ナチスの「手口」と緊急事態条項 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208962

作品紹介・あらすじ

自民党が加憲を狙う緊急事態条項。首相に権限を集中させるこの条項は、ナチスの独裁を許したワイマール憲法の条項と酷似する。独裁はいかに始まるのか。専門家ふたりが仔細に知らせる警世の書!

感想・レビュー・書評

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  • 『ナチスの「手口」と緊急事態条項』書評 為政者の濫用、いかに危険か|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11576701

    UTokyo BiblioPlaza - ナチスの「手口」と緊急事態条項
    https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/ja/D_00146.html

    ナチスの「手口」と緊急事態条項 – 集英社新書
    https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0896-a/

  • 自民党改憲草案の危険性を復習するためにナチスドイツが独裁化した歴史的経緯を学ぶために読んだ。

    権力者の暴走を停めるための仕組みが曖昧な自民党案の危険性を再認識出来た。

    憲法改正のための予備知識を得るための入門書のひとつとして最適だと思う。

  • 緊急事態条項の歴史的な危うさについて、ひとまづ簡単に飲み込むための入門編、みたいな本だった。大変読みやすく、そしてわかりやすかった。

    220頁
    <一九七〇年五月八日、終戦二五周年記念式典でのブラント首相の演説>
     今から二五年前のあのときに、多くのドイツ人が個人的あるいは国民的な苦しみと感じていたことは、他の民族にとってみれば外国への隷従、テロ、不安からの解放でした。……民族には、自らの歴史を冷静に見つめる用意がなければなりません。なぜなら、過去に何があったのかを思い起こせない人は、今日何が起きているのかを認識できないし、明日何が起こるかを見通すことがもできないからです。冷静に歴史と向き合うことは、特に若い世代にとって大切です。若い世代は、当時終わったことに関与していません。……しかし引き継いだ歴史から、我々は誰一人として自由ではないのです。

  • 小政党の一つに過ぎなかったナチスがいかに権限を拡大して独裁国家を作り上げたかを解説し、日本で審議されている緊急事態条項のナチスの手口との類似点、危険性に言及。この分野は門外漢なのでとにかく難しかった。憲法学者は言葉のチョイスに厳格だなあ。一応理解した中で印象深かったことをメモ。
    ・ユダヤ人に職を奪われたと感じている貧困アーリアがナチスを支持した構図はトランプ政権に通じるものがあるなあ。
    ・ドイツでは大統領が緊急事態を規定できる仕組みになっていたことが濫用を招き、いつのまにか主権独裁になっていたと。
    ・日本の緊急事態条項に関して。緊急事態の判断は内閣総理大臣に委ねられていて緩い。
    ・そもそも大きな災害等想定される緊急事態があるならばそれに合った法を制定すれば良い。
    ・緊急事態条項は「安全の保証」ではなく「安心の保証」。不安はキリがないものでそこにつけこんだ条項。いらない。
    ・緊急事態条項草案は性善説に基づいている。考えうるすべてのパターンを網羅しておらず漏れがある。悪用できる可能性がある。

  • 1:緊急事態条項を利用したナチスの手口
    ・ナチスは国民の圧倒的支持ではない。少数派政党。
    ・第一次世界大戦の敗戦と世界恐慌で政治が混乱し、ヒンデンブルク大統領が大統領緊急令を多用した。議会制民主主義に国民が絶望していた。
    ・ナチスは突撃隊という暴力装置を持っていた。その組織がイチャモンを付けて逮捕していった。議事堂炎上もナチスの自作自演。

    2:なぜドイツ国民はナチスを支持したか
    ・敗戦と世界恐慌で、失業率30%。ワイマール帝国は見放されていた。共産党とナチが受け皿だった。
    ・第一次世界大戦で旧ロシアから、東方ユダヤ人が難民のようにドイツに来ていて、独特の存在だった。民衆は風変わりさに恐れていた。
    ・ドイツ民族共同体が、階級意識を打破すると考えた。
    ・下層中間層が、陰謀論に振り回され、排外主義となった。

