- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087208801
作品紹介・あらすじ
歴史は25年、150年、500年単位で変化する。これを「物差し」とすれば、トランプ大統領以後の不安定な世界も予見可能。今後100年の政治、経済、社会を、圧倒的な文献をもとに精緻な分析で予測する。
感想・レビュー・書評
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確実に歴史の変曲点にいるという感覚のある今、「大予言」という力強い書名に惹かれて読みました。しかし、未来はこうなるという未来像を提示する本ではなく、大きな歴史の中で変化の循環を分析して(分析してきた先人たちの理論を紹介して)大きく世界史を俯瞰してこれから起こる、いやもう始まっている変化の流れを伝えようとする「大変化」とでもいうべき内容です。25年、50年、そして500年をいうびっくりするようなモノサシには正しい、正しくないという次元を超えた新鮮な驚きと納得があります。以前、水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」で「長い16世紀」という言葉に出会った感じを思い出していたら、本書もその本からの引用かなりありました。今から10年前に読んだとしてこの感覚が持てるかどうかはわからなく、世界が今までと違う論法で進んでいる、そして著者と同世代の自分だからの納得なのかな?と思いつつ、きっとしばらく本書に影響受けるだろうな。なにしろ巨人たちの理論を学ぶブックガイドとしても役に立ちました。
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大予言 吉見俊哉著 25年周期で歴史を見る試み
2017/5/6付日本経済新聞 朝刊
将来予測を期待して読んではいけない。副題の「『歴史の尺度』が示す未来」の方が内容を表している。25年単位で歴史を見る提案をした本なのである。
例えば第2次大戦の終戦は1945年。その25年後は70年。大阪万博やよど号ハイジャック、三島由紀夫の割腹自殺があった。さらに25年後の95年は阪神大震災や地下鉄サリン事件。その25年後は2020年で、東京五輪が予定されている。確かに、25年ごとに時代の転換期が訪れているようにも思える。
約50年周期で景気循環が起こるという「コンドラチェフの波」をはじめ、一定の周期で歴史が繰り返すことを説いた理論はほかにもある。本書はこれらにも幅広く目を配り、自らの「25年説」を重ね合わせながら世界史を考察する。25年といえば、およそ親子の1世代分であり、こうした世代間隔と歴史を結びつける試みもしている。
するとさまざまな発見がある。大航海時代がもたらした16世紀のグローバリゼーションから、不況の17世紀は「収縮の時代」となり、日本は鎖国に入る。これは現代と似ていないか。あるいは、歴史家ホイジンガが『中世の秋』で書いた中世の終わりについての考察は、現代の参考にならないか。このように、歴史の見方や現在のとらえ方にさまざまな想像力を与えてくれる。(集英社新書・840円)