イスラム―癒しの知恵 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087205763

作品紹介・あらすじ

イスラム教徒は自殺しない?イスラム教徒の実像は好戦的ではなかった。張り巡らされる癒しの知恵は、助け合いから性にまでおよぶ。我々はイスラムを、ふだん異質の文化、宗教としてしか認識していないかもしれないが、既存の価値観が崩壊しつつある今、実は彼らから学ぶべき事は多い。日本ではまったく伝えられていない、平安と癒しをもたらすムスリムのメンタリティーを学ぶと同時に、日本人の心の処方箋ともなる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 日本人が疎いイスラムについて、精神面の観点から解説した本。

    日本のような自己責任が問われ、常に努力や競争を強いられる社会とは真逆で、「ま、そういうこともある」「なるようになる」というケセラセラ的な価値観を共有しているイスラム社会。捉え方次第では若干無責任にも感じられるかもしれないが、著者が言うように、これがある種のセーフティネットになっていると思う。

    責任を追求し改善していく努力は、社会を劇的に発展させるというメリットももちろんあるし、日本が繁栄したのもそのお陰だと思う。しかし、自分を追い詰めるやり方で、精神的に疲弊している人が多いのも、自殺率が高いこともまた事実である。日本人が常に何かに癒しを求めているという指摘も納得。

    精神的な余裕がない我々にとって、心にゆとりと平安を持つイスラム的な考えから学ぶことは多いと感じた。

  • そういえばイスラムについて何も知らないなと思って手に取った。やはりここに書いてあることは知らないことばかりで、とても興味深いと同時に自分の無知を恥じた。イスラムに対する自分のイメージが、いかにメディアによって作られた偏見に基づいているかを思い知らされる一冊。これを読んだ後はイスラムの人に対する見方がガラッと変わる。

  • イスラームへの理解を深めるために手に取った。
    自殺しない、孤立させない、持てる人は喜捨や施しをすることが善行に繋がる、などなど。わかりやすい言葉と事例で、読みやすかった。
    結婚の推奨という項目は、既に中年女性となり子どもを産む可能性が低くなった自身に置き換えると、内容は理解できるが耳が痛いなと感じた。それ以外は、相互扶助や人をもてなす精神など、概ね日本人にも馴染みやすく理解しやすい。他者を助ける、喜捨するという点においては、大坂の町人文化の価値観と似たところもあるのではないかと思った次第。

  • 「2012年 POPコンテスト」

    所蔵なし

  • 2011-1-22

  • ムスリムの文化について述べられていることで驚いた点は以下である。
    今後のムスリムとの付き合い方に生かせそうだ。
    ・お店でムスリムがお茶を出してきたら、買い物をしてお返しをすると、ムスリムは悲しく思う
    ・ひとりでいることは悪いこと
    ・何でも分け与える文化

    外相と急遽面会できたというエピソードには胸が温かくなった。
    日本人は人生に安らぎを見出せず、生き物やキャラクターに癒しを求めるという作者の指摘に、とてつもない衝撃を受けた。
    私には愛猫がいるが、心の支えになっている。
    愛猫=宗教のようなもの、というわけではないが、特定の宗教を信じている人々はこんな気持ちなのだろうか・・・

  • 15/02/24。
    3/6読了。

  • イスラム教徒はなぜ自殺率が低いか?という問い立てから始まるイスラム紹介。
    シリアやトルコに詳しい筆者自身の滞在体験を交えて、イスラムの基本的な考え方を説明。
    すべての判断は神に委ねよ、そして家族や隣人、友達といった縁を大切にせよという教えが、他人への批判を戒め人を孤独にしない、と言う。 その結婚観など、私たちの持つ個人主義からはじまるそれとはかなり違って違和感も大きいが、国を母体とする政策がアテにできなくなった今日、こういう考え方に依るのも理解できる。

    さまざまのエピソードの中、後に大統領もつとめたギュル外相を訪ねた話には胸が熱くなる。
    ギュル氏の個人的資質に依る部分が大きいとも思うが、キリスト教世界とイスラム教世界とのつなぎ目にあって、難しいバランスを要求されるトルコ人の懐の深さを感じる。
    同時に、、世界の果てにあって両者から遠く ある意味無邪気でいられる日本だから歓迎され期待される何かもあるのではないか。
    さて、なぜ、過激派の活動が目立つのに、イスラムへの回帰が止まらないか?貧富の差の拡大や政治的迫害を理由に挙げる意見が多いが、どうもピンと来なかった。
    本書では、技術発達のめざましい今日、答えを見いだすのが難しくなってきていることを指摘し、例として脳死の扱いの問題を挙げている。このような出口の見つけられない問題に直面して、戒律により行動を定められているイスラムに回帰し心の平安を得たい、のだという。
    なるほど。


    2011年1月に出版されたもの。
    2014年1月、仏紙の風刺画が発端となったテロ事件、そして直後のISによる二人の日本人人質事件の最中に読む。

  • [ 内容 ]
    イスラム教徒は自殺しない?
    イスラム教徒の実像は好戦的ではなかった。
    張り巡らされる癒しの知恵は、助け合いから性にまでおよぶ。
    我々はイスラムを、ふだん異質の文化、宗教としてしか認識していないかもしれないが、既存の価値観が崩壊しつつある今、実は彼らから学ぶべき事は多い。
    日本ではまったく伝えられていない、平安と癒しをもたらすムスリムのメンタリティーを学ぶと同時に、日本人の心の処方箋ともなる一冊。

    [ 目次 ]
    はじめに(自殺の大国)
    第1章 信じることによる癒し(イスラムにおける自殺の禁止;すべてを神にゆだねる ほか)
    第2章 行いによる癒し(信じるだけではイスラムの信仰は成立しない;イスラムは喫煙を禁止するか? ほか)
    第3章 ひとりでいるのは悪いこと(「助けて!」と叫べる社会;個の確立が求められる日本 ほか)
    終章 世俗主義の国家という不幸(イスラムの発想に学ぶ;科学と宗教 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • イスラムでは命は神の手にあるものであり、人がどれくらい生きながらえるのか、いつ死んでいくのかも、全て神の手にあるとする。命を決めるのは神であって、人間ではない。

    厳格なムスリムは墓を作らない。作ったところで霊が現れるという発想がないのだから、墓に詣でること自体に意味がない。
    イスラムでは理由なき殺人は厳禁である。
    苦境にある人にとっては、神に全てをゆだねていれば、いつか良いことが起きる。成功者にとっても、神に定めるべき義務を果たして親切な行いを積めば、来世でご褒美がもらえる。

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著者プロフィール

1956年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科科学史・科学哲学文科卒業。社会学博士。専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。一橋大学教授を経て、同支社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。著書に『イスラームから世界を見る』(ちくまプリマー新書)『となりのイスラム』(ミシマ社)『外国人労働者・移民・難民ってだれのこと?』(集英社)ほか多数。

「2022年 『トルコから世界を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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