    3:戦後のドイツは、どう対応したか
    ・憲法の変えられない基本原理を定めている。それを攻撃する者は基本権を停止する。

    4:日本の緊急事態条項は
    ・発動要件が緩い。法律で定めるの多用。
    ・統治行為論で裁判所が手を引いているから、均衡が取れない。
    ・日本はビビらせて「安心の保証」に付け込む。

    5:ドイツは過去をどう捉えようとしているか。
    ・1950年代の西ドイツでは、アウシュビッツは語られていなかった。反ユダヤも復活しそうだった。
    ・1961年のアイヒマン裁判で、語られなかったナチが知らされた。若手議員たちが、ナチの時効反対唱えた。
    ・テレビ映画の「ホロコースト」が、国民の心を動かした。
    ・歴史と向き合わなければならぬ、という市民運動。「つまづきの石」など。

  • 東日本大震災や新型コロナによって、緊急事態条項が注目されているが、強力な権限になる恐れがあるため、著者は非常に慎重な姿勢。特にナチスの歴史に照らし合わせ、その危険性を指摘している。

  • 自民党改憲案に盛り込まれた緊急事態条項について、かつてのナチスが独裁に至る過程を振り返りつつ考察する本。
    ワイマール憲法はもともと大統領と議会が牽制しあう仕組みだが、非常事態への対応のため大統領が緊急令を出すことができた。だが当時の議会では対立する意見が拮抗して決めることが難しく、打開のため政府が大統領緊急令に依存する傾向があった。
    カール・シュミットは「委任独裁」「主権独裁」という概念を提唱した。前者は憲法の規定として一時的に独裁を許すもの、後者は憲法制定権力が自ら表舞台に姿を現すもの。ナチスはワイマール憲法の委任独裁の仕組みを使い、1933年の授権法により憲法にも拘束されない強い権限を手に入れた。ヒトラーの首相就任までは法に則った手続きだったが、就任直前でもナチ党の支持率は33%程度で、決して圧倒的とは言えない。
    ナチス支持の背景。党議拘束が強くなると、公開の場での議論により主張を変えることができなくなる。したがって立法の場での議論が形骸化する。議会性民主主義の限界。
    緊急事態条項が暴走した反省から、戦後のボン基本法での暴走を防ぐべく歯止めが設けられた。憲法自体は何度か改正されているが、憲法の原理部分は変えられないようにできている。なお緊急事態条項が発令されたことはまだ(この本刊行時の2017年当時)ない。
    日本の改憲案の緊急事態条項について懸念される点は、緊急事態の定義が比較的緩いことや、「統治行為論」=高度な政治判断が必要なことがらについて裁判所は審査しない、という考え方の存在。これがあると緊急事態条項の結果について司法の歯止めが利かなくなる。新憲法に緊急事態条項を盛り込むならば、統治行為論を無効化する必要がある。ドイツ、アメリカ、フランスの法とも比較。

  • ナチスが「過半数を占めたのではない」ことが強調されるが、第一党ではあったし比例代表制選挙の弊害で他党は結集せず共産党はスターリンの手下だった/国会議事堂放火事件「やはり陰謀」とするがパヨクは嘘が多い╱何よりナチス政権で恐慌を脱し国の威信を取り戻したのは事実/パヨクの理想は憲法論議のない国、北朝鮮のような。投票過半数を占めたのではない民主党政権の際に好き放題やって皇室宝物を贈呈した韓国との関係さえ悪化させたのを新鮮な教訓として挙げれば説得力増すのに/緊急特別法がないので、外出「自粛要請」だけで命令ができない

  • ドイツの20世紀の経験と緊急事態法制について、かなり深く解説している。対談形式なので分かりやすく、貴重な本である。参考文献も巻末にあり、これもまたよし。

  • 総選挙を経て、改憲に向けて動き出さんとする今こそ、あらためてその危険な「手口」を学ぶことが大事なのである。

    あわせて聴くべし。
    https://www.tbsradio.jp/166677

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2022年 『憲法講話〔第2版〕 24の入門講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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