恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ

著者 :
  • 講談社
3.41
  • (19)
  • (42)
  • (52)
  • (17)
  • (4)
本棚登録 : 1093
感想 : 67
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065324387

作品紹介・あらすじ

あ、また時間に捕まえられる、と思った。捕まえられるままに、しておいた。小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。カリフォルニアのアパートメンツで子ども時代を過ごした友人たちは、半世紀ほどの後、東京で再会した。積み重なった時間、経験、恋の思い出。それぞれの人生が、あらたに交わり、移ろっていく。じわり、たゆたうように心に届く大人の愛の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 子どもの頃、アメリカで過ごしていたときに出会った同じ歳頃の友人たちと半世紀後に東京で再会。

    60歳を過ぎた小説家のわたし、離婚を経験したアン、作詞家のカズ。

    彼らと流れるままに時間を過ごす。
    昔を懐かしみ、今を生きる。

    深い感情があるようには見えないけれど、それなりにゆるゆると関係は繋がっている…ような。
    特別に刺激的なことが起こるわけでもなく、すべて自然に任せているようである。

    これはエッセイなのか⁇と思ったけれど小説なんだな。

    文中の「ほんとうはあなたと二人が楽なんだけど、楽じゃないことをたまにはしてみるのも、いいかと」と言うアンの言葉に、わからないけどわかりたくなる気持ちがあった。
    これは若い人では出てこない言葉かも…と。
    60歳を過ぎれば、面倒なことは回避したいけれど、たまには自分に刺激を与えてみてもいいのかも、と思うことがある。
    それに似たような感じを覚えた。



  • 川上弘美さんの作品を読むのは初めて。
    表題に興味をそそられ、図書館で予約。
    待っている人が一人だけだったので
    一か月半で手に取ることができました。
    今は私の後ろで六人 並んでいます。

    不思議な雰囲気の作品。
    つれづれに書かれた随筆?と思って読み進めると
    ひとつひとつのストーリーが繋がっているのです。
    小説なのね。
    そして、淡々と語られる昔の友人との会話。
    (途中でリタイアしそうになった私ですが…)

    還暦を過ぎた一人暮らしの女性作家の
    2020年から2023年春までの交友関係が語られます。
    新型コロナで自粛生活が始まった時期。
    60年前の友人、カズとアン。
    時に会って一緒に飲み、時に電話だけでの会話は
    共通の知り合いや親のことなど、多岐にわたります。
    そして、人生の終焉についても。

    『一人でいるのがさびしいのではなく、
    どうしようもなく誰かと一緒にいたい、
    という相手を自分が求めないことが淋しい』

    人見知りだけど、甘える相手を欲している、
    そんな女性作家の心の中が見えた気がしました。

    私事ですが、親友と二人で12日間の旅に出ました。
    ツアーではなく、ふたりきりで。
    今までにも何度となく一緒に旅行をした仲ですが
    こんなに長い間、しかも海外へ出かけたのは初めて。
    旅はとても楽しく有意義だったのだけど、
    帰宅後、すっかり疲弊している自分に気づきました。
    娘にそんな話をしたらこう言われました。
    「長い旅に出るとね、癖が2.5倍くらい出るものだよ。
    でも、きっとまたその人と旅行に出かけると思う」

    距離感って大事。

    • bmakiさん
      ニュージーランド!!素敵ですね!!
      羨ましい(*^▽^*)

      でもさすがに他人と一緒というのは、多かれ少なかれストレスありますよね。。...
      ニュージーランド!!素敵ですね!!
      羨ましい(*^▽^*)

      でもさすがに他人と一緒というのは、多かれ少なかれストレスありますよね。。。

      特に我慢する方の人がストレス溜めがちですよね。
      お疲れ様でしたm(_ _)m
      2023/12/13
    • しずくさん
      私にはどうがんばっても無理。
      予定があるOR組むだけでも精神状態が不安定になってしまうの。
      yyさんを尊敬しちゃいたい、きっと強靭な精神...
      私にはどうがんばっても無理。
      予定があるOR組むだけでも精神状態が不安定になってしまうの。
      yyさんを尊敬しちゃいたい、きっと強靭な精神力の方なのだろうと察します。
      朝の思い付きで計画に乗ったり乗ってくれる友人が貴重です。
      2024/02/03
    • yyさん
      しずくさん

      コメントありがとう☆彡
      しずくさんのお気持ち、わかりますよ。
      今回、私は全然強靭じゃないことが分かったの。
      (今、「...
      しずくさん

      コメントありがとう☆彡
      しずくさんのお気持ち、わかりますよ。
      今回、私は全然強靭じゃないことが分かったの。
      (今、「狂人」って出た 笑)

      すごく仲の良い友人だっただけに、
      今だにちょっと尾を引いている私です。
      お互い、自分は自分と割り切って
      上手に かわしながら 暮らしましょ。
      2024/02/03
  • 川上さんご自身のことを書いたエッセイかと思ったら、作家を主人公にした小説だった。
    大きな出来事を描いているわけではなく、幼少期~60代までゆるりと話が進んでいく。
    大人になるにつれ、だんだんと物事の捉え方や考え方が変化していく様子がわかり、帯にあるように「年とるのって、悪くないじゃん」という気分になった。

