- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065332542
作品紹介・あらすじ
『源氏物語』がなければ道長の栄華もなかった! 無官で貧しい学者の娘が、なぜ世界最高峰の文学作品を執筆できたのか?後宮で、道長が紫式部に期待したこととは? 古記録で読み解く、平安時代のリアル・紫式部は早くに生母と死別、父は後妻のもとに通う日々・道長の権力獲得に欠かせなかった姉・詮子・道長最大の政敵が失脚した「長徳の変」・紫式部と夫宣孝の「痴話喧嘩」・一条天皇は『源氏物語』の愛読者・華やかな定子サロンと地味な彰子サロン・「御物怪が……」彰子出産の記録『紫式部日記』・三条天皇と道長の確執・彰子と実資の間を取り次ぐ紫式部・「この世をば……」が詠まれたとき24年大河ドラマ「光る君へ」時代考証担当の第一人者が描く、平安宮廷の世界と、交差した二人の生涯!
感想・レビュー・書評
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前に読んだ「千年の読書」にもあった「史料が千年後まで大量に残っているこの国に生まれた幸せ」の一文が320ページにあって 「こういうことか〜」と納得できました。御堂関白記や紫式部日記を 読んでみたくなりました(もちろん現代語訳で…笑)忘れちゃいけない 小右記も。平安時代の皆さん、結構 クセが強く嫌いじゃない!
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道長の権力への道程と、紫式部の年譜および源氏物語の見立てを並置しながら、摂関政治と、天皇、関係殿上人の関係を説明。豊富な内容。
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「光る君へ」時代考証担当の第一人者が、道長と紫式部と平安時代を第一次資料から読み解く。
あとがきに、「道長を大河ドラマで取り上げてほしい」といった書き込みがあるが、日本人は合戦があって人が死なないと喜ばない。皇子が生まれたり、宴会で月を読んだりするのがクライマックスではドラマにならないでしょう。と答えていたが、なんと、大河に!二人の像が、実像からかけ離れてしまうことを危惧しているが、ドラマはドラマで楽しんでほしい。リアルな平安時代の様子や、紫式部、道長の人生も学んでほしい。」←はい。気をつけます。
◯紫式部と清少納言は、会う可能性はほとんどない。おそらく、紫式部は、枕草子を読んで式部日記に悪口を書いていた。
◯関白と摂政は、大違い。関白は、補佐するのが成人した帝だから、権限が限られている。摂政は、幼い天皇をお支えしながらも、事実上権力を握る。道長が、関白につかなかったのは、そういうわけ。道長を関白として取り込みたい三条天皇と、あくまで左大臣内覧として太政官をも掌握したい道長の政治抗争。
◯実資は、ロバートが演じているけど、折目正しい、曲がったことが嫌いなやり手だったようだ。
◯道隆が、円融の中宮を遵子を皇后に、定子を一条の中宮に立てた。本来、中宮は、皇后の別称(三后 太皇太后、皇太后、皇后)だったのに。後に道長がこの手を一人の天皇の后に対して使う。 -
大河ドラマ予習本。
「光る君へ」の監修者でもある倉木一宏さんのXでのつぶやきやぼやきが面白い。あくまでドラマですから、フィクションとして楽しんでねが漏れ出ている。監修者の苦労がしのばれる。この本の中でも、道長と紫式部が幼少期に出会うことはありませんと。
それはそれとして、残された文書から読み解かれる藤原道長と紫式部の生涯は、非常に興味深い。源氏物語が広まるには背景があったのだなあ。今も昔もいい作品を作れば売れるというわけではないようだ。
研究でわかっていること、わかっていないことがきちんと書かれているので、大河ドラマで史実に基づくところ、膨らませたところがよくわかる。
しかし紫式部が実在することすら、証明するのは大変なんだなあ。筆まめの実資様に感謝。 -
先日読んだ同著者の『増補版 藤原道長の権力と欲望 紫式部の時代』に続き、今年の大河ドラマの「副読本」として読んだ。『御堂関白記』『小右記』などの古記録や『紫式部日記』をもとに、事実関係を年代順に解説している。不明な点の多い紫式部の生涯や『源氏物語』の成立についても、説得力のある主張を展開している。
余談だが、著者の独特な言い回し(〜であるが。)を見るにつけ、クスッと笑ってしまう。 -
平安時代初心者の方向けかな、という感じ。
平安時代モノが好きで、色々読まれてる方には知ってる情報ばかりかもしれないが、倉本先生の一次資料で確認できる事柄のみ!というプライドが感じられる。 -
著者は、10年程前に「藤原道長の権力と欲望」という本を著しているが、2024年の大河ドラマ「光る君へ」の放映を機に、上記の本の増補版を作るのと同時に、新たに紫式部と藤原道長を絡めて書き下ろしたのが本書である。
全体の流れは、タイトルの通り、歴史的な流れに沿って書かれているので、ここでは省略し、歴史的事実という定義について、面白かったので、以下に書いてゆきます。
平安時代の藤原道長の時代でいえば、「紫式部」「泉式部」と称される女性は、確実に存在したが、「清少納言」は100%存在したとは言えないと・・・
何故かというと、歴史学者は、歴史的な一次資料しか信用していないということなので、そういう結論になるそうです。
この時代の一次資料というのは、藤原道長が書いた「御堂関白記」、藤原実資の「小右記」、藤原行成の「権紀」を指します。
紫式部は、実資の「小右記」に「藤原為時の女(むすめ)」と、記載されているので問題なし。和泉式部は、道長の「御堂関白記」に「紅(こう)式部」として登場している。
清少納言については、交流があったとされる行成の「権紀」にはまったく記載がなく、他の一次資料にも名前が全くないので、100%確実とは言えないという。
本人が書いたと称する「枕草子」に登場するから、実在したなどというのは、歴史学では通用しないそうだ。
但し、確実に実在した紫式部が書いた「紫式部日記」に“散々悪口を”書かれているから、恐らく実在したであろうという程度のものだそうだ。
歴史学というのも因果な仕事のように思えます。 -
著者は「光る君へ」の時代考証を担当されている方。ドラマを意識して、紫式部と道長の人生を並行して記述しているが、あくまで一次資料を基にした史実の記述だけあって、「前半生で2人が交流していた可能性は低い」とつれない。一方で、源氏物語の著作活動は初期から道長の庇護によるものという説を唱えられていて、そのあたりがドラマのベースとなっているんだろうね。
あくまで史実ベースであるが、道長はもちろん紫式部の人間臭さも垣間見れてなかなか面白い。
それにもまして、超有能で代々の支配者に重宝されつつも、やたらと愚痴をこぼす藤原実資がキャラ立ちしている。読んでいると、ロバート秋山の顔が浮かんできて、どうしてもニヤニヤしてしまう。