- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784086115995
感想・レビュー・書評
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銀バラシリーズ。番外編を含めれば9作目。
タイトルは、今回の舞台インドのジョドメルの
「千年救世主(メサイア)」の伝説から。
――千年に1度、銀の満月がのぼり、
その光と共に姿を現す救世主に自分の罪を告白すると、
すべてが許され、新しい命と人生とを得ることができる、という。
七聖宝「風のシルフの聖十字」を追い、インドへ来たユメミたち。
所有者はジョドメルのマハラジャ、クリシュナ・シン。
地位も財力も人望も未来もある、恵まれた完璧な黄金の王。
なのに、どことなく悲しげな瞳には罪の影がちらつき、
再生することのない完全な死までを望んでいる。
半年前に両親と恋人を一度に亡くしたことが原因?
同じく半年前から弦月の夜に人食いトラが出現するという事件とも
なにか関係が?
真相を探ろうとするユメミたち。
クリシュナのお付きであり友人であるアルジュナは、
彼を守るために過激なまでにユメミたちを脅す行為に出る。
悲しくて残酷な運命から逃れられなかったクリシュナ。
他の国の神話か昔話で同じような話があったけれど、
いつも「どうにもできないのかなぁ」ともやもやする。
生まれたときのホロスコープでその後の人生がすべて決まってしまって、
変えようと頑張っても、運命の糸にからめとられて抜け出せないなんて、
すごくすごくイヤだ。
運命は自分で切り開くもの、とか、運命は変えられるもの、と思わないと
がんばろう!って自分を励ますこともできない。
いくらあがいても、最終的にはホロスコープで予言された運命の輪の中に
戻されるしかないなんて、やりきれない。
悲しい運命に決着がついた後にやってきた千年メサイアの夜。
大きな銀の月のきらめく光がユメミとレオンにふり注ぎ、
ふたりの“罪”を千年の彼方に運んでくれる。
“許されるということは、きっとこういうことだ。
罪と罪を自覚する気持ちとを、すっかり忘れてしまうことなのだ。”
(248ページ)
この“罪”=“愛”なんだと考えると・・・切ないなぁ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
相変わらず、素敵な登場人物が盛りだくさん。
そして夢美の安定した肝っ玉母さんぷり、目の前のどんな困った男の子も放っておけないっていう・・・。
ときめきは最高潮に達したけど、だけどだけどいっくら銀のメサイアだからと言って、なんかもう、迂闊としか・・・。 -
所在:実家
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読んだ当時も大好きでしたが、今でも普通に好きな本。
藤本ひとみの作品の中で、一番好きなシリーズだったのは、やっぱりレオンの禁欲さがツボだったからか。
最初で最後の告白をひとり背負うつもりだった彼のことを思うと、とても切ない。切ない幸せ。
てか、コバルトってたまに恐ろしく文章力があったり、ストーリーテラーな作家が出るよね...。唯川恵とか夢枕獏とか。