフォーカスしてラベリングすることがどれだけ愚かなのかが読み終わった後にわかる。
    そもそも右だの左だの、簡単な2項対立で、世界を、人間を分けられるほど、世界も人間も単純ではないのだ。

    「どうしても好きになれなかった、
    けれど大事な人だった」

    ラストの、この部分にまたもや号泣。
    (これは家だったけど出かける前だったからメイクし直した)

    家族や人間関係の分断について、分かりやすくロジカルに書かれていながら、着地点がとても感情的で、なのに清々しく、温かい気持ちになれるのも素晴らしい。

    いつか来るその日のために、大事な人のことはたくさん知る努力をしよう、と思わせてくれる良書でした。

  • 父親がネット右翼的な発言を繰り返すようになった原因を探る過程で著者が自身の認知バイアスを自覚するという内容。誰にでも右翼的な一面、左翼的な一面があり、そこだけを切り取って人を判断する、安易にレッテル貼りすることの危険性が浮き彫りになる。姉や姪の方がフラットな判断を下しているように見えた。

    著者はほぼ同世代。久々に会ったら親がネット右翼化していた、という話は割とよくあるらしい。そうなのか? 自分は実家でずっと同居しているがあまり会話もないもののとくに偏向は感じない。価値観のブラッシュアップができないのは森元総理もそうだが、年をとればとるほど困難になっていくもの。自分もいつかそうなる…というか40半ばの今でももう世の中の新しい常識についていけなくなっている。昭和生まれ。嗚呼。でもいい歳こいたおっさんが変に若者ぶっているのもそれはそれで痛い。ように思う。

    「コンテンツの摂取とは、食事によく似ている」とは言い得て妙。

  • 著者の本人、奥様の脳関連本を興味深く拝読していた。
    今回はお父さんが?、どうしたんだろうと。タイトルではだたならぬ感じがする。

    しかし、結末に救われた。
    親年代・世代、この違いがあるとはいえ、いつの世もお互い深く知ることはなく、親と子は別れていくのだろう。これだけ深く検証することもなく。

    お姉さんの心情がいちばんしっくりする。
    親子とはまか不思議である。

    そして、ネット右翼や関係するスラング、世代ギャップなどその他いろいろと勉強になった。
    とともに、今の時代の考え方についていけない、微妙なお年頃に差し掛かったことを認識してしまったかも(汗)

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著者プロフィール

1973年千葉県生まれ。文筆業。子どもや女性、若者の貧困問題をテーマにした取材活動をし、代表作として『最貧困女子』(幻冬社新書)などのあるルポライターだったが、2015年、41歳のときに脳梗塞を発症し高次脳機能障害が残る。当事者としての自身を取材した闘病記『脳が壊れた』『脳は回復する』(ともに新潮新書)が話題に。他にも、夫婦での障害受容を描いた『されど愛しきお妻様』(講談社)『発達系女子とモラハラ男』(漫画いのうえさきこ。晶文社)、当事者視点からの実践的な援助ガイドを試みた『「脳コワさん」支援ガイド』(日本医学ジャーナリスト協会賞受賞。医学書院)、当事者と臨床心理士との対話を記録した『不自由な脳』(山口加代子氏との共著。金剛出版)などの著書がある。

「2021年 『壊れた脳と生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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