非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208559

作品紹介・あらすじ

性体験、雇用、加齢、家族……。男はなぜ、今の世を生き辛く感じるのか。男性たちの弱さに寄り添いながら問題と向き合い、優しく、幸福に生きていく方法を探った全く新しい男性批評。

感想・レビュー・書評

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  • なんだかなあ、だ。
    著者も自覚はあるようで予防線を張っていたが、男性とはどんなに無能だろうと、醜かろうと、生まれが貧しかろうと、下層だろうと——「男に生まれた」ただそれだけで、もんのすごい高下駄を履かせてもらっているのである。
    しかも、それは単に、「社会的により高いところに行く」ためのものではない。その下駄はとりもなおさず「女を踏んで」、より高所へ行くためのものなのだ。
    デフォルトで女を踏んで、デフォルトで女より高いところへ。そのうえで能力や運に恵まれれば、さらに(=他の男性たちよりも)高いところへ。
    それが「男という生き物」であり、そんな奴らに「他の男より高いところに行けなくって、俺たちだってつらいんだ、え〜〜〜ん!」と、「よりによって」「私たち女に」言われたって困るのだ。
    そういうことは、同じ男性に「のみ」向かって言ってほしい。それをこちらへ(「こちらへも」であってすら)向けるのは、ただの傲慢であり、加害であり、暴力だ。

    男らしくあるべき、とかいう「男が作った」わけのわからん規範に追いつめられ、その鬱屈をこじらせてあろうことか何の責任も罪もない女性に転化し、DV夫と化す男たちの「気持ちがわかる」、と著者は書く。
    もちろん、その後には「それをよしとはしないし、僕は絶対にしないけど」と続くのだが——この一文を読んで、私は心底ぞっとした。
    女性には説明不要だと思うが…男性のために注記しておこう。他人を惨殺し、腹を割いて内臓をそこらにばら撒き、さらに家に放火して周囲に広く延焼させた、とかいう異常兇悪犯罪が起きたとする。貴方の周囲の「善良な市民」がその犯人について、「ああいうことをやりたい、やってしまうという気持ち、わかるわー…ま、オレは絶対やんないけどね」と、けしてネタなどではなく大真面目に言ったとしたら、どうだろう?

    それでも貴方は、微塵も恐怖や危険を感じない、それをもってその友人を嫌悪するのは間違っている、と言うかもしれない。
    それこそが、発言者が私という「女である」というだけで思考停止・脊髄反射し、己の弱さを認められずにミソジニックにかみつくことしかできない「男の弱さ」だ。
    有史以来、日々刻々、男性から加害・迫害・そのくせ粘着・搾取され続けている女性に、そんなものに付き合う義理はない。

    2018/2/4読了

  • 途中からどんどんタイトルと内容とが離れていったような気がするのですけれども…ともかくまあ、現代社会というか、まあ昔の日本でも同様なんでしょうけれども、「男の子は弱音を吐いてはいけない」「強くあらねばならない」みたいな価値観のせいで男子は苦しんでいる! ということを主張したいみたいなんですなぁ…著者は。

    ヽ(・ω・)/ズコー

    うーん…僕はあまり「男の子なんだから泣くな!」的なことは言われずに育ったもんですから、どうにも違和感が拭えないんですなぁ…この点は。あ、でもやっぱり他人に泣き顔を見せるのは恥ずかしい…みたいな意識はあるのであるからして、じゃあ、やっぱり男の子は泣かないもんだ! みたいな感覚って口に出さないでも社会に蔓延しているのかもしれんですなぁ…社畜死ね!!

    ヽ(・ω・)/ズコー

    なんか親書というか、著者の心情吐露…エッセイみたいな感じを受けましたねぇ…。著者は今もしているのかな、ともかく20代の頃から障碍者施設だっけな、とにかくそういったところで働いていたらしくて、その頃のエピソードを書いている部分があるんですけれども、そこは良かったですね!

    男性論だかなんだか…大卒者が好みそうな話題(!)は結局のところ、よく分かりませんでした…悩まないでもいいところで悩んでいるのだな、と…さようなら。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  •  たとえ誰からも愛されなくても、前を向いて生きていく。(中略)悩んで、苦しんでいい。涙を流せずに泣いてもいい。だけど、それをこじらせすぎちゃいけない。他人をねたんでいいけど、恨むところまではいかない、そんな曖昧な場所にどうか踏みとどまってほしい。(補論1より)

     皆さんも、知的障害者や自閉症の当事者と、街中や電車の中で遭遇する機会が増えたのではないか。
     もちろん、今もまだ、そこには様々な軋轢やトラブルもあるだろう。最初はびっくりしたり、警戒したり、恐怖を感じたりすることもあるかもしれない。しかし、そうした何気ない日常の経験を日々積み重ねることによって、誰もが彼らの存在に少しずつ、意識の面でも身体の面でも、「馴れていく」はずだ。そのことに大切な意味がある。つまり、彼らが外出し、趣味のために遊ぶことが、そのまま、僕らの社会の厚みや懐の深さ、公共的な豊かさを増していくことなのである。(p.182)

  • 二項対立では捉えきれない、差別に対する構造的な面での考察が分かりやすかったです

  • 想像していたのと違う内容だった。
    いくらなんでも、拗らせすぎ…?

