これは経費で落ちません! 8 ~経理部の森若さん~ (集英社オレンジ文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086803731

作品紹介・あらすじ

トナカイ化粧品を吸収合併した天天コーポレーションだが、経理部に増員はなかった。
おかげで沙名子たち経理部員は連日残業続き。社内も合併に伴う人事異動や業務整理で、どこかぎくしゃくしている。
社長の代替わりから反目が目立つようになった上司たちの対立は、経理部の業務にも悪影響を及ぼしていた。
落ち着かない社内の空気とは裏腹に、大阪営業所へ転勤となった太陽からはしょっちゅう電話もかかってきて、遠距離恋愛になっても沙名子たちの関係は安定していた。
ところが天天コーポレーションのイベントを取材に来た記者が、太陽の元カノだったことを知った沙名子の心はざわつき始め……?
大人気シリーズ第8弾!

感想・レビュー・書評

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  • 先日最新刊のシリーズ九作目を読み終わってからこの八作目を飛ばしていたことに気付いた。
    設定は少し戻って〈天天コーポレーション〉と〈トナカイ化粧品〉〈篠崎温泉ブルースパ〉が吸収合併されたばかりの頃。社長も正式に円城格馬に代替わり。新生〈天天コーポレーション〉誕生だ。

    今回も様々なお金の問題を森若が嗅ぎつける。単身赴任手当に出張費用に残業代の違和感。時折出てくる広報課の皆瀬の洋服代やら営業部の山崎のカラ出張やら、中堅どころの会社のはずがよくもこれほど無駄遣い出来るほど予算があるものだと感心する。お金のあるところにはあるものだ。
    ただこれまであったような犯罪になりそうな大事ではないのはホッとした。

    シリーズを読んでいて改めて分かったこと。森若というキャラクターは好きではない。本人が自覚するように冷たい人間だなと思う。また本人が思うようになぜ山田太陽が森若を好きになったのかも理解できない。
    寧ろ真夕の気遣いや美華の分け隔てない厳しさの方に癒される。

    営業部・鎌本の厭らしさと総務部・玉村の面倒くささには相変わらず苛々する。森若はそんな二人に冷酷だが、美華ならきっと嫌がられてでも教育しようとするだろうし、真夕なら上手く宥めながら付き合っていこうとするだろう。
    田倉も割と森若に近い方だとは思うが、その田倉にすら『気に入らないな』と言われるのだから森若の性格は相当なんだなと思う。

    社員のプライベート(特に恋愛)事情は個人的には興味のないところなので流し読みしてしまったが、田倉がこんな決断をしていたとは驚いた。確か最新作では関係が続いていたような表現だったように思ったが違っていたようだ。
    こんな冷たい森若でも太陽が相手となると勝手が違う。玉村ではないが『彼氏ができるとやっぱり変わるんだな』ということだろう。

    経理部の新メンバー、トナカイ化粧品から来た岸涼平がまたなかなかの曲者っぽい。一見人当たりが良さそうで呑気そうだが新しい人間関係にスルリと入り込む当たり、意識的なのか無意識なのかは置いておいてなかなかのしたたか者という感じ。

    エピローグの真夕目線は毎回平和で癒される。真夕が気付かなかった『変な感じ』は本人が思うように分からなくて良いことなのかも知れない。森若みたいになってしまうくらいならば。

  • シリーズ第8作、相変わらず面白い。

    太陽と遠距離恋愛になった沙名子。太陽の元カノが現れて、沙名子の心中は穏やかではない。どうなるんだろうと、ページを進める手が止まらない。

    社内での少し嫌な感じの事件が起こったりするところも安定して楽しく読める。

    9作目も待ち遠しいです。

  • 安定して読めるけど、けして停滞しているわけではないのが面白いシリーズ。
    人と人のあれやこれでこんなに書けるなんてすごい。
    テレビ電話での遠距離恋愛とかさなこにできるんやなぁ、と感慨深いー。

  • 読書をしていると時々スランプみたいなものがあって何を読んでも頭に入って来ない時があって…そんな時は本書のシリーズを手に取ります。
    あまり頭を使わず淡々と読める。
    特に何かがドカーンとあったり、大どんでん返しがあったりする訳ではないのに、日常の仕事のあれこれを淡々と読んで楽しめてしまう。
    ありがたい。

    真夕ちゃん、やっぱいいなぁ。
    沙名子さん、美華さん、勇さん、ちょっとお堅い3人を上手く調和しているのがまさに真夕ちゃん。
    涼平くんと2人でこれから経理部の雰囲気をまた変えてくれそうで続きが楽しみです。

  • シリーズ8作目。
    前作でトナカイ化粧品などとの合併が発表され、新体制となった天天コーポレーション。しかし、経理部の増員はなく、いつになく忙しい年度初めを送っていた。
    トナカイ化粧品から、移って来た人たちの出張申請や勤怠のおかしな点など、相変わらず、鋭く、実直に真実に迫る沙名子の活躍が今回も見どころ。
    他の方のレビューには、「恋愛要素多め」とあるが、自分はそこまで感じなかった。
    沙名子と太陽のやり取りはリモートになっても、相変わらずで、勇太郎の大人の決断はちょっと意外だったけど。
    真夕と新人が担当した給与計算の最終チェックで、トナカイ化粧品から移って来た営業社員の勤怠がおかしいことに気づく沙名子が、気付いた理由について、「勘と言うか、経験値」と答えるところに、何より共感。
    長年、数字を見ていると、数字の羅列を見ているだけでも、「何か変」と気付くもの。この理由を部下に聞かれても、理由が答えられず、困っていたが、沙名子でも答えられないんだ!と思って、何だか親近感を持ってしまった。

  • 肩の凝らないお仕事ミステリー風で、カイシャの細かい力学やコップの中の嵐を神の視点で鑑賞しているような感じ。いつの間にかシリーズも長くなった。
    今回は、見つけたミスを厳しく糾弾せずに、自己防衛や組織防衛のためのネタ、手持ちカードにしてしまう、ネチッコイネタが多い。

  • 元カノにヤキモチ妬く森若さん可愛い。

  • 会社の中ではいろんな思惑が渦巻いている。
    求められた仕事を全うしたい気持ちと、責任ある立場になりたくない思いは共存する。

  • シリーズも8作目になるのか。
    会社では合併、プライベートでは遠距離とか元カノ出現とかいろいろ話はあったけど、今回のポイントは沙名子が気になったとある違和感。
    普段ならみても何も思わず過ごすものだけど、どうと言えない変な違和感があり、それを確かめてみるということ。
    自身にも何回かあれ?と思うこともあったけど(当たることも外れることも)、あれはたしかになんだろうと思ってた。経験と能力、深い。
    265冊目読了。

  • 森若さん、今回もさすがの勘でした。

    個人的には総務部の玉村志保さんのままならなさ、生きづらさの描き方が冷徹で良いです。他人に見られたい・評価されたい欲求が前に出すぎて自己評価との乖離が広がっていく過程を、やるせなさや傷みとともに見守っていきたいです。

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著者プロフィール

あおき・ゆうこ
『ぼくのズーマー』が集英社主催2002年度ノベル大賞を受賞してデビュー。『これは経費で落ちません! 経理部の森若さん』シリーズがドラマ化、コミック化され人気を博す。『派遣社員あすみの家計簿』も好調!

「2021年 『コーチ! はげまし屋・立花ことりのクライアントファイル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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