- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065332535
感想・レビュー・書評
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中流以下に向けた内容の本。
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負のスパイラルにより世帯所得が25年前と比べ130万円下落した日本。結婚し、子供を育て、自宅を購入する、そんな中間層では当たり前だった生活が送れない人が増えているという。企業依存をやめ、リスキリングをすると同時に政府はオランダを見習いパートタイムに対しても同一労働同一賃金の法体系を整備すべしという主張。
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【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/568286 -
学校の成績で見合った高校に振り分けられて、見合う仕事の量がある程度あって、技術の進歩が就業人生とほぼ同じくらいのサイクルだった時代は、就職しさえすれば何とかなる時代だったのかな。脱サラ、という生き方は異端で、定年まで辛抱すれば年金が貰えて次世代も同じ様な生き方をすると信じて思考停止出来ていた時代だったんだろうか。
技術スピードが桁違いになった今では、自分をバージョンアップさせなければ適応出来ないって事なんだろうけど、ドイツや大企業に比べて取り残されている人が多過ぎると感じます。自分が持ってるスキルの棚卸しと取得すべきスキルの相談に乗ってくれる様な場所が、出来てくるのかな。(もうあるのか?私が知らないだけ?) -
日本だけが苦しんでいる様で有る。
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この本を読んでいたら中流と思っていてもすぐそこにリスクがあることがわかります。
資産もなす、給与も中央値で満足していては家族をリスクにさらすかもしれません。 -
中流危機と言うセンシティブな題名で煽ってるなと思って読んでみたが、本当にまずい状況になってきているんだと認識を改めさせてくれる本。処方箋として、デジタルイノベーションやリスキリング、同一労働同一賃金をあげているが、果たしてそれだけで上手くいくのか?あまり納得感が得られなかった。子供達が安心して生活出来る日本社会になる事を切に願う。
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先の見通しができないと、誰しも不安になる。
まずは、現在退職した世代と、現役世代では、様々な価値観が存在することを頭に入れる。
家を購入するにせよ、賃貸で暮らすにせよ、現在の身の丈にあった生活水準で過ごす。国や年金をあてにせずに、新たな収入を得る方法を自分の頭で学んで考える。それには投資も含まれる。
自分の人生を、他人任せに、時代任せにしない。 -
最近(2023年8月)発刊された本ですが、ベースは昨年放送されたNHKスペシャル(中流危機を越えて)という番組を作成した関係者によって書かれた本です。私が社会人になった平成元年頃は、日本には上流階級は少ないけれど幅広い「中流階級」が日本の強さを担っていると言われてきたように思います。
会社勤めを始めた頃「私も中流になりたい!」と目標を持ったものでした。その中身は、子供2人に大学卒業させる、車で旅行する、家(マンション)のローンを退職までに終える、趣味を見つける、だったと思いますが、それと同じ内容が、プロローグの「イメージする中流の暮らし」に書かれていました。それによれば私は無事「中流」になれたようです、これは私の努力よりも大学を卒業して就職した時期が偶々良かったからだと感じます。
この本には、私より5年程度遅く生まれただけで「就職氷河期」にぶつかってしまい、いわゆる「中流」になれなかった事例が記されています。あの時期は政府が「バブル崩壊」を正式に認めていたかどうかは不明ですが、バブルが弾けて企業の戦略が一斉に変わった時期だったと思います。それから数多くの経済ショックがありましたが、この本にはそれを克服している欧州(オランダ、ドイツ)の例が示されています、特にオランダはかつては現在の日本と似たような認識をしていたにもかかわらず、最終的には法律を修正・制定することで本当の「同一労働同一賃金」制度を導入して生産性を上げてきています。
あと数年で、幸運な時代を過ごしてきた最後の世代が現役世代を引退することになると思います。その時には、もう反対する人は少数になっているでしょうから、全ての労働者が「同一労働同一賃金」で働ける世の中に変わっていて欲しいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・最も割を食ったのはいわゆる「就職氷河世代」概ね1993年から2004年に新卒で就職活動を行なった人たちである、正社員になれずアルバイト、派遣社員、契約社員などとして職を転々とするフリーターや通学や求職活動もしないニートなどが、他の世代よりも多いと言われる(p14)2023年4月時点で、大卒で概ね41-52歳、高卒で37-48歳である(p52)