  • 男らしくあれという保守的な男性像と男らしさを捨てろというリベラルな男性像というダブルスタンダード

  • 『マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か』を読みながら、こちらも入手を決意。
    赤裸々すぎて勢いよく飛ばして読んでしまった(汗)

    「非モテ」にフォーカスして、「男らしさ」「自立」と「弱さ」「ケア」を脱構築している感じ。
    後続書で語られている「まっとう」なスタンスの萌芽が見られる。
    読後はやはり、弱さを噛み締めながら、ボチボチやっていこうと思った(ざっくり)

  • 「非モテ」という男性たちの悩みは、同情を受けにくい。日本社会が男性優位につくられているのは火を見るよりも明らかだし、中には女性たちに対して身勝手な要求や逆恨みを募らせるような有害なタイプもある。「勝手に悩んでろ」と上野千鶴子氏が乱暴に切り捨てるのも無理はないか。
    だがフェミニストたちには、男性たちの自己嫌悪が見えていないと、著者は森岡正博の言を引きながら言う。たしかにそうかもしれない。高い自殺率にみられるように、男性たちが女性たちにくらべて、自分の弱さを認めにくく助けを求めにくいということはある程度知られており、だからそのような男らしさの縛りから抜け出そうと、メンズリブは言ってきた。
    しかし著者が縷々述べる苦しみは、一般に流通した「非モテ」男性像をはるかに超えた深刻さを呈している。男である自分の容姿や性的身体を嫌い、抑圧的な社会集団の一員である自分を呪う。その自己否定は、「男になんて生まれてこなければよかった」と思ってしまったり、自分の子どもが「男でなければいい」と願ってしまうほどで、とても「勝手に悩んでろ」などとはいえない。
    ウーマンリブは、男性中心社会において価値が低いものとされる女性性と女性としての自分にとことん向き合いもがくところから始まった。そうしてフェミニズムが解体してきたロマンチックラブイデオロギーやルッキズムという自縛装置に、むしろ男性たちがこれほど深く絡めとられているとはまったく予想外だった。
    本書は、愛する女性パートナーと出会い子をもうけてもなお若い頃から苦しめられてきた「非モテ」という名の自己嫌悪から長く抜け出すことができなかったと告白する著者が、自己解放のために考え、同じ悩みを抱えた男性たちに向けて、他者や自分に攻撃を向けることなく、「弱く価値のない自分」に向き合おうと訴える。特に第1章は、引用されている漫画も含めて、かなり切実であり衝撃的でもあった。
    一方でどのような男性たちが、なぜそのような隘路に陥ってしまうのか、他の男性性や女性性との関係といったことについては、あまり納得のいく分析は提示されていない。長いこと男性性と結び付けてこられた学業や社会的な達成、経済的自立が、新自由主義的な社会の中でますます競争的になり達成が難しくなっていくときに、「なにもない自分」を承認するという課題が、異性愛的なかたちでしか示されていないという問題が大きいと感じるが、別のアプローチで考えてみる必要がありそうだ。

  • 男の弱さとは、自分の弱さを認められないこと。人文学的素養と自分を抉って書いている感じ。シスヘテロが融解していく快感。これはある意味ドMですね。

  • タイトルからモテや非モテについて客観的に研究した本を期待したが、そういう本ではなかった。
    図書館で借りたが、予約数多数で順番が回ってくるまでに時間がかかった。本の汚れ具合から熱心に読まれた様子がうかがえる。求めていた内容ではなかったが、「非モテ」や「男にとっての『弱さ』」についての本需要があることはわかった。

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著者プロフィール

杉田 俊介 1975年神奈川生。批評家。『宮崎駿論』(NHKブックス)、『ジョジョ論』『戦争と虚構』(作品社)、『無能力批評』『ジャパニメーションの成熟と喪失』(大月書店)、『橋川文三とその浪曼』(河出書房新社)、『神と革命の文芸批評』(法政大学出版局)ほか。

「2023年 『対抗言論 反ヘイトのための交差路 3号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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