  • 1950年代後半〜60年代初頭頃の数年間の子供時代を父親の仕事や研究の関係でアメリカのカリフォルニアで過ごした男女の中年〜60代(コロナ禍)の友情を描いた物語。
    いずれも日本に戻ってきた後の学校への「適応」に苦労し、小説家や作詞家、翻訳家といった自由業への就業率や、離婚率が高め。主人公の女性、朝見もその1人。朝見がよく連絡をとっているのは、アメリカ人と結婚したが離婚しシングルマザーのもと育った3人姉妹の長女アンと、商社勤務の父親の駐在でアメリカにいてその後の学歴はエリートコースを歩んだカズ(いずれも同年代)。
    設定はとても面白く、淡々と進むストーリーも味わい深いものと頭ではわかっているのだが、残念ながらあまり入り込めなかった。彼らの性格や生き方に、子供時代のアメリカ滞在が大きく影響しているのかどうかがよくわからなかったのと、自分自身の今の価値観と主人公たちの価値観があまり合わないと思ってしまったからなのかな。また時間を空けて読んでみたい。

  • 『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』川上弘美著(講談社) 1870円 : 読売新聞
    https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20230828-OYT8T50063/

    「女流」「元主婦」の肩書きは腑に落ちなかった…川上弘美が作家生活30年を経て感じた「変化」(週刊現代) | マネー現代 | 講談社
    https://gendai.media/articles/-/115623

    <訪問>「恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ」を書いた 川上弘美(かわかみ・ひろみ)さん:北海道新聞デジタル
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/906752/

    『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』(川上 弘美)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000378091

  • 本のどのページを開いても、ゆったりとした、そして少しコミカルな時間が流れていて。
    素敵な歳のとり方に憧れる。

    やっぱり恋なのではないの?とか思いつつセンセイの鞄を思い出して少し胸が苦しくなる…

  • 川上弘美、わたしの世代(50代後半)だと昔から知ってるけど、なぜかほとんど読んでなくて、ヒット作「センセイの鞄」ですら読んでない。でもこれは興味を引かれ(たぶん、子ども時代をアメリカで過ごしたっていう設定のせいかも。でもそれはストーリにそれほど関係なかった)、読んでみた。
    60代前半で作家の主人公(ご自身を投影しているのかな)、子ども時代アメリカに住んでいたときの幼なじみたちと今でも親しく、ときどき会って話したりしているっていう内容。コロナ禍のころが背景にはなっていて、あのころの雰囲気は感じるけど、大きなできごととかストーリーがあるわけではなく、ほぼとりとめない会話とか思いとかで成り立っている感じ。
    こういう淡々とした、なんていうことのない小説は好きだけど、読むのはちょっと久しぶりだったかもしれず、ちょっとなぜか慣れない感じもしたり。
    自身も友達も初老に近く…っていうのが自分も同じなので、身につまされるっていうか、読んでいて気が沈むようなところはあった。しーんとするような。別に悲しいこととか暗いことが書いてあるわけではないんだけど。
    主人公が、90代の父親に、きみも90歳まで生きるとしたらあと30年近くあるわけだから計画を立てなさい、と言われて、まあ立てないだろうな流されるだけだろうな、とか思うところとか、ひとり暮らしで今後どうするかとかを考えてないとか、生死についてもぼんやり「わたしたちはこれからどこへいくんだろう」とか思うところとか、そういう流されていくだけの感じには共感したのだけれど。

    あくまで個人的に、あくまでわたしの今の気分としてだけど、こういう淡々と静かな話より、もっとストーリーがあってがちゃがちゃした感じの小説のほうがいいのかな、そういうほうが娯楽として集中して読めていいのかも、とか思った。。。

  • 小説のようなエッセイのような短編集。境遇はもちろん違うけど、同世代を生きてきた登場人物達の過去や気持ちやコロナ禍を生きる今やら、それぞれの思いに共感できて面白く読了。今の自分の漠然とした気持ちをなんとなく代弁してくれた文章で引き込まれました。

  • 歳を重ねるといろいろなものが見えるようになって心は成長し、身体は衰えていくと思っていた時期がある。どうやらそんなものではないと今は感じている。

    大きな事件があるわけではなくて、エッセイのような本。60を超えた幼馴染が近づいたり離れたりしながらコロナ禍を生きている。歳を重ねたからこそのものの捉え方は決してスマートなわけではない。でも相変わらずいろんなことを考えながら人は生きるのだなとしみじみ思う。
    静かで、暖かくて、どこか切ない物語だった。

    「どうしようもなく誰かと一緒にいたい、という相手を自分が求めないことがさみしいのだった。」

    「他者の思考に自分がのみこまれてゆく心地よさと抵抗感と恐ろしさの中に、ゆっくりと溺れていった。」

    「カズのことをわたしは好きなのかしらん、と自分に訊ねてみる。自分の中で、その問いが小さく響く。がらんどうの部屋の中で、覚束なく団扇太鼓を鳴らしているような音で。答えはなく、ただぺなぺなした太鼓の音が、てん、てん、と鳴っているばかりだった。けれど、その覚束ない太鼓の音が、悪くはないなと思った。」

    そこかしこで、独特な、素敵な表現に出会える。そして、本の題名も章の題名もまた、気持ちのどこかに触れられる感じがする。

  • ニューヨーク、ボストンを思い出す。。

全67件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川上弘美の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×