・親世代の中流家庭であれば、子供を産み、マイホームを建てることは手の届くところにある夢だった、しかし25年が経ち、今の若者はそもそも「夢すら見られない」という現実に直面している(p38)
・価格競争に巻き込まれた多くの企業は、稼ぎが経る、すると人・設備への投資が鈍化、イノベーションも起きないため、結果として賃金が上がらないという「負のスパイラル」に陥った、失われた30年とは、この負のスパイラルから抜け出せずにきた30年とも言える。どの企業も自社が存続することが最優先となり、元請けと下請けで助け合う、そんな古き良き関係性は失われていった(p68)デフレスパイラル:消費者がお金を使わない→値下げ競争が激化→企業稼げない→給与減る→消費者がお金を使わない(p75)
・社長は自分で判断したことは全部自分に降りかかってくるので、自分が尊敬している人の発言とかメッセージとか、そういうのにすがってしまう。これは歳を重ねても変わらない(p70)
・負のスパイラルから抜けられない原因として多くあるが、軽視できないのは「企業依存型」の雇用システムである、一度採用した正社員は簡単に解雇できない、米国がレイオフ(一時解雇)できるのと異なる、従ってパートタイマーや派遣労働者などの非正規雇用が拡大した(p83)
・1995年に日経連から提言された「雇用ポートフォリオ」によれば、3種の雇用形態(長期蓄積能力活用型:終身雇用正社員、高度専門能力活用型:研究企画など有期雇用、雇用柔軟型:派遣パート社員)を想定した、賃金を抑えられる非正規社員の活用も提言の狙いの一つであった(p89)
・派遣労働は絶えずポジティブリスト(特定の業種だけを許す)を維持しないと低賃金の市場になりかねないと心配されたが、1999年改正のネガティブリスト(特定の業種だけを規制)に転換して理念を歪めた。(p95)
・所得が伸び悩んできたのは、硬直化した企業依存の限界を迎えた1990年代後半にあり、正社員の雇用を重視し非正規雇用という手段でやり過ごそうとしてきた社会のあり方にあることがわかってきた(p101)
・中流復活の鍵となるのが、1)デジタルイノベーション(新たなビジネスモデルで付加価値の高い儲かる事業を生み出す)、2)リスキリング、3)同一労働同一賃金、である(p114)
・自社の強みとなる技術、企業方針を基準としてサービス製品を開発する「プロダクトアウト」ではなく、顧客ニーズを把握し「顧客が求めるもの」を優先して製品を開発する「マーケットイン」の発想が必要(p129)
・今までは単に商品を売って終わりだったが、通信機能によってサービスをアップデートして、付加価値を高めていくことができ、1台で何年もサービスを継続して提供して対価をいただくことで成長する(p130)
・社会人の学び直しに代表される「リカレント教育」は個人の関心を原点とするものであるが、リスキリングは基本的にはあくまで企業は行政が責任を持って行うもので、企業が実施する場合には、業務として就業時間に行うことが必要とされる(p139)失業する前から企業が求めるスキルを獲得するための「労働保険」というべきもの(p157)生涯学び続けるというマインドセットが重要、それにより新しい可能性が生まれるという価値観を実感してもらい、変化のためのパスポートにすべき(p168)
・スマート工場においては、アナログで働いてきた技術者たちはロボットに置き換わり他の仕事に従事する、1番目の目標は、労働者を重労働から解放し、人間工学的に望ましくない作業を機会に行わせる、2番目の目標は、将来的に仕事をより有意義なものにしたい、退屈なルーチンワークは機械が行い、人々には創造性があり責任のある仕事を担う余地を増やす(p155)
・中小企業でのリスキリング成功の秘訣とは、1)具体的な業務のデジタル化からスモールスタート、2)専門チームを作る、少人数から初めて徐々に増やす、3)リスキリング対象者を思い切って異動・配置転換する、4)成果を評価する(p189)
・日本も1996年に、フルタイムとパートタイム労働者の待遇格差を禁止する「労働者間差別禁止法」が制定、2000年には労働者側が時間当たりの賃金を維持したまま労働時間の短縮延長を自己決定できる「労働時間調整法」が制定された。(p205)2018年成立の「働き方改革関連法」により、パートタイム労働者と有期雇用労働者の間で統一的な同一労働同一賃金ルールが「パートタイム・有期雇用労働法」に規定された、ポイントは、1)不合理な待遇差の禁止、2)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、3)裁判外紛争解決手続きの整備、であり、この改正法は大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から適用されている(p212)
2023年9月30日読了
2023年10月1日作成